78 帝国殲滅戦 1
「ぐへぇ!!!」
「ぢっぐしょ!!」
ヘルメスとアーレスはジヴァを相手に激しい死闘を繰り広げている。
建物内は既にボロボロのいつ崩落してもおかしくない状況である。
だがヘルメスとアーレスも大きな怪我はないものの、擦り傷や土汚れが目立つ。しかし劣勢である。
「チッ!あの手の主神クラスはゼウスとかにやらせろよ!」
「だから言ってんじゃん!キツイってさ!」
2人は戦いの最中お互いに歪み合う。
ジヴァはその隙を待つ事なく。
「消え失せよ」
ジヴァから新たなブラックホールが放たれる。
「やべ!」
「くぞが!」
アーレスは最大の神力を拳に込める。
「『ぶっ飛びクラッシュ』!!」
名前はアレだが、威力は申し分ない。迫り来る銀河を見事跳ね返す。打ち消すには至らない。
しかし
「甘い」
割れた銀河は分裂し形を流星群へと変える。飛び散っては降り注ぐ。
「ぐぉ!」
「ちょい!ちょい!手間増えてるって!」
ヘルメスが黒いマントを取り出す。
「こっち!」
アーレスを内側へと覆い。
「『放浪の幻影』」
黒いマントで覆われた2人に流星群が降り注ぐ。とんでもない威力に城内は既に剥き出しの半壊状態へと成り果てる。
「おぇ!!」
「ゴホッ!ゴホッ!」
2人は砂煙中無事無傷で現れる。
「ったく!」
「相性も最悪だよ。」
「うっせ!」
2人は何とかしてやり過ごすが、ジヴァへの決定打に欠けていた。
「余裕そうにクール顔で決めやがって。アレイスター様の方が何億倍もカッケェっての!」
「それは賛成だね。でも現実的に向こうが上だ。」
「力を解放してもか?」
「それでもって5分ってとこかな。」
「んだよ!」
「相手が悪過ぎる。この手はオーディンとかゼウス、ガイアの相手がいいとこだよ。ちょっとの影響しか及ばない私たちじゃあキツイかな?」
「解ってるが、改めて言われると尚ムカつくな。」
「ま、その在り方があるからね。そこはしょうがない。だからこそ、今はどう凌ぐかな・・・・・・」
ジヴァは重ねて攻撃を発動し出す。
今度は平べったいブラックホールを作り上げる。
「ほんと容赦ないね。」
「んな余裕こいてる場合かっての!」
「ま、どうしようもないね。
けど、足止めで十分かな。向こうには何やら焦るほど重要な作戦があるようだし。」
「あ?よく分かんねえぞ。」
アーレスは考えるより行動せよ。である。
「とにかく!時間を稼げばいいってこと!」
「それなら私が手を貸そうか?」
ここには居ない第三の声が鳴り響く。
ゆっくりと上からロキが舞い降りる。
「やあ?」
「お前かよ。」
「何だい?その言い分は?」
「あーー、もう!今は来るよ!」
ジヴァの容赦ないブラックホールが追い討ちをかける。
「そう。私ならコイツを『トリックアート』するよ。」
ブラックホールが消える。
「おっ!?」
「そういうこと?」
ヘルメスは理解した。
「何?」
ジヴァは初めての現象に驚きを隠せない。
「何って、簡単さ。
種は私の『トリックアート』で敵の攻撃をコピーしたのさ。それで相殺したってのが、正しいかな。」
ロキは手を銃の形にし
「『トリックバレット』。」
同じくブラックホールをお返しにジヴァへと打ち込む。
「「!!!」」
「・・・・・・」
ジヴァは冷静に、触れずにブラックホールを分解する。
「わあ・・・紛い物に限界あり。」
「やるな!お前!」
「でもそれって。」
「うん。」
ロキは清々しい笑顔で。
「これ1つの業分しかコピーできない。」
「はあ!!?」
「やっぱり・・・」
ヘルメスはそんな出鱈目な力が自由に制約なしに使えるとは思ってはいなかった。
「だから違う攻撃や同じ攻撃の連発は無理だね。」
「役に立たなっ!!何しに来たんだよ!」
「それ君が言うかい?」
今度はアーレスとロキが睨み合う。
「はあ・・・・依然変わらずか。」
「そうでもないかな。」
「勝てる見込みは少ないけど、時間稼ぎ程度ならできるよ。向こうさんがこちらに背を向けて逃げるなら解らないけど。」
ロキはしれっと挑発をする。
しかし、ジヴァは特に変化を見せない。
「余裕・・・・というより、油断をしない?いや、そもそも興味がない。」
「私たちにそっくりだね。」
「あっ?何で似てんだよ!」
「君は・・・・・」
2人はアーレスをただ慈愛の目で見詰める。
「??」
「それよりも。」
3人は改めて敵へと向き直る。
「打開策はない。今ここに居るメンバーで完全に倒せるのは、アレイスター様の元にいるゼウスのみだ。」
ロキによる冷静でかつ冷淡な分析に文句を言う者はいない。
「けど別にアタシらで倒せねえ。って訳でもねえんだろ?」
「まあ、そうなるね。
仮にも3人もの神が居るんだ。連携さえ取れれば・・・・・けど、その前に。」
「相手の底が見えないねえ。」
ヘルメスが勝てないと直感する理由の一つである。
「底なんてもんは誰にでも無いだろ。」
「底の意味が違う。
力の馬力と言えばいいのかな?元のスペックや歴史に違いがあり過ぎる。私たちにもそれなりにはあるけど、主神クラス程ではない。」
「主神系は化け物ばっかりだし。コソコソすんのが得意なだけに、こっちのドンパチは苦手だってのに。」
「アタシは好きだぜ!」
「そうじゃないでしょうに。」
「アレイスター様が既に後方に居られる。」
「「!!」」
2人は敵を前に後ろ向こうとするが。
その前にその場からいち早くに避けた。
すると、地面がボッコリ凹んだ。
彼女たちが居た場所が綺麗なクレーターと化した。
目に見えない重力攻撃を直感で避けたのであった。
「大丈夫かい?」
「お前解ってんなら教えろよな!」
ロキはただ1人、完全に届かない範囲へと空を飛んで移動していた。
「あ〜、肝が冷えるね。」
そしてまた空間が歪む。
今度はブラックホールにより、空間を吸収され抉られる。そして、立て続けに3人を追うように攻撃が各所で放たれる。
3人は避け続けるもなかなか攻撃態勢に入れない。
少しでも油断をし、攻撃を受ければ重症となる。
「アレイスター様が居んだよ!!」
しかし、啖呵を切ったアーレスがジヴァへと突っ込んだ。
「バカっ!!」
「解ってる!」
ロキがすぐさま魔法による援護を試みるも、放つ前に打ち消される。
「チッ!」
「舐めんなよ!!」
アーレスの身体に紅く荒々しいオーラが纏う。やがて、身体全てに紅き輝きを照らす。
「うらぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その速度は光速の領域へ。
「!」
ジヴァは初めて驚きの表情を露わにする。
「アタシの、俺の一撃はデカイぜ!!『フィリオスマーズ・カタストロフィ』!」
アーレスの手には2mほどある巨大な紅き槍が握られていた。
その槍に明確な憤怒が込められていた。
そして、ジヴァを守る銀河の粒子と衝突する。
「届けぇ!!」
音は鳴らない。無音である。
しかし、確かなのは槍が銀河を砕いたということ。
「・・・・・・・・な、なに。」
守っていた粒子が砕ける。
「るぉぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
そのまま突き刺す。輝きが未だ途絶えず。
槍がジヴァの腹部を貫通する。
「は、」
「あ?」
「離れんか!」
ジヴァが自分を中心にブラックホールを展開した。
「全くもう!」
いつの間にか、ヘルメスがアーレスの背後におり、すぐさま黒いマントで包み込んだ。
「任せて!」
ロキが『トリックスター』を使い、同じブラックホールで一瞬だけ相殺した。
再びジヴァとの間に距離ができた。
だが、今回は状況が異なる。
ジヴァの腹部へ簡単には治らない傷ができた。そして、そのダメージも相当なもの。
「やった・・・のか?」
「ま、まあ、な。」
その代償は大きかった。
アーレスの戦闘続行不可と片腕の損失であり、一撃入れるために1人リタイアする形となる。
「無茶して。」
「だぁ・・ーてろ・・・」
「けど、私たちであの化け物を仕留めるのは難しい。その上、時間稼ぎも厳しくなった。」
「だね。」
アーレスは徐々に意識が遠のいていく。
「お疲れ様、脳筋なのに頑張ってさ。」
ヘルメスはアーレスを横にする。
「んで?どうするよ、北欧の軍師様?」
「撤退が妥当かな。私たちが玉砕覚悟で同じ事をできるとは思えない。それに下手な犠牲はアレイスター様を余計に悲しませる。」
「そうだね。でも奴さん。かなりキレてるみたいだけど。」
ジヴァの身体に再び銀河のような粒子が発生する。
「ならん、ならんぞ!」
「だってさ。」
「お手上げだ。じゃあ、こっからは主役に譲るとしようかな。」
3人の前に空から雷が落ちる。
バチバチと当たり一面に電流が流れる。
「うむ、待たせたな。」
ゼウスが到着した。
「アレイスター様かな?」
「そうだ。アレイスター様はこの事を見事に見抜かれておられた。だが許せ。少し遅かったようだ。」
ゼウスはアーレスの姿を見ては目を瞑る。
「お前・・・ゼウス?顕現していたのか?」
「そうだな。姿は女だが、不思議と悪くない。
むしろ良い。だが今の状況は良くないな。」
「あーー・・・まずいかも。」
ロキは2人の戦いが始まりそうな気を察知したのか、そう呟く。
「考えてる事は解るよ。」
ロキ、ヘルメスはアーレス抱えて。
「「退散!!」」
宇宙と自然による次元を揺らす2回戦目が始まった。




