82 黒暗
お久しぶりです。投稿していきます
アポロン視点
「アレイスター様!そんな!!」
アポロンはすぐさまアレイスターの元へ駆け寄っては、全神経を使い回復魔法を注ぎ込む。
「アポロンよ!」
今度は異変を感じたゼウスが神速の速さでその場へ辿り着いたのであった。
「ゼウス様!」
「よせ!今は集中しておれ!」
アポロンはその言葉に無言で頷き、再び回復へと意識を集中させる。
「・・・・・・舐めていた。」
息のない倒れているアマハを眺め、ゼウスは1人後悔していた。
「アレイスター様!」
ロキ、ヘルメスと気絶しているアーレスも合流した。
「そ、そんな・・・・」
ロキは狼狽える。
常に冷静沈着ではあったが、アレイスターの今の姿を見て呆然と立ち尽くしては、そのままへなりと力弱く座り込む。
「どういうこと?」
「ヘルメス」
ヘルメスがゼウスの胸倉を容赦なく掴む。
どこかフラフラとしている彼女ではあるが、ゼウスには基本的に逆らわない性格ではあった。
「遅れた・・すまん。」
「・・・・いや、申し訳ない。」
ヘルメスはゼウスから手を離す。
そしてアレイスターの元へと向かう。
「アポロン、どうだい?」
「傷は塞げました。血が減っている状況なのと精神が回復しておりません。
血は輸血と時間の経過でなんとかなります。
ですが」
「精神に関してはアレイスター様次第か。」
「アポロンよ、よくやった。」
「褒められるような事はしておりません。
むしろ、守れなかったことを叱るべきです。」
「・・・・・アレイスター様であればそのような事は仰らん。」
「・・・・・・・・」
アポロンは何も言えない。
冷静そうに見えても心はかなり焦っていた。オレンジの顔色が青ざめている。
「マズいな・・・・・・ロキ!」
「こ、こんな・・・どうして・・・いやだ、いやだ・・・」
ロキはその光景を受け入れきれていない。それどころか自暴自棄になりかけていた。
「バカが!」
「!!」
ゼウスはロキに容赦なく強烈なビンタをした。勢いそのまま横へ少し飛ばされる。
「目が覚めたか?必要ならこの電撃を持って目覚めさせてやろう。」
ゼウスは手から放電させる。
「わ、解っている・・・・・今は、他の奴らに知らせず、このまま帝国を壊すこと・・徹底的に壊し・・・いや更地だ。
中途半端では悟られる可能性がある。」
「承知した。ヘルメスよ、テュールとベローナに知らせよ。」
「ああ、了解。」
ヘルメスはフッと消える。
「マズイな・・フレイヤが暴走するやもしれん。」
ゼウスは他国の心配より、身内の暴走を心配したのであった。
アレイスター
ドス黒い。
知らない。
死んだのか?
真っ暗だ。
下を見ると怨念のような何かが俺を引っ張ろうと足元は群がっている。
今まで殺させてきた人々かな?戦いや戦争の果て迷える魂なのかな?
「ダメだったのか?まあ、そりゃ女性を食いもんみたいな感じで日々過ごして、他国を滅ぼしては、人を奴隷として扱ってはと。クズだよ。
世界を更新させるためとは言えどね。
ま、それは俺の理想だし。でも、やりたい事ではあった分、多分後悔はない。」
それでも心のどこかではまだ大丈夫。とか、まだ戻れる。とか思っていたのかな?悪夢を見てるだけだと。
じゃないと、俺の下はこんなに荒れてない。大量の亡者がウヨウヨとはしていない。つか、夢を夢と認識した以上は意識自体は本体にある筈だから。
ただ、死者への冒涜とは正にこの事よ。
「寝とったり、殺したり、殺させたり、犯したりと現代の犯罪王だわ。あーあー、どうせなら世界を完成させてから死ぬべきだよな〜。けど中途半端だよ。まあ、そこは前世と同じだけどね〜。」
残った奴等どうなんだろ。
暗い空間にただ1人ポツンと座っている。足元に群がる亡者を無視できるほど、今の俺はおかしなくらい冷静だった。
エデン国 医療棟の専用個室
「そう、で・・・・もちろん死ぬ覚悟はできてるよね?」
フレイヤは事情を聞かされた後、今なお眠りについているアレイスターの前で殺気を隠すどころか、下手な一言で爆発する寸前手前であった。
「落ち着いて下さい。」
アテネは間に仲裁役として入る。
「何?アレイスター様がこんな姿になったのにやけに冷静だね?
へえ、やっぱその程度なんだ。」
「殺すぞ?」
仲裁役のアテネから殺意と魔力が溢れる。
「アテネ!」
アテネもアレイスターへの思いを侮辱されると沸点が低くなってしまう。しかし、それもアレイスターの有無によって変わる点であり、今まさに全員にその可能性があるとされる。
今度はミリスとレイレが静かに間に入る。
「・・・・・・取り乱しました。アレイスター様への怒りはもっともです。
ではその上で尋ねましょう、アレイスター様がそれでお喜びになるので?」
乱心しかけているフレイヤにミリスが臆さずに話しかける。
「・・・・・・・解っている。だからこそ行き場のない怒りを向けていたんだけどね・・・・・初めから解っていたさ。
けどね、愛している男がこんな姿になったのに、大人しく黙って居られるほど優しくないってこと・・・・」
フレイヤは全身から黒い炎を更に強く発火させる。まるで心の怒りと連動しているようであった。
「私はアレイスター様と共にある。彼の負担を掛けさせまいと日々それだけを考えてる。それだけで良い。
でも、彼の望みはそれよりももっと危険なものだからね。私たちの誰かを死に至らしめる可能性だってある。」
フレイヤは少しずつ静かに悟り出す。それと同時に、強まっていた炎は徐々に落ち着きを取り戻す。
「だからこそ、この逆の可能性は頭にあった。・・・・しかし、私は彼を否定しない。」
「結果が結果なのはそうだ。
むしろ、そうさせないために我々が居た訳だが・・・・・・近くでその使命を果たせずにこの体たらく。」
アテネは非常に弱々しく、ゆっくりとへなりとイスへ腰を着くのであった。
いつもの冷静な勝利の女神も、この件にはかなり応えたようであった。無気力になりつつある。
「・・・・・この命を使ってでも良い。」
「我々だけで足りるかは」
「ゼウス、ベローナよ。其方らが変な事をする方が余計に面倒じゃ。つか、余計まどろっこしい。ここはアポロンとアフロディーテに任せるのが得策じゃ。」
「オーディン様・・・」
「何萎れてんだ!いつもの悪意ある顔に戻らねえか!」
トールはロキの青ざめた表情に喝をいれるが、ロキ自身はそれでも表情は優れない。
部屋の隅で1人震えている身体を抑えていた。
「小生も何かできんか?」
「テュール、君までもか?少し落ち着きたまえ。」
獄長のハーデスまで珍しく集まっていた。
先の戦争での功労者たちが面々集まってはいたが、その顔は勝者というよりは敗者そのもの。
フレイヤは再びアレイスターの側により、その手を握る。彼女はただ祈る。
「アレイスター様・・・・・・・まだ終わってないよ?」
「やあ。」
黒い何かがいきなり目の前に。
アレみたいだ。サスペンス系に出てくる犯人的な。いや主犯格か!
「そんな訳あるか・・・・・まあ、例えるなら貴方の欲望?と言えばいいかな。貴方のそのドス黒い何かが、こういう状態として表している。かな?」
かなかなと。曖昧過ぎだろ。つか、聞いてて俺もよく分からん。
「だってそれは、貴方が半端に迷ったり、しっかりとした欲望が定まっていないから。
え?世界征服を目論んでる?いやいや、世界征服って欲望じゃないでしょ?世界征服はあくまで手段であって目的じゃない。
確かに日々、性、食、睡眠とかを味わってはいるけど、実質それは生活において必要なもの。
貴方自身からは欲望という深い欲望を感じない。周りが色々とやって満たされてはいるけど、貴方自身が広く浅くだから、結果として欲望が深まらない。
だから満たされないレベルのつまらなさ加減ってこと。」
急に哲学ですか・・・・んなもん、いきなりこの世界来て、死にかけたり、戦ったり、国作ったり、召喚したりとかで考える暇なんて殆ど無い。
というか、死後に説教は勘弁しろ。
「だから召喚すればいいのさ。もっともっと。」
いよいよ直接言うか。やっぱなんかあんなこれ。
「無い訳でも無いけど・・・・・うーん。まあ、世界一つを任せたい?かな?」
今度も飛躍し過ぎて分からん。
「今は言えない。それは君が未だ不完全状態だから。
それに肝心の欲望も満たされてないし。もっと好きな事してはっちゃけちゃえばいいのに。」
夜は謳歌してるがな。
「あのね・・・・まあ、言うより経験しろ。かな?
とにかく、今はマジで死にかけてるけど、特別に治してあげるよ。今回はサービスサービスだよ。」
黒い何かは俺の胸元の傷口を塞ぎ始める。
変な感覚である。夢なのに傷口へヌルヌルする何かが入り込む。
「これでいいかな?じゃあね。」
かなかなしか言ってないやん。
黒い夢から輝かしい光が差す。
ふと目を開けると、エデンの医務棟にあるV専用の個室である。つまり危篤患者扱いである。
あまり普段は使われない部屋であり、周りは誰もいない。
「気を遣った?違うか目覚めないから?かな?」
あ、移った。結局のところ何だったんだ?あれ。




