2コマ目 無限迷路編
伊奈野が問題を起こせば、それを分析して改善していく。
そうして少しずつ、無限に続く迷路は完全なモノへと近づいて行った。
ただ、完璧に近づくからと言って今完璧に近いかと言うと残念ながらそんなことはなく、伊奈野が勉強を終わらせて迷路に挑戦しようという時には、
「何ですかその速度は!?」
『生成速度があと少しで追いつかなくなりそうだな。しかも、この破壊をするやり方では複数人に並行して行われるとすぐに限界が来そうだ』
『牽制魔弾』を『繰り返し』され、適当に選んだ中でも有効そうな炎の魔法を使って迷路の植物を焼いて行く。これに加えて前回の迷路の時のよう移動速度が上昇するスキルやユニークスキルもセットで行なわれるのだから、1人で負荷をかけ続けることに完全に成功してしまっていた。
もしこれで前回迷路に挑戦した時と同じように武器たちがついてきていて勝手に暴れていてくれていたのだとしたらもう間違いなく崩壊してしまっていただろう。
「これは…………どうすれば対策できるんでしょうか?」
『うぅむ。難しいな。希望も見えたが、まだ完成には程遠いか』
伊奈野は知らないが、骸さんたちは2人で頭を抱えて滅茶苦茶な攻略方法への対策を考え続けるのであった。
もちろん伊奈野はそんなことを知らないのだからさらにジャンプして迷路を超えようとしたり迷路に使っている植物を何かに使えないかと試してみたり。さらなる頭を抱える要素の増加にいそしむこととなる。
最初から対策をしてあったものもないわけではないが、それでもより多い想定外のことを始めた際にはどうにか知恵を絞り出してそうした対策にも取り組んでいく。
ただやはりどうしても解決策が思い浮かばないものも存在していて、
「と言うわけで、生成する空間の範囲が広がりすぎるんですよね。どうにかできませんか?」
「うぅん。どうにかと言われても炎さん達に思いつかないようなことを私が思いつける気はしませんが」
やはり1番困ったのは、伊奈野のように広範囲に攻撃をするプレイヤーがいた場合の対処だ。どうしてもその場合は処理する空間が広がるため、負荷が大きく成ってしまう。
どうしてもここに関しては解決できないため、他の知恵を借りようという事で伊奈野まで解決策の提案の要求が回ってきたのである。
ちなみにすでに黒い本からの意見の提出は終わっていて、却下までされている。
ただ、そうして求められても伊奈野は出せる提案もあまり多くはない。
ゲームシステム的な面を考えた少しメタい発言をするとするならばとしたうえで、
「まずは植物の回復速度を高めておくことですね。これで視界さえふさげれば、その先は生成しなくてもいい。そして消去して良いという事になるわけですよね?」
『うむ。そうなるな。あが、それだけではどうにもならない場合もあるぞ。持続ダメージなどをされるとな。他にも、破壊用のアイテムの設置や持続的な破壊などもされると困る』
「持続ダメージは私にもどうにかできる気はしませんが、他の部分はモンスターを追加することで対処できるのでは?燃やされたりするのを恐れてるなら水の魔法とかで消火できるモンスターを出せばいいですし、アイテムが厄介ならそれを回収したり破壊できたりするモンスターを配置すればいいでしょう。そうしたモンスターが生成するフィールドの外側で動いていられるならたとえ追われたとしてもすぐに視線をきることは容易ですし、懸念も払しょくされるのでは?」
『ふむ。なるほど。外側で、となるとまた別のシステムの構築が必要になるかもしれんがそうしたものでかかる負荷よりははるかにましだな』
「どの程度ダンマスの言うような仕組みが作れるかは分かりませんが試してみる価値はありそうですね」
迷路はプレイヤーの周囲にのみ生成される。
であるならば、その生成されていない虚無の中を動くことができるモンスターがいたらかなり楽になるように思うわけだ。
かなり複雑なことにはなりそうだが、負荷は大幅に減少するだろう。
ただ一応懸念てもある。
そうしたことをした場合にプレイヤーがモンスターをどう扱おうとするのかが不明で、
「明らかに動きが変だと察知されると迷路が周囲にしかないことに気づかれてしまうかもしれません」
「そうですね。加えて、モンスターをテイムとまではいかずとも自分の好きなように操ることができるスキルなどを持っていた場合には仕掛けにも気づかれて仕舞いかねませんね」
『うぅむ。完全に問題が解決するわけではないか…………しかし、それでも負荷を減らせることは大きい。例え気付かれたとしても突破方法が分からなければ結局のところ問題にはならぬからな』
「それもそうですね」
伊奈野の意見は取り入れられ、モンスターの配置が決定した。相当時間はかかることが考えられるが、今はコスプレ魔王の攻撃によって保存された自爆の力でどうにかなっている。とそれが突破されるまでには完成させられるだろうという見込みである。
今回何よりも決定するうえで大きな判断基準となったのは、突破されるかどうか。例え仕掛けがバレたとしても、その仕掛けを突破する術を相手が持ち合わせていなければどうにかなるだろうという考えに至りこうなったのである。
実際、その考えは間違っているとは言い切れず、現在のプレイヤーたちにはほとんどこの無限に生成される迷路を解決する術は持ち合わせてなどいない。
しかし、それは個々人のプレイヤーに限った話だ。
もし彼らがまとまった場合、その人数はダンジョン側が想定している人数など簡単に超えてしまう。それこそ、現在は玄人向けという事になっているこのダンジョンにもしエンジョイ勢とされるようなプレイヤーまで参加してしまった場合には簡単に突破できるものへと早変わりしてしまうだろう。
そうしたことは、骸さん達には予想できずとも逆に伊奈野や黒い本が理解している。
「大人数で来た場合直前で困るような仕掛けを作っておいた方が良いかもしれませんね。一定重量になると崩れて奈落に落ちることになる橋とか作ってみてもいいかもしれないです」
「なるほど?奈落と言うのは難しいですけど、高い場所から落とすくらいでしたら可能ですよ」
「それでも大丈夫だとは思います。地面に棘でも置いておけば、落下ダメージと併せて厳選はできるんじゃないかとは思いますね」
『そこまでする必要があるようには思えんが、ダンジョンマスターがやりたいならやってみるとするか』
人が集まれば問題が起きるような仕掛けを作ってもらうことにする。
ついでにどうしてもプレイヤーが突破してきてしまう場合にはコスプレ魔王によって巨大な爆発を引き起こすモンスターを骸さんの配下として送り出してもらおうという事で結論は出た。
「その時までに魔王と協力体制でいられるかどうかが懸念点ではありますね」
『うむ。その時までには、もっと強力な一撃を余たちだけで扱えるようになっておく必要があるか』
対策をし、突破口を無意識に伊奈野が見つけようとし。間に断然長い勉強時間が挟まり。
無限に続く迷路は一歩一歩完成へと近づいて行く。
すでに大半のプレイヤーは苦しめることができそうな凶悪なものが完成していた。
《称号『無限迷路作成者』を獲得しました》
だが、まだまだ完成度は高められていく。
いつか、誰も突破できない迷路の完成を目指して。改良はどこまでも続けられていく。




