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6コマ目 寄生植物

図書館や外の者達が必死に雑草の処理をした。

図書館という場所で火事などおこすわけにはいかないのだから。


だが、


「お、おい。いつになったら火が出るんだ!?」

「いつかだ!いつか!ここで止まるわけないはいかねぇんだよぉぉぉぉ!!!!」

「……もう、無理だ。俺は、寝る。お前たちは、止まるんじゃ、ねぇぞ」

「「「寝るなぁぁぁぁ!!!!!!」」」


いつまでたっても火はつかず、ひたすら除草作業に従事させられ続ける。10時間を超えた辺りから限界を感じるものが現れ始め、1人、また1人と地面に倒れ伏していくのであった。

それでも植物は、生え続ける。


さて、そんなことになっていることなど知らない伊奈野は、


「もうちょっと攻撃性の高い魔法にすべきだったかな?でも、やっぱり図書館を破壊するのは気持ち的にちょっとなぁ………」


そんなことをつぶやいて勉強していた。

実を言うと、彼女の使った魔法は一切他人へと直接的な害をなさない魔法だったのだ。その光景を見た者達は勘違いしているが、魔法の効果はただ植物を周囲に生やして成長を促進させるだけ。

油を生み出したり発火したりする要素はない。


本当にただ、植物をはやして成長するだけ。

ただ煩わしいだけの、何の害もない魔法だったのである。


ただこれにより、ダンジョン攻略に遅れが出たのは間違いないだろう。



さて、とはいえ再度確認するがこんなことは全く知らない伊奈野。

そんな彼女はいつも通り勉強を楽しみスヤスヤと眠って適度な運動をして、


「よぉし!今日も勉強するぞぉぉぉ!!!!」


次の日。勉強のことしか頭に無い(さすがにそれは言い過ぎ)な状態の伊奈野がゲームへとログインした。

今回は日本サーバ。

……………ではなく、海外サーバである。土曜日であり日本サーバは混んでいるのだ。


ただ、海外サーバではダンジョン攻略が行なわれているし、図書館も警戒されている。

伊奈野の使える場所は現在存在しない。

だがなぜか、伊奈野に悩む様子は見られなかった。


「さて。まずはダンジョンの方に行ってみて、と」


伊奈野はログイン後最初に墓場へと向かって行く。入れそうならばダンジョンへ入ろうと考えたのだ。

そうなれば特に悩むようなこともないし、いつも通り過ごすことができる。

だがさすがに、


「1日でどうにかなる話でもないよねぇ~」


伊奈野の視線の先には、群衆が。()()()建物が全体的になくなっていて、そこに人が多く固まっている。

そしてさらにその先には、


「あっ。前哨基地みたいなのができてる」


墓場の入り口付近に、砦のようなものができていた。

墓場に誰かを入れないように。そしてそれと同時に、墓場から出てくる何かを規制するような見た目となっている。

ダンジョンへと侵入することは難しそうだった。


「じゃあ、昨日作った魔法を『設置』だけしておこうかな」


群衆の中。伊奈野は近づいて行って誰にも注目されないままに魔法を『設置』する。

周囲ではダンジョンに入りたいのかタダの野次馬なのかは分からないが、人々が大声で何かを言っていた。

(これ、いつぐらいまで続くのかな?)

いつになったらダンジョンへと入ることができるのだろうか。そんなことを考えつつ伊奈野はこの場から離れるために、というわけではないが、


「クイズに参加、と」


クイズ大会のイベント。

それは日本サーバに限定されたものではなく、世界中で同時に行なわれている。そのために日本サーバでなくても、プレイヤーは参加が可能だった。


「じゃあ、まずはクイズを解いて、と」


伊奈野はクイズへと向かって行く。

相変わらず黒い本が対策のための本を用意してくれていて、その分厚さは最初にもらった時の2倍以上になっている。が、伊奈野としてもそれに文句があるわけではなく、逆に軽い感謝をしつつ真剣に問題へと取り組んでいった。


「ん~専門用語が多くて難しいなぁ」



さて、では伊奈野がクイズに苦戦している間に、伊奈野がクイズ大会用の空間へ転移した後のことをお伝えしよう。

伊奈野が消えた後も特に何かが変化することはなく墓場の前で騒ぎが起きていたのだが、


突然、


「え?おい!なんだそれ!?」

「何か変なのついてるぞ!?」


「へ?何って……………何だこれぇぇぇ!!!???」


一部で驚愕する声が聞こえた。そこには、巨大に膨れ上がった植物が。

だが、昨日のようなただ植物が生えたりその成長が早くなったりしているのではなく、


「なんで俺の体から植物が!?」

「お、おい。これ誰かとってくれよ!!」


プレイヤーやNPCの体から、植物は生えてきていた。

まるで、そんな彼らから養分を吸っているとでもいうように激しく脈打ちながら植物は勢いを衰えさせることなく大きくなっていく。


大きくなっていくのは主に一部分。

ツタの先に実った実のようなものが、破裂しそうなほどにぶっくりと膨らんでおり、


「っ!?や、やば!俺のHPはもう0に!?」


1人の寄生をされたような状態のプレイヤーが叫ぶ。自身のHPがいつの間にか減っており、もうすぐ0になる、と。

その言葉の直後だった。


そのプレイヤーや周囲のプレイヤーたちは、


「あ、あれ?」

「リスポーン、した?」


気づく間もなくリスポーンさせられた。

理解も追いつかないままもう一度墓場の入り口まで戻ってみれば、


「な、何だよ、これ」

「どうなってんだよっ!?」


彼らは唖然とする。あまりにもひどい目の前の惨状に。

彼らの目の前では、


「とってくれ!嫌だ!死にたくない!!」

「誰か、誰かああぁぁぁ!!????」


悲鳴を上げて逃げ惑う人々。そこに張り付き一切離れる様子のない植物。

そして限界を迎えた人間に着いた植物による()()

それらが、収まる様子もなく繰り返し続けられる。大勢が倒れ伏し、爆発に巻き込まれ、寄生され、命を奪われている。


その光景に目が行って誰も気づいていないが、墓場の砦も大きな被害を受けて半壊しているのであった。




「よし。終わり!」


自身の魔法により起こっている惨状は知らず、クイズを終わらせて満足している伊奈野。

そんな彼女は、もう用は済んだということでイベント用の空間から退出……………はせず、


「今日は、ここで勉強だぁ!!」


その空間で問題集を取り出して勉強を始める。

彼女は海外サーバで勉強が難しい事への対策として、このイベント空間を利用することを考えたのだ。特にこの空間にいられる時間に制限があるわけでもないので、今日はずっとこの空間で勉強し続ける予定である。


「よぉし!頑張るぞぉ!!!」


彼女はフィールドに戻ることもないため、自身の引き起こした惨事に気づくことはやはりない。

そして、相変わらずログも確認されなかった。


《称号『植物創造』を獲得しました》

《スキル『接着』を獲得しました》

《スキル『緑化』を獲得しました》

スキルとか称号とか獲得させるの最近忘れてたぁぁぁ!!(たぶん章終わりのステータスのところで勝手に増えてると思います

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― 新着の感想 ―
[良い点] 草生える魔法! 生えられた人は草生えんが… クイズ空間は…うん、理想的な勉強場所ですね。 超厚い本を持って入った時そう思ってました。 むしろなぜ早くそうしなかったかと思ってしまいました…
[一言] 一酸化炭素と違って禁忌指定されない…。 まあ、あれこれ禁忌指定したらゲーム成り立たないか。 運営としては黒本を禁忌指定したいだろうけど、呪い解いたり、邪神の使徒を無力化するから英雄が否って…
[気になる点] スキルの獲得タイミングがよくわかりません。 スキルなしでも粘着する植物を量産できてたようですので、スキルの存在意義がわかりません。
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