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Destruction=Install  作者: ennger
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91 狂気の通り道

 イザナミ


 ゆっくりと場所を舞降りた後は歩いて村へと向かっていく。

 大きくもない外壁ではあるが、しっかりと石で積まれており木などを用いて壁として固定している。正に自分たちが来ることを予期していたようでもある。


「やはり、こういった箇所にも存在しますか。」


「お待ち下さい。貴女は一体」


 喋っていた門兵の頭が斬り落とされた。吹き荒れる血飛沫と静寂である。


「アレイスター様以外は喋らないで下さい。全く・・・頭が悪くなりそうです。」


 返り血は一切浴びない。いつ斬られたのかわからない。

 しかし、その刀は何故か血を一切付着せず、綺麗な刀身を維持していた。


「なっ!」


 2人目が同じく一言目で首を斬り落とされた。そして再びその足で門へと近づく。ただ無言にその門を4つにバラバラに斬り壊していく。

 その門が破壊された村人たちはいきなりの出来事に口が開き、手が止まり、その砂煙の奥を見詰める。ただ静かさだけがそこに残る。


 そして煙の中から綺麗な紫肌の足とその黒いハイヒールが見えた。次には美しい着物を着飾った女性が姿を現す。


「そんなに大きくはありませんか。」


 遊んでいた子供もその光景から目が離せないでいた。もしくはその美しい姿に見惚れていたのか。ただ茫然としている。


「何だ!?」


 奥から若い青年と獣人の女に子供っぽい魔法少女がやってくる。


「なっ!?あんた・・・・人?なのか?」


「・・・・黒髪に黒目・・・異界人か。」


 イザナミはやや警戒をする。後方に主人がいること。未知の敵への警戒から。


「おいおい、まさか・・・・」


「いえ、私たちは侵略者ではありません。」


「おい!不味いぞ!?コイツは化け物だ!」


 獣人特有の野生の勘からイザナミの危険度察知していた。イザナミの発言は無視である。


「ああ解ってる。というより只者じゃない事ぐらい知ってる。・・・・・・貴女様は一体・・・!どちら!?」


 煙が止んだ先には門の外で倒れている2人の死体があった。そっちに目が行ったせいか、言葉が詰まっていく。


「え?・・嘘・・・・」


「話す余地もない。これまず」


 獣人女性が横から倒れてきたのであった。つい、反射的に抱き寄せた青年であったが。


「へ?」


 その女性は既に頭が無くなっていた。


「あっ!アリーゼさ!!!」


 獣人女性の頭部が宙を舞い、やがてイザナミたちの間へポトリと落ちていった。

 暫くして、村人たちは悲鳴を上げた。村全体どころか、その外までその絶叫は響き渡る。


「なっ!・・・・・へ?」


 あまりのいきなりの出来事に青年の脳は停止していた。


「に、逃げて!!」


 小さな魔法少女は魔法を咄嗟に唱えようとした。


「!」


 だが魔法自体が発動しなかった。正確には唱えようとした術式や魔法が壊されたのであった。


 当のイザナミは何もしていない。ように見えた。だが正確には、イザナミが魔法を封じたのであったが、どうやったのかが分からない。


「にっ」


 最後まで言葉は言えなかった。今度は身体ごと少女を縦に真っ二つに斬られていき、べちゃりと死体が増えていく。


「!!」


 青年は仲間を失ったが、それ以上に目の前の恐怖に思考が働かずになっていた。足はがくがくと震えており、動けずにいる。


「目障りね、少し力を使おうかしら。」


 イザナミの周囲から桜吹雪が舞う。その桜は空気中に漂い、村を一瞬で覆い尽くす。


「ねえ?知っていまして?綺麗な桜の下には沢山の・・・・人の亡骸が埋まっていらしてよ。」


 今度は周りから更に悲鳴が響き渡る。


「!!」


 そんな周囲を見渡すと、そこには村人たちの身体がどんどん萎れていき、カラカラな姿へと変貌している。 降り注ぐ桜がピンクから綺麗な紅色へと変わっていく。


「美しいものにはその生き血が必要とはよくいったものよね。 あれ?アフロディーテみたいな事言ってるわ。」


「な・・・んで?」


「何で?って簡単です。ただそこを通りたいから。」


「へ?」


 青年は更に理解できなかった。


 彼の前世は病弱であり、何もできないまま余生を迎えたが、この異世界で再び立ち上がる力を得たのであった。 そんな村の復興などが順調な最中にその恐怖はやってきた。


「・・・・なんで!!」


「うるさい。」


 イザナミは開いた口に刀を刺し込んだ。そのまま上へと刀を持っていき、頭部を立てに斬り裂いた。


 頭から噴き出た血が舞い、浮いている桜に付着する。そしてその桜は元気になったかのように紅く光る。


「これでスッキリしました。さて迂回なんてバカな真似はせずに進みましょう。」


 彼女は略奪をしない。女すらも。ただひたすら殺し尽くし、その場から全ての痕跡すら消し去っていく。


 こうして1つの村が理不尽にも消え去った。


 アレイスター


「・・・・・そうか。」


 ほんの僅かな時だった。一瞬で悲鳴が上がり、沈む。かと思ったらまた響くも沈む。 そして今、途轍もなく静かな空間へと変わった。

 イザナミは何事もなかったかのように馬車内へと戻る。


「フレイヤ。」


「分かったよ。」


 今度はフレイヤが馬車から降りた。


「・・・・お嫌いになられましたか?」


「いや、これが俺の道だ。迷った俺の代わりにイザナミが先行してくれたんだ。こんな情けない俺のためにありがとう。」


 イザナミは俺を抱き寄せた。


「ありがとうございます。ですがやはり少し後悔を?」


 俺はその大きな胸に包まれながらも、性欲は湧き出ず、ただその胸に埋めて静かに悲しんだ。そんなイザナミはよしよしと頭を撫でては逆に慰められた。


 再び馬車は動き出した。


「お疲れ様ね、フレイヤ。」


 イザナミは俺を抱き寄せたまま、馬車に乗り込んだフレイヤを労う。


「別に、ただ道を作っただけだよ。」


 フレイヤはまたしても不機嫌そうに返答する。


「神よ・・・・」


 俺はやがてイザナミからゆっくりと離れる。


「ごめん。」


「謝らないで下さいませ。」


「分かった・・・・愛してるよイザナミ。」


「!」


 イザナミは片目から涙を少し流す。そして再び俺に抱きついてきたのであった。


「演技くさ・・・」


 フレイヤはアレイスターには聞こえないように小声で呟く。

 ヘルメもまたイザナミの手前にイラつきを感じた。なお、ジャンヌはアレイスター以外興味無しであった。

 そんな渦中にいるアレイスターは彼女たちの心境などを知ることなどない。


 そこから真っ直ぐと進むといくつか村や小さな町が度々現れたが、全て焼き尽くし、壊し尽くし、殺し尽くした。

 略奪は移動リスクから行わなかったが、そこに住まう者の命は奪っていった。


 俺は最初ほどではないが、《《心の痛みが徐々に感じなくなってきていた》》。

 大義名分がある戦い、ただ虐殺を行う戦いと両方を経験してその心と精神を鍛えた。

 虐殺は初めての中でも、一方的な悪意としてしか捉えていない自分からすれば、美女たちの行動に心が痛く重くなる。矛盾とはこのこと。

 実際に目の前で全てを目撃した訳ではない。そのお陰か、暫くしたら何ともないようになり、どんどんその耐性は身につくばかり。

 彼女たちの表情は俺の前では普通であった。これも自分に気を利かせてだろう。返り血一つすら残さず、帰還している。


 全くもって普通の凡人な自分に嫌気がさす。


「申し訳ありません、お待たせ致しました。」


 ジャンヌが今度は虐殺のターンを終えたのか、鳴り響く大きな爆発音ともに馬車へと入ってくる。


「お疲れ様。」


「あっ!ありがとうございます!」


 目の前で唐突に跪くジャンヌ。最近はやってんのそれ?


「あとどれくらいになりそうかな?」


「もう着く頃合いかと。」


「そう・・・か。」


 最初以来あまり性も楽しめず、ただ悶々とした日々を過ぎ去っていた。


「アレイスター神様、どうかそう自分を追い込まれないよう。」


「ありがとう。でもこれが俺の決意だから受け止めないとな。」


 女の子を歪める行為ももちろんゲスではある。 だが、大量にただ邪魔だから殺す。かなり落差があり過ぎてゲスを極められずにいた。王道主人公とは違って完全に悪役であり、その姿は邪道そのもの。


「アレイスター神様、いつでも私をお使いその鬱憤を発散させて下さいませ。このジャンヌ、アレイスター様の道具へと生まれ変わってから凄く幸せでございます。」


「あ、え、あうん・・・解ったよ。」


 あまりの変態さに罪悪感も消し飛んだわ。凄いよ君は。


「そうだね、私も居るよ?」


 フレイヤもギュッと手を握ってくれる。みんな俺を心配してくれていた。


「外にも護衛や豚さんも居るから、好きな時に好きな事をすると良いよ。じゃないと逆に皆んな心配しちゃうからさ。」


「それはありがとう?なの?」


 そんなに俺荒かったの? 早くセレナーデとダレネのコント組を見て和みたい。


「周囲に監視者はいない。このまま進めば半日も経たずに到着する。」


「そう。」


 ヘルメが周囲の捜索から帰ってきていた。


「アレイスター様、いよいよです。」


「お、そうか。」


 なんか緊張してきたな。国関係の婚姻とか直接国に呼ばれて行くってもそうだけど、ごく一般市民の俺からすると、何もかもが初めてだ。

 前回のソヨの一件からそうだが、ボロが出なければいいが・・・・


 不安とは別に《《ある種の緊張感》》を抱え込む。


「ただ道中にワイバーンの群れが滞在しているようですが、進む分には問題ありません。」


「そうか。うん?」


「そうね。お肉をなるべく集めてアイテムボックスへ収納しておかないと。なるべく新鮮なうちに保管したいし、フレイヤが出てしまっては大事な素材も丸焦げの無になっちゃうわね。」


「ねえ?君はチクチクと嫌味を言わないとダメなの?逆に燃やそうか?」


「いやいや、どゆこと?」


「アレイスター様、ワイバーン」


「それそれ。」


 フレイヤが怒りそうなのすらスルーする。 何故群れ?と言いたいが、それよりも食材の心配レベルなのかよ。と色々と情報が渋滞している。


「ご安心下さいませ。ワイバーンは良い素材です。皮膚は良い防具素材へ、肉は食用として大変美味なものです。」


 説明になっていない説明だ。


「安心していいよ、私も居るし。」


 もうどうにでもなれ。


 アレイスターはフレイヤにヨシヨシされる事で全ての思考を放棄するのであった。


 そうして、平地された国を通ること数刻


「ヘルメ様!」


 外からSSRたちの伝令がやってきた。


「解っている、私とイザナミで出る。ジャンヌはここの守りを固めろ。フレイヤはそこから動くな。」


「はいはい。」


「かしこまりました!この身体でアレイスター様をお守りします!」


「人の話を聞いてね豚さん?」


 ヘルメの指示の元、イザナミ、フレイヤ、ジャンヌは個々に返答していく。動いている馬車を止め、すぐさま外へ2人出て行く。


 外のイザナミ、ヘルメは目を合わせると、イザナミが溜息を吐いては力を発動させた。 最初の村で見せた桜吹雪を同じく周囲へと舞わせた。


「ヘルメ、高く付くから覚えておいで。」


「知らん。なるべく傷つけない方法であるならこの方が手っ取り早い。」


 動きが鈍り鈍ったヘルメは10人に分身し、弱りきったワイバーンたちを次々とバラバラに殺し始めた。

 他のSSRたちも同じくそれぞれがワイバーンを斬り殺し始めた。


「はあ・・・私はこの領域維持で大変なのに・・・・」


 呟くイザナミとは別にただ黙々と標的を殺していくヘルメたち。弱々しくなっていき、空から地上へ落下していく個体もいる。そんな弱りきった相手にすら容赦なく首や手足・翼をバラバラにしていく。


 空で殺すと、噴き出す血飛沫が雨のように降り注ぐ。だがそれを回収する桜吹雪である。


「こんな一方的なの?」


 馬車内で窓から様子を伺ってみたが、何とも言えない状況になっていた。


「これぐらい私でもできるよ。」


「何を仰っているのでしょうか?貴女は丸焼き肉の完成形でご提供してしまうでしょうに。」


 何その飲食ジョーク?しかもそのネタの出所がジャンヌかよ。

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