79 帝国殲滅戦 2
アレイスター
「ゼウス様を行かせても?」
「どう考えんてもあそこになんかあるでしょ?」
テュールの部隊の人かよく解らない部下さん数名とのんびりと戦争を見学中です。
後陣に陣を構えているためか、少し余裕な気分だ。将軍ってこんな感じだったのか?
何時も目に見えない戦いを繰り広げては、天下を取っているのか。
「勘に従うなら、とにかく敵に好き勝手やらせるな。だな。(多分)
情報が何故出回らないのかが解らないが、いや出回らないというより、そういった力か戦術か何かが働いている?」
なんとなくだ。本当になんとなくそう思った。長年の戦略ゲームの勘が囁いている。
今回この帝国攻めは結構万全でかつ強力なメンバーで編成してある。とか?
基礎スペックが上なのは明らかにこちら側だ。
しかし、何故かこうも上手くいかない。
「見えない何かな翻弄されているようだ。」
「亡霊?でしょうか?」
「縁起でもないな。どちらかと言うと、亡霊に見せられている何かだな。
やっぱお山の大将の質が違すぎる。今までの奴らとは比にならん。その上、優秀な参謀を抱えているからこそ厄介だ。」
ま、それを我等のアテネ様は計算されてこの戦力なんだろうけど。
ウチには優秀な頭脳派集団がいる。そんな彼女たちがそう決めたのなら、その方が正しい。
だが、あくまでもそれは彼女たちの予測や予想といった戦術的理論や論理である。
つまり俺のような何となくの直感持ち指揮官は居ない。フッ。
「火のない所に煙は立たない。」
「素晴らしいお言葉です。」
テュールの部下?たちが全員マジな拍手してくれる。きもてぃ。
うんん!それはさておき、こちらがどう見ても後手に回っているのは見るからな明らかなんだけど・・・・どうするかな。
俺単独で動くにしても、周りが許さない。言い方を変えると、変な事すると彼女たちの死のリスクが高くなる。向こうにLRが未だ隠れ潜んでいた場合は・・・
フレイヤさんしか呼べないからな。後は・・・・・・・おや?何で?
「ま、それはお楽しみで。動くぞ。」
「動かれるので!?」
目ん玉飛び出しそうなぐらい驚かれた。
「当たり前だ。神様ってのはな、人間の感情を理解しづらい存在なんだ。興味が無いってのは裏を返せば理解しないって事だ。
だからソヨさんならもっと頭良く行動するだろうね。でも、この混戦状態だと手段は限られる。つまり、出口は」
このゲームの勘が思わぬ災いを呼ぶ。
ベローナ
もう一つの区別地域に立つ外壁までやってきたのはいいが、妙だな。この霧もそうだが、ここまで外壁の守りが崩れる様子がない。
それに中に入った奴らも応答不能な上、特にアクションがない。既に屋台より時間はかなり経過している。筈だ。
時間感覚すらおかしくなっている。
「同じ存在がいるという事か。ならば、いいでしょう。『この手に勝利を』!」
ベローナの剣が輝く。その剣が外壁を照らす。
「さあ、戦士たちよ!今こそ立ち上がれ!」
「ベローナ様だっ!」
「勝利の女神の後へ続けぇ!!」
周りの兵たちの士気が一気に急上昇する。気持ちだけではなく、兵たちの力や威力まで増していた。
「私はここに居る。ただそれだけだ!」
再び周りから叫び声が共鳴する。彼女たちのボルテージが上がっていく。
今まで膠着状態であった、戦いにやや変化が現れた。
「進めぇ!!」
1人の女兵が外壁の一部を破壊した。すぐさま、上から敵の兵が狙い撃とうとするが、外壁上に彼女たちがいつの間にか進軍していた。
外壁上の敵兵の首を容赦なく刎ねていく。
「突撃せよ!前へ!前進あるのみ!」
ベローナも破壊された壁から中へと侵入する。
「そうか、この霧・・・・敵の出現を隠すのと同時に国の形状すら変えるか。厄介な。確実に時間だけは擦り減る。」
そんなベローナの前には数百人の帝国兵が立ちはだかっていた。皆目には死の決意を宿している。
「私は勝利の女神だ。アレイスター様にのみ、勝利をもたらす。」
再び一本の剣を敵兵へと向けた。
「あの悪魔の首を打ち取れ!!」
「ぅぉぉぉぉぉぉおああ!」
「斬り捨てる!!」
ベローナの一撃は数十人の命を奪うのに十分である。しかし、敵兵のその目に後悔はない。
「!?まさか!」
「遅え!」
横からソヨのSSR兵が現れた。ガインとアマハである。
「甘い!」
ベローナは剣と盾を扱う剣闘士である。
その盾捌きは見事であった。見事後ろから迫る攻撃を全て防いだのであった。
「おいおい!」
「仕掛けます!」
アマハの分身で盾の側面、隙間を縫って針を放つ。
だがベローナは無心でその針を全て紙一重で避けた。盾で防げないのなら避ければいいと踏んでいる。
「何と!!」
「バケモンが!」
ガインは大槍を再び突き刺そうとするが。
「舐めるなよ?」
ベローナは真っ向からその槍先に剣を通し、バターのように真っ二つに斬り裂いた。
ガインの腕諸共斬り捨てられる。
「嬢ちゃん!!」
「解ってます!!」
アマハの分身が再び放たれる。
「同じ事を!?」
霧がアマハと兵を切り替えた。いつ間にかさっきの兵と入れ替わる。
「なんだと!?」
「亡霊に魅せられたか?」
ベローナの肩に針が数本刺さる。
「当たった!?」
本来、ベローナレベルの反射神経であれば避けるのは容易であった。しかし、攻撃の意図やその矛先が読めなくされていた。
「不意は気付いた筈だ?」
「強力であればあるほど、その殺気は隠せない。
しかし、殺気が微弱であり、我が勇敢な軍と同レベルであればそれもまた気付きにくい。
不意打ちに不意打ちを重ねたのだ。更にはいつ襲うか解らない濃密な霧だ。
警戒に警戒を敷いては、流石に細いものは見えまい。」
アマハは再び霧へと姿を隠す。
「ほう・・・」
刺さった針をベローナは自身の筋力だけで弾き出した。
「アレイスター様からいただいたこの美しい肌に傷を?・・・・・・・生きては帰さん・・」
「そうかい。ま、それなら俺たちも本望だわ。」
ガインと残りの帝国兵が姿を現す。静かに怒るベローナは目前を睨み付ける。
「旦那、共に行くぜ。」
「馬鹿野郎、生きて逃げんだよ。けど、最低限は仕事しねえとな。」
「腕も槍もねえのにか?」
「ハハっ!この魂があんだろうが。」
ドンっと自分の胸に手を当てる。
「そうでしたね!」
「・・・・・囮か・・」
ベローナはその状況から推察した。
「あなた方が優れているのは調査済み。であるのなら、我々は我々の戦い方をするのみ。お嬢・・・・・元気で!」
決心したアマハは戦場を駆け抜ける。最後の一矢を報いるため。
「アレイスター様っ!・・・・申し訳ありません。この罰は後ほど受けます!」
ベローナはハンニバルの計略により、軍とベローナ単体を孤立させられた。
その上現在も兵との混合戦にて翻弄されている。こちらも同じく時間稼ぎが目的であった。
「行くぜ!テメェら!続けぇ!」
男たちの雄叫びが周囲に響き渡る。
1人の女王を守るために。
ソヨ
「バカ!ほんとクソ!」
どいつもこいつも!
ソヨはただ1人走る。ジヴァと合流すべく、止まらず走り出す。
ハンニバルの霧により、ソヨの存在や形を視覚できないようになっていた。そのため道中の敵に気を配らずに進める。
彼女は予め準備してあった地下通路へと入り込み、そのまま突き進む。
暗く、整備されていない道をひたすら振り返らずに突き進む。
「ここを抜ければ評議国まで真っ直ぐ。」
そんな地下通路が上から割れた。
「な、何よっ!!?」
天井が崩れ、空が映し出される。
「ま、眩しい・・・・・」
ゆっくりと目を開けると、そこは帝国よりやや離れた森林地帯であった。
ただ一心不乱に走り続けていたせいか、場所すら把握できていなかった。
「よう、元気?」
だが、その状況を先読みしていた者がいた。
「ほんと、貴方っていう野生が嫌い。」
「うるせ、俺だって野生見なんて溢れたくねえわ。でもよ、人生経験とか元のやり取りで解るんだ。天才ってのは必ず答えを決めてるってさ。
複数回答を持つのもあるが、結局は1つしか選べない。
だが、その1つを見抜くのが超が付くほどしんどい訳だ。」
「そう、訂正する。貴方バカね。」
「バカだよ、バカと天才は」
「「紙一重」」
ソヨの前には現れたのは、なんとアレイスターであった。僅か4人ほどのSSR護衛兵と共に現れた。
「でも貴方はそんなバカでもとびっきりのバカね。」
「ああそうだな。隠してる力があるとは言えど、敵を前に大将が手薄で姿を現すのはどうかと思う。
しかも、追い込まれている訳でもないのに。」
「そう、解ってるのね。」
「けど俺はバカだからさ、天才の答えってを1つ1つ迅速にしらみ潰すしか無かったんよ。で、選び抜かれたのはコレ。」
「へぇ、で、何でここって?」
「地下通路を作るのは頭にあった。
でも、わざわざ城内に作るかなって?城内に作ったら崩されれば終わる。
だけど、普通は手近に作る。ただアンタレベルだと、もっと別を考えていそうだ。とここまでは考えれた。」
樹海ってのはただの山勘で、地図を見た時に評議国との距離を実際に測った。(地図上)
その上この凄まじいまでの樹海度だ。正直言って抜けたら見つかるのも一か八かレベル。
ま、植物使いクロアのナイスプレイから場所は概ね把握できていた。実はクロアが、ウチで出会った際に特殊フェロモンを彼女に付けていたのだ。
しかも薄透明色で無味無臭ときた。そのフェロモンはある生物が1番に反応する。
そう・・・それはGです。
はい?って思うやん。口にするだけで悍ましいやん?俺もそう思う。
何でやねん!って思ったけど、コイツらって実はかなり賢い。人前に滅多に姿を現さない上、移動速度が段違いに早い。それに個々の連携力も高い。
道理で世界滅亡しても、生き残る生物と評されるだけあるよ。
んでだ、颯爽と駆けつけるMr.Gの大群が彼女付近彷徨っては、逃げるその後を高速で追いかけていた訳よ。
マザーと勘違いして。
んで、俺の特徴・・・これは呪われた職業病だが、奴等が実際に生息している場所を何となくキャッチできる。
なぜ?分からん。奴等と死闘を日々繰り広げていたせいか、その訳分からん力が身についてた。
ま、それを彼女に言ったら悪即斬されるから言わんとこ。




