7コマ目 後追い
禁忌や未実装機能。
最近そんな話ばかりである。
伊奈野としてはそれ以上の時間を勉強に使っているわけだが、それでも休憩時間をそうしたことのために使ったという事実は間違いなくある。
であるからこそ、そこを少し深堀しよう。
そもそも禁忌は知っている人間は知っている。
分かりやすく言えば、個々の禁忌が大まかにどのようなモノなのかを知ることができる存在はそれなりにいる。
その中の1人が、怪しい服の人。
こちらはこちらで禁忌などにも容赦なく手を出すような人間であるためかかわりも深く知ってることはなにも不自然ではないのだが、そんな怪しい服の人は気づいたことがある。
「この無限とか言うのと永遠とか言うのが先王様の手を出していたものなのかなぁ?面白そうだねぇ」
無ダンジョンで試して禁忌指定により続行を断念したものに辺りを付けたのが、当然ながらダンジョン内にいる怪しい服の人。
コスプレ魔王とは違ってそれなりにダンジョン側に近い立場で動いている存在だが、さすがに具体的にどんなことをダンジョン側で行なっているのかまでは詳しく把握していない。もちろん、ダンジョン側も出す情報はかなり選んでいる。
そうしたこともあって辺りをつけるまで少し時間はかかったのだが、それでも新しく増えた禁忌として探せばごくごく少数であるためすぐに見つけることはできる。
しかも問題は、そんな禁忌を怪しい服の人は特に気にせず試してみようとすることだ。
ただ、いくら禁忌指定されたものの大まかなことを知っているとは言ってもその内容までは把握することができない。と言うか、把握できた場合には禁忌に手を出す存在が確実に増える。
そんなわけで具体的にどうすればそれが実現できるという事までは分からないわけだが、
「先王様があの時期に言ってたことがヒントになってるはずだねぇ…………1つ1つ思い出しながら試していくしかないかなぁ」
骸さんは、禁忌に関わるような重要なダンジョンの防衛機能については一切口にしていない。それは間違いない事だ。
しかし、一切関連することを口にしていないかと言われるとまたそれも否である。
直接的にではないが、改善案や機構を作るための整備部分などに関わることは口にしてしまっている。
であるから、こうした怪しい服の人の考えは正しい方向性であった。もちろんすぐに答えは見つけられないが、細かく見ていけば少しずつだか関わりそうなものを見つけていくことができるのだ。
そうして少しずつ、じわりじわりと確信に近づいて行き、
「な、なんであの人無限迷路再現しそうなんですかぁぁぁぁ!!!????」
『ふむ。独り言から察するるに余のこぼした言葉から当たりを付けたようではあるが、それにしてもすさまじいな。余とて当然核心部分は一切口にしておらんのだが』
「でも、別に再現されて困ることはないんじゃないですか?ダンジョンの攻略がそれで激しくなることはないですよね?怪しい服の人が強化されるだけであれば気にするようなことでもないのでは?」
「いや、分かりませんよ。無限迷路を常に周囲に展開していれば近づいて来るモンスターも接触することができません。もし迷路と一緒に移動を可能にしたならば、一切触れられない無敵の相手ができることになるんですよ!」
『その場合はマグマなどといった環境にすら対抗されるかもしれんな。いくら危険な地形でも、その地形が影響できる状態になければ無意味だ』
「なるほど?確かにそういわれてみると危険そうですね」
『うむ。それにもし邪神を倒した後に奴と敵対関係になったならば余は相当苦しむことになる。それこそ、ダンジョンの外であのようなものを使われたらどうなるのか分からんからな』
「確かにそうですね。普通の場所で使ったらどうなるんでしょう?」
純粋に疑問が湧き出てくる部分もあるが、それはそれとして骸さん達の懸念も理解できた。
完全に習得されてしまった場合、無敵の怪しい服の人が完成しかねないわけだ。そうなったら邪神も簡単に倒せてしまうのではないかと言う期待もあるが、同時に敵対されると終わるという考えも理解できてしまう。
さらに言えば、
「無限迷路の場所に無限を纏った人が入ると…………どうなるんでしょう?」
「分かりません。そんなに難しいことは自分の専門外なので」
『それはダンジョンマスターの知識に無いのか?』
「極限で無限に飛ばす場合の計算方法は勉強しましたけど無限を無限の中に居れたらどうなるかなんて知りませんよ。せいぜい結局無限だなんて言う結論に達するパターンくらいはあったかもしれないですけど、そうなると考えるのはあまりにも楽観的過ぎる気がしますし。と言うか、そもそも無限の中に無限とか作り始めたら勝手にこちら側の無限迷路は負荷に耐え切れずに崩壊するのでは?」
『そうなるか。向こうの技術がどれほどかは分からんが、もしこちらより完成度を高くされると一方的にやられるという事になりかねんな』
「いえ。それなら逆に負荷のかけ方が大きくなるため時間を遅くする方の効果が非常に大きくなるのでは?さすがにそこでの時間があれば解決策も思いつくはずです」
「ああ。確かに。負荷を大きくされるならそっちで対処ができますね。意外とこのダンジョンも対策がしっかりできてるってことになるでしょうか?」
「意外とって何ですか。これでも自分たちは結構ダンジョンの防衛のために力を注いでいるんですけど?…………無限の対処に関してはさすがに考えてなかったし偶然ですけど」
問題は多いが、それでも対抗策が何一つとして存在しないというわけではない。ダンジョンも想定以上に防衛能力が高いのだという事が理解できた。
ただ、1つ対抗策があればそれでいいというわけでもない。いくら時間を延ばすことができるからと言って、本当にその間に対抗策を思いつくことができるのかと言うのは定かではないわけだ。そして、もし対抗策を思いついたとしてもその状況下で思いついた手を打てるとも限らない。
今のうちでないと効果がないこともあるかもしれないし、事前に対策を立てておくことは悪い事ではないのだ。
そして付け加えれば、こうした対策はあくまでもダンジョンを怪しい服の人が攻略しようとした場合を想定している。骸さんが危惧するような邪神討伐後の敵対と言うものがダンジョンでの対決となるとは限らないのだ。
骸さんが地上のすべてを支配下に置こうとするのであれば、その戦いは地上で行なわれるものになるかもしれない。
そうなればダンジョン内でいくら対策を立てようと意味はないし、骸さんが真正面からせめて打ち破るための手段を備えておく必要がある。
「まずは研究の様子を監視してこちらも原理を詳しく理解しておく必要がありますね」
「やってる内容が分かって、どうやって発展させたのかを理解できれば対抗策も思いつくかもしれませんもんね」
『うむ。加えて余も配下にすこし研究をさせてみるとしよう。やつが個人でやる分には問題ないようだったから、余も手を出してダンジョンに影響が出るという事はないはずだ』
今後の対応もふんわりとした実現できるか怪しい物ではあるが方針は決まる。
伊奈野は特にすることはないが、たまに進捗を尋ねてみるのもいいだろうという風には思っている。
が、それ以外にもできることはあったと思い出し、
『…………と言うわけなんですけど、対抗策とか何かありませんか?』
『妾にそれを聞かれてものぅ。そんな物まとめて吹き飛ばせばいいではないかと思ってしまうのじゃ』
『ああ。そういえばそういう権能でしたね』
新作「異世界に召喚されるのは良いけど「ざまぁ」される側なのは勘弁してほしい」を投稿開始しました!
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なお、以前投降して予想以上に伸びた短編を参考にし、その短編の要素は取り入れないことにしました(賛否両論過ぎたため)




