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26コマ目 王水

本日2話目

毒を欲している伊奈野。そんな彼女が頼る相手は、


「店主さん。毒はありませんか?」


「おや、お得意さん。久しぶりだねぇ。最初のセリフがそれかい?」


露店の店主さん。

店主さんは転移してきた伊奈野の突然の要求に苦笑しつつ、辺りを探り出す。

そうして出してくるのが、


「毒って言ってもいろいろとあるけど、何か欲しい種類があったりするのかい?」


「いえ特に。ただ量が欲しいですね。予定より大量に必要だってわかったので」


「なるほど?何をするつもりなのかはよく分からないけど、それならこれなんかは安くてたくさん入ってるよ」


大きな釜に入った毒。

明らかに危ないと分かる濃い緑色の液体であり、伊奈野の欲しているものに合致しそうに思えた。


「この釜1つで、400Gってところかねぇ」


「え?安いですね。もしかして、見た目と違って毒としての効果はほとんどないとか?」


「いやいや。そんなことはないよ。この毒は需要より供給量が圧倒的に多くてね。他の毒と比べても圧倒的に安くなっているのさ。適正価格だよ」


「あっ。そうなんですか」


「私としても在庫が大量にあるからすこしでも減ってくれるとありがたいんだけど、どうだい?」


どうするのか、と問われたならば。伊奈野の答えは1つに決まっている。

それは当然、


「買います!10個もらえますか?」


「ん?そんなに良いのかい?」


「はい!その釜1つだけだと私が使う目的には足りないと思うので」


「おやおや。そんなに毒を使って何をするつもりなのかね……………まあ良いよ。そういうことなら10個売らせてもらうよ。ついでに、多く買ってもらったお礼にもう1つおまけでつけてあげようかねぇ」


「良いんですか?」


「構わないよ。どうせまた大量に売られてくるからねぇ。こっちとしても毒ではあるし簡単には処分できないんだよ」


「ああ。それもそうですか」


店主さんはこの毒が大量にあって在庫スペースを圧迫しているため、とりあえず大量に売るなりして手放したい。

伊奈野はただただひたすら大量の毒が欲しい。

お互いに利害が一致しているのである。

こうして伊奈野は、大量の毒液を手に入れたのであった。


が、1度動き出した以上ここで終わらないのが伊奈野である。

ここからさらに、


「よし。それでは王水を作っていきたいと思います!!」


「「おぉ~!」」


毒というか、酸を作り出すことにした。

王水というのは塩酸や硫酸、硝酸といった強酸であっても溶けにくい金などの金属すら溶かしてしまう酸である。

濃塩酸と濃硝酸を3:1の割合で作り……………という細かいことは良いとして、伊奈野の知識にある中で1番強力な酸だ。


「いや~。まさか私が強酸の作成にかかわることになるなんて思いませんでした」

「やはり知識を持っているのと実際に作るって見てみるのでは全く違いますね」

「うぅ~ん。まさに黄金比で作られてるって言って良いよね。僕もほれぼれしちゃうよ」


今回の協力者に魔女さん、司書さん、屈辱さんの3人が居り、それぞれ非常に興味深そうに作成された王水を見ていた。

今回のことで強力な酸も手に入れた伊奈野は、毒も酸もその他の様々な害のある液体も取りそろえた万全に近い状態である。(ただしだからと言ってこれを拡散して人をキルできるほどであるとまでは言えないが)


「やっぱり薬品同士の相性もあるでしょうし、毒なんかも全部混ぜておくことはできませんよね」


「そうですねぇ。使い方にもよるとは思いますが、1つ1つ分けて使っていくべきかと」


「となると、どれを最初に使っていくかなんて言う順番も大事になってくるわけですか~」


毒や酸を揃えたらそれで終わりというわけでもない。

今まで屈辱さんにもらって使っていく予定だった薬品の時には考えていなかったが、熱が入ってきたことで薬品を使う順番まで考えていくことになる。

酸を先に使うのか毒を先に使うのか、それとも他の状態異常を引き起こす薬品を使っていくべきなのか。そんなことを考えて、いつの間にか伊奈野の計画はかなり緻密なものに変わっていた。


「今度こそ計画は完璧。後は勉強しながら待っていればいいですね!!」


計画も修正したことで今度こそ勉強へのみ集中し、イベントへ備えることにした伊奈野。

こうして彼女自身の予定は完結したのだが、


「……………そこのお嬢ちゃん。ちょっといいかい?」


「ん?もしかして私、ですか?」


そんな彼女を偶然見つけるプレイヤーが。

そのプレイヤーは、伊奈野の外見が自身の探している()()()に似ていると考えていて、


「そう。お嬢ちゃんだ。よければ少し、協力してもらえないかい?」


「は、はぁ。内容には因りますけど」


彼女がその探し人であるかどうかというのを確認する。

もちろん伊奈野は何も分かっていないため突然のお願いに困惑しているが。


「それじゃあお願いなんだけど、ちょっと毒とか持ってないかい?」


「毒、ですか?」


伊奈野は驚愕する。

(も、もしかしてこの人、私と同じこと考えてるぅぅぅぅ!!!!?????)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 改めてメンバーがチートしてますわね [一言] そんなこと考える(狂)人なんているわけ……ないですわよね?(前例あり)
[一言] 王の水?ハッ!
[一言] 細かいからまあいいかとも思ったのですが…。 王水の混合比が逆ですね。 塩酸3:硝酸1が正しいですね。
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