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25コマ目 刺客

以前参加したイベントの伊奈野の行いで、凍結の動きを止める効果が主に注目されていた。

ただ、本来この寒さというのは凍結だけしか効果を発揮しないわけではない。もちろん凍結が大きな効果の中の1つであることは間違いないのだが、それはそれとしてそれ以上にダメージもまた発生し力を発揮してくれるのである。


とはいえ、伊奈野が使う周囲への氷属性系ダメージは地形ダメージのような物であり、しかもいくら強力と言えどアイテムから継続して発生するものであるためそこまでなものではない。

せいぜい十数秒に1ダメージ食らうかどうか程度のペースでしか効果は発揮しないのだ。それこそ自然再生の類の効果が出れば、充分無効化できるという程度のものでしかない。

だがここで問題なのが、凍結の効果も受けていることだった。

たしかに地形ダメージの類ではあるし凍結も動きを止める状態異常でしかないのだが、その2つが合わさって何も起きないわけではない。その2つが組み合わさることで、より受けるダメージは増加していくのだ。

それこそ、凍結の値が高ければ高いほど、継続的に受けるダメージは比例してペースが速まり増加していく。

そんな凍結の影響の最終的な結果というのが、


「うげええぇぇぇ!!!???無理無理無理無理!!!!」

「速いっ!?新型か!」

「くっ!残像か!」


対応できなくなったプレイヤーたち。その視線の先には、縦横無尽に走り回り油断したところに突撃していく凶悪な存在がいた。

しかもその存在の基となったのがたった1人のプレイヤーというのもまたある意味皮肉な話ではある。

伊奈野の凍結と寒さのダメージによって倒されたとはいえ、倒されたのは大罪持ち。元々ある程度強かったのは間違いないのだ。しかもそれが、少し手を加える形でよみがえったのだから手の付けようがない。


「なんか明らかに移動速度が現物よりも上な気がするんだが!?」

「元々速かったけどここまではなかったはずだよな!?」

「アンデッドになったのになんで逆に強化されてるんだよ!チートだチート!!」

「それで強くなれるなら俺もアンデッドにしてほしいくらいなんだが!」


プレイヤー達もその亡骸の主を知っているようで、強化具合に驚愕している。

もちろんこの強化が行なわれたのは、死霊術が特殊なものであるからというのも間違いない。

通常ではアンデッドというのは最初になった時には元の体よりも大幅に弱体化してしまうものだが、ここで使われている死霊術は禁忌指定されるほどのものであるためそんなことは起きない。さらに言えばその地形に合わせて性質をある程度変化させるなんて言うこともできてしまうため、今目の前にいる存在は特定の条件を満たしているからこそ元のプレイヤーよりもさらに強化された存在となっているのだ。


もちろん、その条件が満たされなければ逆に弱体化してしまうのは間違いないのだが。

とはいえそんなデメリットがあるにしても十分すぎるほどにメリットが上回っているわけで、


「仕方ねぇ!防ぐのはやめるぞ!内側に入れて行動を封じる!」


そんな判断が下される程度にはプレイヤーたちも追いつめられる状況となっていた。

流石に被害が出る作戦であり全員から肯定的に受け止められるような作戦では当然ながらないのだが、


「それしかないか……………」

「俺のとこ来るなよ!絶対来るなよ!来たらわかってんだろうな!」

「こんだけメンツがそろってても1人に追い込まれるのかよ。ちょっと鍛えなおさないとだめか」


それ以外に有効な手段が思いつくわけもなく。おとなしくその作戦を受け入れるほかない。

それぞれ少し間隔をあけて、敵が入り込むことができる隙間を作っていく。


今までは固まっているプレイヤーたちの表面をなぞるようにして高速で移動していた相手だったが、奥まで入り込む道ができたというのなら話は別。

後衛職もまで届くかもしれないことを考えれば奥の方が効果が高いのは間違いなく、その隙間に向かって突撃が行れて、


「いまだ閉じろぉぉぉ!!!」


嫉妬持ちの号令のもと、プレイヤーたちは一気にそれぞれの間隔を詰めていく。

それにより当然距離が短くなるのだから敵の近くにいるものは通常よりも大きなダメージを受けることは間違いないのだが、それでも、


「……………これで、逃げられないな」


がっしりと両腕が摑まれる。

プレイヤーの1人が確保することに成功したのだ。抜け出せなくなり暴れようとしたタイミングを見計らって捕らえたのである。

いくら移動速度が速くても道をふさがれてどうしようもなくなったのであれば多少無理をすればつかむことはそう難しいこともでもない。

多少のダメージは受けるが、それでもそれ以上の結果を出し問題なく確保できたのは間違いない事だった。


「ナイス。追加でこっちも拘束しとくな」

「タイミング合わせて攻撃するぞ。誤射しないように気を付けろよぉ」


確保できたと言ってもさすがに両手で握っているだけであるため不安が残り、縄などいろいろなもので追加の拘束が入っていく。

さらに動けなくした後仕留めきるために攻撃も準備され始め、いつでも相当なダメージを叩き出す事が可能になり始めていた。

そうして数秒後、ある程度準備も調いはじめ、


「それじゃあやるぞ~。せー、」


せーの。

そう合図を出すはずだった。出せるはずだった。

難しいことなど何もなく、集中砲火が行なえるはずだったのだ。


だが、まるでタイミングを見計らったかのように。

この瞬間を待っていたかのように突然少し地面が揺れ始め、合図が出るか出ないかギリギリのところで、


「うげっ!」

「ここで出てくんのかよ!」

「また面倒なのが来やがったぁ!」


プレイヤーたちの前に、新たな敵が現れる。

それは地面からすさまじい勢いで飛び出し、両手で拘束を行なっていたプレイヤーを丸のみにする。


とはいっても、さすがに一瞬で全てが呑み込まれるわけではなく、一応1回で食べられるのは胸から下くらい。つかんでいる腕までは消えない。

だがその衝撃が大きいのは間違いなく、


「うごぉぉぉ!!!????HPの減少が尋常じゃないぞ!?」


「っ!今行く!」


かなり上位のプレイヤーであることは間違いないのだが、丸のみとまではいわないが半分ほど食べられてしまえば相応のダメージは受ける。

急いで助け出そうということで動き出すのだが、


「うごふぉっ!?それ、俺の方にもダメージがっ!?」


「あっ!すまん!?」


外側を殴ったとしても、中にいるプレイヤーまで衝撃は届く。

流石にそれだけの被害を受ければどうしようもなく、ここで初めて精鋭の脱落者が現れた。

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