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36コマ目 防御

やっと1話書けた(白目

「そういえばお嬢様、次のイベントはどうされますの?受験近いですけど、参加されまして?」


「え?イベント?何かあるの?」


アーティファクトの効果を確かめた後、さすがにそれ以上何かを確認したりする時間などはなく伊奈野は学校へと向かうことになる。何百年とかそれ以上も前のお守りはまだ効果があるのかという議論もできずにだ、お焚き上げなどして新しい物に変えなくてもいいのかと思うというのに。(誰かさんがネットで調べた限り安産とか合格とかそっち方向のお守りはその目標を達成するまで使えるらしい。知らんけど)

そうして登校する中、瑠季に質問されイベントが開催されることを知った。

この時期のことを考えれば、何か季節などに関係するイベントのようには思えず、


「メインシナリオのイベントですわよ?ご存じないんですの!?」


「あぁ~。メインシナリオね。全然興味ないから…………」


開催されるのはメインシナリオのイベント。メインシナリオという単語自体は伊奈野もここまで何度か聞いたことがあるが、そこまで興味があるものではない。

それこそ初回は間違えて入ったし、2回目は寄生虫目当て。3回目は参加しなかったし、4回目は前半で毒をばら撒いて後半は出場禁止のため参加せず、5回目も参加しなかった。半分近く参加してないのだ。

6回目があることをまず知らなかったし、伊奈野が参加する予定は当然ない。


「どんな感じのイベントなの?」


「今回は個人戦になるらしいですわ。なんでも、個室にそれぞれ入れられてポイントを取り合うようなイベントになるんだとか」


「へぇ!個室に?」


「そ、そうですわ………随分とそこだけ食いつきが良いですわね」


参加する予定はなかった。

が、気になる単語が聞こえたため伊奈野は興味を持ち始める。勉強をしたい伊奈野に個室なんて言う言葉を聞かせたら飛びつくに決まっているのだ。


「個室に入って何するの?脱出ゲームみたいな感じ?」


「いやいや。違いますわ。それぞれのプレイヤーの部屋にはオーブって言われるものが置かれますの。そこに全員10(ポイント)入れられていて、それを奪ったりしながら戦っていくんですわ」


「う~ん?つまり、他のプレイヤーからポイントを奪ったりして自分のポイントを増やしていくってこと?」


「そうなりますわね。自分のポイントを守りたければ個室にこもる必要がありますのでポイントを増やすということが逆に難しいですが、攻めに出れば自分のポイントは奪われてしまいますの。どちらに重点を置くかが大切になってくるイベントですわ」


「へぇ~」


近くの部屋に誰が来るかによって全く状況は変わってきそうだが、それは運が影響するものであるから仕方ないとしか言えないだろう。たいていどんなイベントでも運は必要になるものだ。

ただ伊奈野としては、そんな戦略性など考えなくとも勉強さえできればいいので、


「防御を固めてたら狙われにくいとかあるかな?」


「あぁ~。あると思いますわ。攻めるならやはり人のいないところの方がいいですから」


「そうだよね。じゃあ、私は防御を意識すれば………」


伊奈野に天啓が降りる。

毎日同じ場所で勉強をするよりは他の集中できる場所を見つけて勉強することは必要だと伊奈野は考えているのだ。そのためここでまったく害なくイベントで与えられる部屋で勉強できることは非常に良いことだ。

そしてそのイベントにおいて他者に邪魔されずに勉強できる状況を、今の伊奈野であれば作り出すことができる。


「なら、もうちょっとアイテムとか調整してイベント参加してみようかな」


「あら、お嬢様参加されますの?お勉強はよろしくて?」


「大丈夫。イベントの中で勉強するから。個室が与えられるなら、そこで防御固めつつ勉強しようかなって思って」


「ん?……………なる、ほど?」


瑠季から「何言ってんだ、こいつ」というような眼で見られるが(何を言ってますの失礼な。私の目はもっときれいな言葉で「勉強をやりすぎてイッちまいやがりましたのね、かわいそうなお嬢様」と言っておりますわ!)、伊奈野は全くそんなことは気にせず、というか気づく様子もなく。ただその頭の中でこの先の予定を考え始めているのだった。

イベントに参加し、そこで防御を固め勉強をするための予定を。


すでにある程度の計画はその頭の中で立てられている。

あとは実際にそれが使えるかどうかを試してみるだけだ。



そうしてイベントへの参加を決めてから数日後、


「………し、師匠のあの防御凶悪過ぎないかしら?」


「そうですね。下手をすると聖女ちゃんの結界よりも場合によっては硬いかもしれないです」


「教皇様?それ言っちゃったら聖女様から怒られませんか?」


「だ、大丈夫ですよ。比べる相手が師匠なら聖女ちゃんもさすがに何も言わないはずです。あと、この光景を見れば…………」


「……………まあ、それはたしかにそうかもしれませんね」


伊奈野の防御形態は周囲のNPCから驚愕され、難攻不落なのではないかと思われるほどのものとなっていた。もちろん相性などの問題はあるが、それでも相当強力なことに間違いはない。


ということで時はあっという間に過ぎ去りイベント当日まで進む。

万全の状態で準備をした伊奈野は、目の前に現れた参加するかどうかの確認画面で、


「YES、と」


イベント空間へと移動する。

転移先は瑠季から事前に伝えられていた通り個室で、窓などもなく外の様子は一切見えない。

家具や装飾なども一切なく、あるのは部屋の中央にある台座とその上に置かれているイベントで取り合うことになるのだろうオーブ。


「ここが開始するときに開くのかな?」


壁の一部が他と違い、伊奈野はそこに目を付ける。

形から考えてそこが切り取られると人が出入りできそうに見えるため、イベントが開始するとともにそこが開いて外に出られるようになるのではないかと思われるわけだ。


「とりあえずスタートまではもうちょっと時間あるし、そこまで勉強してようかな~」


ここから恐らく激しい戦闘が行われていくことになるのは明白なのだが、伊奈野に一切緊張した様子は見られない。

自分が攻撃されることはないとかなりの自信を持っているようで、いつも通り勉強を始めてしまった。計画の見直しすら行うこともなく。

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― 新着の感想 ―
[一言] 防御機能によっては再び阿鼻叫喚の地獄に もしお姉様の師匠だと特定されたらみんな突撃して…oh…
[一言] 攻めに来た人は主人公が勉強してる姿見たらどう思うんだろう
[一言] 察し、ポイント死守と見せ掛けて反射無双で他からポイントをかすめ取ってトップだ!! (笑)
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