プロローグ14
『そんな現象が起きるものなのか。何とも珍妙なモノもあったものだな。余もそのようなものを使われると威厳が無くなってしまう』
「そういう話ですか?自分的にはダンマスのそうなってるところも面白そうなので見てみたかったですけど」
「私だって最初は少し面白いかなとは思ってましたけど、さすがにそれが1月続くと言われると笑い事じゃなくなってくるんですよ」
ダンジョンの最下層で伊奈野は骸さんや炎さんと共に自分の日本サーバでの状況を話し解決策を探していく。
さすがに2人もそんな珍妙な現象は聞いたこともないようで興味深そうにしていた。
なお、2人はそのアイテムの出所なども気になっていたようだがあまり話し過ぎると上位存在さんのことなどを説明する必要が出てくるためぼかしておくことにする。伊奈野とて、上位存在さんが厄ネタであることは理解しているのだ。本人(?)からも司っているものなどの話は聞いているため、余計に話したらまずいことは理解している。
そんな話で盛り上がってはいるが、肝心の解決策の方はと言うと、
「そういう事なら、こちらでも植物の栽培とかやりましょうか?中層の方に採取ポイントとして植物を設置しておけば、持って帰って使おうとしてくれる人も出てくるかもしれませんし」
『後で余の持つ薬の知識もグリモワールに伝えておくとしよう。あやつの事だから余の知っている薬の知識などと全て把握しているだろうが、一応は共有しておいて損はないだろう』
「ありがとうございます。どちらもありがたいですけど、炎さんの言うようなことをすると問題も起きませんか?回復役とか作られると余計にダンジョン攻略が進んでしまうのでは?」
伊奈野が思い出すのは、邪神の元拠点を使う前に2人から聞いていたこと。
ダンジョンの攻略が少し進んでしまっているという事だった。
ダンジョン側にとっては大きい問題であり、伊奈野も無視して良い物ではないと考えている。わざわざこのサーバに来れば問題にならないようなことで余計に首を絞めるなどしたくはないのだから。
しかし伊奈野のそんな懸念に対して炎さんたちはあっけらかんとした様子で、
「ああ。それはおそらく問題ないですよ。突破されそうだという問題はかなり解決に近づいたので」
『うむ。ダンジョンマスターの考えを少し使わせてもらってな、魔王の力を使って侵入者たちの排除をすることに成功したのだ』
「そうなんですか?よくバレずに使えましたね」
以前、伊奈野はコスプレ魔王を利用してプレイヤーを排除する方法などを提案していたことがあった。その時にはコスプレ魔王にばれると関係が修復不可能な事態に陥りかねないということで却下されていたのだが、どうやらそのアイディアを改良したものを使用しているらしい。
内容自体は非常に簡単で、
「受けたダメージによって威力の変わる自爆をするモンスターを覚えていますか?」
「はい。いましたね。コスプレ魔王の修行に使っていたモンスターですよね?」
『うむ。今も使っておるのだが、それを余の配下に変えて使っているのだ』
コスプレ魔王が修行用に使っているモンスター。
それには特殊な能力があり、受けたダメージに比例して大きな自爆をするという特性を持っている。コスプレ魔王はそれを自爆する前に全滅させて次の場所まで転移するという修行方法をとっており、毎回コスプレ魔王が去った場所では大きな爆発が起こっている。
それを今回は利用しているというわけだ。
とは言っても、その自爆を止めて次のプレイヤーが来た時まで爆発の威力を保存しておくという事は難しい。どうやったとしても、自爆はしてしまうのだ。
しかし、それによって完全に消滅してしまうというわけでもない。
かけらとまではいわないがそれなりの部位が吹き飛んでしまった状態となるのだが、それを使って骸さんは配下を作る。
それらの配下は生前と同じように受けたダメージの爆発を引き起こせるようになっており、こちらは骸さんの支配下に完全に置かれて管理されるためある程度であればタイミングをずらして自爆させることも可能なのだ。
「問題になりそうな深い層に入ってくるときだけ、ですけどね。そこまで長いこと自爆せずに保っていられませんし」
『どうしても欠損も多いから魔王にやられた直後のような爆発も引き起こせんが、それでもあのような者達には十分。あれらにここまで一撃の威力と言うものを高めた魔王の攻撃に反応して引き起こされるものを耐えられるような力はない』
「はえぇ~。コスプレ魔王ってそんなに強くなってるんですか?」
『うむ。前から強くはあったが、最近も伸び続けているからな。下手をすれば余も正面から受ければ一撃で崩壊させられるだろう』
「もちろん自分とか、他のダンジョンのボスも耐えられませんね。攻撃されたら終わりです」
コスプレ魔王も一撃をひたすら高め続けている。
幾ら上位勢が集まっているとは言っても、まだプレイヤーに生き残るような力はなかった。
ちなみに喜ばしいことは他にもあって、
「こちらに逃げ込んできた住人ですが、完全にクッキーの虜になってしまいました。ダンジョンへの敵意はかなり薄れましたね。以前までのダンジョン攻略への熱心さが見られません」
「そうなんですか?クッキーだけで良くそこまで意識が変えられるものですね」
『途中でクッキー以外も試しに渡してみたりもしたから、それも影響したのかもしれんな。もちろんまだダンジョンを攻略する気が完全になくなったわけではないから油断はいかんが、こうした一般の人間にダンジョンへの敵意を薄れさせることができたというだけでも大きな、大きすぎると言ってもいいような一歩だ』
骸さんは感慨深そうに何度もうなずく。
大げさなようにも思えるが、伊奈野にもその気持ちはよく分かった。ダンジョンの話を聞いた魔女さん達の豹変ぶりを知っているだけに、このゲームの一般のNPCがダンジョンへの気持ちが緩和されたというのは非常にすごい事のように思えるわけだ。
もちろんそうして凄い事だと認めるのは伊奈野や骸さん達だけではなく、
《称号『ありえなかった歩み寄り』を獲得しました》
システムもまた認めていた。
伊奈野のダンジョンは、ほんの少しだが一般人の敵から有益になりえるかもしれない物へと変化したのである。
とは言っても、NPCはプレイヤーたちの支援を行なっているし、いつ牙をむいてもおかしくはないわけだが。
と、ここまで説明が続いたが結局ここまでの事から言えるのは、
「今ダンジョンの中層に薬草をはやしておくくらいはなんてことのない事、と言うわけです」
『怖がることはない。そのていどで危険に等なりえないのだからな』
「それならよかったです。お願いしますね」
薬草など設置したところで今更何かが変わることもないという事だ。
とりあえず、自爆の威力でプレイヤーが吹き飛ぶうちは薬草の回復など何も意味などないのだから。
当然ながらこの薬草などの植物設置はプレイヤーたちの間で話題になり、このサーバにダンジョン攻略を手伝うため薬師のプレイヤーも参加してきたりもした。
お陰でダンジョンの機能を使って監視していれば見たこともないような技術を使って薬が作られたりして、
『調薬セットも購入できるようにしておくか』
「そうしましょう。どうせなら最高級のものでどうですか?」
伊奈野の、と言うより黒い本の知る薬の知識が新たに増えることとなるのだった。
解決できるかは知らないが、伊奈野の問題の解決につながるかもしれない状況となって行った。




