表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/523

31コマ目 ガチャ沼

裏切られた心をいやすため、黒い本の問題の影響を受けてさらに分厚くなった本の問題を解いていく。

それから1時間ほど経ったところでさすがに気持ちも切り替わって黒い本の変化を受け入れられるようになり、


「あのぉ。その本、まだ読むんですか?」


伊奈野は、読まないのならば思い出として回収しておこう(そんなものを出していて自分が厨二病だと勘違いされたくないというわけではない!)と考え、弟子たちに問いかける。

しかし返ってくるのはその質問の答えではなく、


「「師匠!これどこで手に入れたんですか!」」


「え?」


質問だった。

質問に質問で返すなと言いたいところだが、2人とも顔が真剣なので伊奈野もその言葉を飲み込んで正直に答えることにする。


「それ、先ほど言っていた問題集を解いた後のものなんですよ。実はなんですけど、私も少し助けになろうと思ってイベントというのに参加してたんですけど……」


伊奈野は事情を説明していく。もちろん、伊奈野の()()()()()()範囲での話を、だ。

それ以外の知らないことは知らないし、説明もできない。


「これは間違いなく、あの危険だと言われていた寄生虫でしょうね」

「そうよね。まさかそれを本に入れて封印するなんて………」


ただ、そんな説明でも2人は納得していた。

(え?寄生虫?私の倒した黒いあれってスライム的ポジションじゃなくて寄生虫なの!?………まあ、そういわれてみれば元々ヒルみたいなみためだとは思ったし、虫っぽさはあったもんね)

2人の会話で衝撃の真実を知る伊奈野。しかし、だからと言って伊奈野が何か影響を受けるかと考えると特にそんなことは思い浮かばない。


「あのぉ~。私は寄生されてたりしないんですよね?」


「はい。そうですね。師匠からは気配を感じません」

「大丈夫だと思いますよ」


自分のアバターにまで寄生されていれば将来的にダメージなどを受けることになって定期的にキルされてしまう可能性があったとは思うが、そうでないのであれば困ることなど何もない。

伊奈野は黒いスライムのような何かが寄生虫だったとだけ認識を改め、それ以上は何も考えなかった。

ただ、


「師匠」


「なんですか?」


「この本を暫くお借りしてもよろしいでしょうか」


「え、えぇ?その本を、ですか?」


いかにも中二病臭い本を借りたいと言い出す弟子2人。いくら寄生虫の影響を受けているからと言って、持っていくほどのものなのかと伊奈野は考えた。

そして、気づく。


「あっ、い、良いですよ。2人はそういう趣味なんですね」


「「ん?ありがとうございます?」」


伊奈野の言葉に首をかしげるも、本をもらう2人。

伊奈野は2人がその本の見た目が気に入ったのだと考えたわけだ。自分は全くと言って良いほど興味もないしかっこいいとも思わないデザインだが、人の感性は様々。実際そういう見た目のものが売れるのも間違いないわけだし、2人がそういうものが好きなら貸しても構わないだろうと考えたわけだ。


そうして話が落ち着いてくると、


「でも、私嬉しいです。師匠にそんなに協力してもらえてたなんて」

「どうでもいいものと思われているかと考えていましたからね。そんなに気にかけていただいていたなんて恐縮です」


「あっ。そ、そうですねぇ。まあ自己満足程度のことしかしてないのでお気になさらず」


伊奈野がイベントに参加していたのは、弟子たちが関わっていそうだったから。それを聞いていた2人は喜び感謝の言葉をかけてくる。

伊奈野は視線をそらしつつ、気にするなというように首を振った。


「この本を見て自己満足程度と言われますと」

「私たちは今まで何をやってきたのだと思わないこともないのですが……」


ただ、その言葉で弟子たちは苦笑いを浮かべる。

何かがある様子だった。


ここで伊奈野が考えるのは、

(え?もしかして、あの寄生虫ってレアものだったりするのかな?今までやってきたことがどうこうっていうから、出会える確率の低いこの寄生虫を探し回っていたとかそんな感じ?)

ということ。他にも可能性として、

(寄生虫自体が珍しいのではなく、寄生虫の種類が珍しかったとか、この本の色とかが珍しかったとか?寄生虫はガチャみたいなものだと思えば、黒くて金色の字でタイトルが書かれているタイプは珍しかったり?)

伊奈野はこれでもゲーマーなので、そういう知識は持っている。何となくこれ以上のことを知ると沼りそうな気配があるなどと思って、それ以上考えることをやめた。


「………あっ。そうそう魔女さん」


「ん?どうしました?」


「その本に書いてあった問題を参考にして問題を追加した新しい本、いりますか?」

「いります!」


即答だった。

ここから「新訂版教科書」が出回っていきまた収入が増えることになるのだが、伊奈野は気づくこともない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 邪神は教材となったとさ……チャンチャン
[良い点] サブタイがガチャ沼になっていますわね なんのことかと思えば寄生虫ガチャでしたわね [気になる点] その本の内容はどうなっていますの? [一言] わたくしはちゅうになびょうきにかかっていませ…
[一言] 珍しく受験勉強以外のことばかり話したな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ