1コマ目 安全
ステータスの時に質問いただいたので補足させていただきますと、『触れぬ者すら傷ついて』の持続ダメージ上昇は指数関数的な上昇(しかも割合ダメージ的な上昇)です
だから時間制限ありのボスみたいになるんですねぇ(白目)
ダンジョンのあるサーバで伊奈野は喋れるようになった。そして以前からそうであったように、黒い本もまた伊奈野のいるそこに行くことが可能である。
これにより何が起きるのかと言えば、
「大変申し訳ございませんでした」
見た目幼児が土下座する姿である。
少し前の攻撃から続き、伊奈野はかなり児童虐待に見えるものに関しての躊躇が無くなってしまったのだ。もしこれをプレイヤーが視ていたならばスクリーンショットを取られてネットでさらされて炎上していたかGMコールをされて厳重注意をされていただろう。
なお、この絵面が大変なものであることも確かなのだが、伊奈野たちからすると重要なのはそこではない。
やはり伊奈野が伝えたいのは、
「僕、本当に全部間違えて答えてたの?」
「そう。面白いくらいかみ合ってなかったよ。逆にあそこまで偶然の一致がない方が奇跡なくらいじゃない?」
「そ、そんなになの?本当に1個もあってないの」
「あってないね」
「僕、ご主人様の伝えたいことを読み取るためのページをかなり増やしたのに。あれが全部間違ってて意味のなかったものだってこと?」
「意味がない物だったかどうかは分からないけど、間違いなく信用しちゃだめだと思うね。逆にどうしてあそこまで自信満々だったのか謎なんだけど」
黒い本が伊奈野の伝えたいことをことごとく間違えて認識していた。これが伝わったことが何よりも大きい。
これにより黒い本はなぜ自分が『龍落とし』を受けたのかも理解するし、自分がとんでもないことをしでかしていたことも分かるのだ。
かなり自信があっただけに、現在はかなり落ち込んでいる。かなり長い事記録し観察してきた伊奈野の事すらことごとく間違えたとなればそうもなるだろう。
さらに言えば罪悪感などもそれなりにあるようで、
「あっちでの薬の納品とか店主さんの書類廃棄とかは僕たちでやっておくね」
黒い本が伊奈野の仕事をほとんど肩代わりすることを自分から言い出してきた。もちろん伊奈野はそうさせるつもりだったので了承しておく。もちろん黒い本がやることはそれだけではない。
このダンジョンのサーバに来たならばそれはそれで薬の作成の様子を見たりトッププレイヤーとされる者達の動きを見たりと学ぶことは多いのだ。当然ながら伊奈野の状態が回復するような薬を探す必要もある。
そして何よりも重要なことが、伊奈野の観察だ。主人の伝えたいことを間違えて認識し続けていたなど、もう二度と繰り返していいようなことではない。今からもう一度まっさらな気持ちで伊奈野の観察を始め、今度こそ小籠包しか言われずとも何を伝えたいのか把握できるようにするのだ。
今まで以上に細かく、今まで以上に時間をかけて。じっくりと伊奈野と言うものを把握していく。
黒い本に暇など存在しなかった。
ただ、そんな黒い本にさらに追い打ちをかけるものが存在して、
「そういえばですが、迷路が完成しましたよ」
「ほぇ?迷路ですか?そんな話がありましたっけ?」
「はい。前回来た時に行っていた、無限に続く迷路というものを作ってみたんですけど…………忘れてたんですか?」
「ああ。あれですか。そういえば提案しましたね」
思い出したように話し始めたのは炎さん。
伊奈野もそれを聞いて自分が提案していたものを頭の片隅から掘り起こしてくることになる。プレイヤーの足止めのためにダンジョンで取り入れられるのではないかと思い、以前武器の試練で伊奈野自身が体験した無限に続く迷路と言うものをダンジョンで取り入れることを提案していたのだ。
伊奈野としてはとりあえず提案してみたという程度の気持ちだったため、実際に取り入れられたというのは予想外である。
ただそれは決して悪い事ではない。
無限に続く迷路などどう考えてもプレイヤーたちを足止めできる非常に魅力的なモノであり、よりダンジョンの安全性は向上すること間違いなし。いっそのことすべての階層をそうしてもいいのではないかと伊奈野は思うくらいだ。
そしてさらにいいところを上げれば、
「じゃあ、私が試しに入ってみますね。途中で勉強とかもしようと思ってるんですけど、大丈夫でしょうか?」
「はい。問題ないですよ。こちらとしても骸様の配下に試してもらうくらいしかできておりませんので、ダンマスにデータを提供してもらえるのはありがたいです」
『それなりの出来にはなっているから、色々と試してみてほしいな。余としても問題点の洗い出しはしておいてもらいたいのだ。あれならまだ、さらに上を目指せるはずであるからな』
他の階層などと違って、迷路であれば地形ダメージや状態異常などの心配がない。これが何よりも伊奈野にとってはありがたく、普段ともまた違う雰囲気で勉強できるという事で喜んで迷路に身を投じた。
もちろん最初にやることは勉強であり、さっそく骸さん達には動きのない映像を見せることになる。
とは言ってもこれもまたデータを取ることができる良い機会にはなるから、誰も文句を言うことはないわけだが、
『これは、ダンジョンマスターの影響か?周辺の木々がダメージを受けているような気がするのだが』
「おお。本当ですね。いつの間にダンマスは威圧だけでなく明確なダメージまでふりまけるようになったんでしょう?気づいてないだけで、自分たちも実はダメージ受けてたりしません?」
『おそらくは大丈夫だと思うが、気をつけねばならんかもしれんな。見た限り枯れている植物もほとんどはトラップなどの類を備え付けておるものだから、対象は敵対する可能性があるものなのだろう。余は兎も角、炎は対象外なのではないか?』
「そうだと良いんですけど…………いや、良くないですね。骸様に倒れられたらかなり困るんですけど」
データ云々動き云々より、まず気になったのは伊奈野の新しく手に入れたユニークスキルの影響だった。
こうして動かないまま周囲の状況が確認できるとその効果は非常に分かりやすく、伊奈野を中心に害のあるものがほとんど衰弱していっていることが分かる。
検証のために新しく伊奈野の近くに少し危険な植物を増やしてみたりしてもすぐに枯れてしまい、ないとは思うが似たようなことができる存在が相手の場合最悪何もしない間に植物が勝手に枯れて迷路が成り立たない可能性は提示されてしまった。
実験の結果伊奈野に牙をむくことさえなければ安全だという事は分かったが、他のプレイヤーがそこまで優しい能力だけを保有しているかどうかは分からない。
もし無差別にダメージをばらまくような存在がいた場合、完全にそこは更地になってしまうだろう。
『グリモワールの話によると1人に対してあまりにも生成する空間を広くすると処理が追い付かなくなり崩壊してしまうと聞いていたが、周囲を枯らされると実は一定の範囲を超えると何もないなんてことがバレてしまうな』
「ダンマスみたいな能力を持つ人間がどれほどいるのかと言う話ですけど…………いないと言い切れないのが怖いですね」
早速改善点が見えてきた。
黒い本のアドバイスに従い無限にフィールドを生成して処理が追い付かなくなるという事がないようにしたのだが、伊奈野のユニークスキルのように全方位に広範囲でダメージを与え更地に変えるような能力を使われるとこの無限迷路の真実が明らかになってしまう。
これに対処するには単純に生成する範囲を広げるというものがあるわけだが、これをすると人が多くなってきた時などに結局処理が落ち着かないという事が起こりかねない。
ならば別の方法をと考えると、
「破壊されると新しい物が生成されるように設定しておく、とかどうですか?」
『それならば悪くはないか。やらない相手であれば広く生成する必要もないし、それが得策かもしれん』
「では、そういう設定に変えてみますね。上手くいくと良いんですけど」
数日前に投稿した短編が思いのほか伸びてランキングに入ってしまったため、推しに懺悔マロを送ったところ(なんで懺悔する必要があったのかは聞くな。短編を読め!)作品の内容をぼかしすぎてエ○い話を書いた人なのだと勘違いされてしまいました
ちょっと悲しいです




