プロローグ
不景気。戦争。内乱。食糧不足。思想の変化。成長力の低下。様々な理由で世界が停滞する中、1つの革新的な出来事が起ころうとしていた。
それが、フルダイブ型VRMMO『new world』の登場。
「現実より長い時間、あなたは新しい現実と共に生きられる、ねぇ」
脳の何とかかんとかをうんたらかんたらする(急な思考能力の低下)ことによって、そのゲームの起動中体感時間が3倍にまで引き延ばされる。
最大1日8時間までというログイン制限は健康や安全のため一応付けられるらしいが、それでも一日が3分の2増加するのは非常に大きいだろう。
そして、必ずそこに誰しもがのめり込むはずだ。それこそ、現実のいざこざがどうでもいいと思える程度に。
「冒険や戦闘だけでなく、様々なものの作成や芸術だったり料理だったりも行える、と」
そんな世界に挑もうとする若者が、ここにもいた。
それが、
「体感時間3倍………………つまり、これで受験勉強がみんなよりたくさんできるってこと!?」
夢も希望も無い勉強という非情な現実をわざわざゲームにまで持ち込もうとする狂人。高校3年生という受験生な存在だった。
「これは購入間違いなし!!」
速攻でポチられる10万円近い機材。ただ、受験生というのはそれほどまでに金のかかるものなのだ。何せ受験も一種の戦争なのだから。
「勉強時間で差をつけて、レッツ志望校合格!!」