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Destruction=Install  作者: ennger
77/93

77 帝国殲滅戦

「ふむ。」


「テュール様?」


「陣形と空気が変わる。」


「まさか!」


 しかし周りが前線を見渡すに未だ動きは見えない。


「まあ、お前ら程度なら解らんだろうが、既に何か手を打って来たな。・・・・・面白い。

 神を唸らせる事ができれば、相手してやろう。」


 テュールは適当な瓦礫に腰を掛け、戦いの流れを分かりきった上で見守る。


「これは存外楽しめるやもしれん。」


 テュールの顔は笑っていた。

 久々に戦場の空気を感じ、自身も昂っていた。


































 ベローナ


「防衛戦は依然変わらず。しかし空気が変わった。」


「ベローナ。アタシらはいつ攻めんだ?」


「まだです。アーレスの力は強過ぎて、ここの獲物たちにも危害が入ります。」


「はあ!?そ、そりゃあ力が有り余るけどよ!アタシはそんなに筋肉凄くねえぞ!」


「そうじゃないでしょうに。」


 上から颯爽と登場したアナシンもベローナの元へとやってくる。


「アナシン?」


「ヘルメスが潜入できた。」


「・・・・・・そうですか。

 では、ヘルメスか向こうの指揮官さんか。どちらが先手を打てるか。」


 ベローナは市街地の建屋から再び周囲を観察しだす。


「しっかりとした国だな、仕切りまで入れてやがるとは。」


「ある種の区別と差別を併用したのでしょう。

 人は格差なくしては生きられません。全く、アレイスター様だけに忠誠を誓えばいいものを。」


 ベローナは忌々しげに帝国の民たちを蔑み睨み付ける。


「そうだね。ベローナが思うようにこの世界の人々は愚かだよ。」


 今度は外の窓からロキが顔をひょっこりと覗き込ませた。ロキは空を飛びつつ、器用に窓から話しける。


「アレイスター様が望む世界が1番だからね。」


「そんなのは言わずもがな。

 ただ現状はこうです。それでも尚、人々は抗い続けると。」


「それもそれでいいではありませんか。」


 今度は扉からアポロンがやってくる。


「お前ら集まり過ぎだろ。」


「貴女に言われたくありません。」


「アポロンテメェ!」


 そんな顔を近々に近づけたアーレスをアポロンは鬱陶しそうに手で退ける。


「私は今この状況で失敗しないかが凄く心配なのだけれど?アレイスター様が観に来るのよ?」


「解っています。だからこそ彼女たちに猶予を与えています。当然、次の行動ぐらい予測できてます。」


「あ、それ発動してたの。」


 ロキはすぐさま気付いた。

 ベローナが勝利を確信した意味を。


































「裏口から出ない?」


「それはどうしてだ?」


「簡単だ、裏口は塞がれているのが普通だ。そんな所に活路を見出すとか恐ろしいぞ。

 向こうの手段や情報網から推察するに、そんな事も読めない訳がない。」


 ハンニバルを中心に場内を歩きながら作戦概要が説明される。


「ソヨ様の身が1番である事を念頭に置くと、そんな危険な場所より敢えて危険である前線の方が手薄よ。

 むしろ、その中央さえ食い破れれば後は追う者無し。と言いたいが、どうやらそれも難しい。」


「はあ!?お前そこまで言って!」


「まだ終わってない!」


 ハンニバルはチラッと外の光景から敵がどの位置で自分たちを把握し、動かしているのかを想定する。


「そう。どうやら向こうもまだ本気ではないみたいね。そこが前線へのチャンスかしら?」


「正解だ。が、相手は腐ってもLRだ。

 しかも力は未知数ときた。中央突破もまた夢のまた夢だ。」


「それではどうしろと!?」


 ハンニバルとソヨ以外は慌てふためく。


「そこでだ、俺の力とシヴァの力を使う。それを上手く掛け合わせれば。」


「抜けれるのか!?」


「まあ、な。」


 ハンニバルが少し怪訝そうな顔をする。ソヨは見逃さない。


「あなた、死ぬ気ね。」


「そうなるな。」


 ハンニバルは特にリアクションもせず、淡々と返す。ソヨもまた目を瞑る。


「そう。じゃあお願い。」


「流石だ。それでこそ我らのマスターだ。貴女と今日この日ここまで戦えた事を誇りに思う。」


「ありがとう。」


 ソヨは振り返らずに再び歩き出す。

 涙は流さない。今まで自分がして来た悲惨な思い出もあり、そのために犠牲にしてきた者たちも数知れず。


 しかし、心は泣いていた。


「ほんとクソ!」


 我慢できない彼女はそう小声で呟く。


「シヴァ、居るんだろ?」


 シヴァと言われた大男が壁から擦り抜けて現れる。


「ああ。」


「俺は死ぬ。後は頼むぞ。」


「任せろ。」


 短く発せられた台詞ではあるが、そこには頼りになる力強さが込められていた。

























 再びベローナたち


「どうやら来ますね。」


「だな。」


「あれは・・・・・多分死にますよ。」


「アポロンの言う通り、このままならこちらの兵が何百人か死ぬね。」


 ロキたち含め、淡々と語る。そこに悲しみなど存在しない。


「しかし、それはアレイスター様が悲しまれる。そうなれば私は死ななくてはなりません。」


 ベローナがついに重い腰を上げた。


「ま、それは同感だ。」


「全くもって。」


「ふぅ。流石に私もそう思うよ。」


 ロキ、アポロン、アーレスも目付きが変わる。


「では私は。」


 アナシンは霧のように消えた。


 その建屋には人の姿が無くなっていた。
























「迷うな〜〜、1人で潜入はやばいって。」


 ヘルメスは1人彷徨っている。

 何となくで侵入したのはいいが、地図などは皆無であった。もちろん今回は奇襲作戦という事もあり、事前情報はあったものの細かい地図情報は役に立たないに等しい。


「旅人だから足取りや構造は大体で理解できるけど、これ追い付くかな?」


「お前は一体?」


 肝が冷えるような声でヘルメスを呼び掛ける。


 彼女の背後にシヴァがいつの間にか現れていた。


「へえ?コイツは・・・・マズイかな?」


「ならば死にゆけ。」


 シヴァの手から広大な宇宙が見える。


「わあ・・・最悪だ。」


 ヘルメスは腹を括った。


「アレイスター様・・・・・・」


「オラッ!!」


 城の壁が横からぶち抜かれた。


「うぉ!!なになに!」


 スタっと、ヘルメスの横にアーレスが降り立つ。


「よお。ヤバそうじゃねえか。」


「ほんと、タイミングバッチリだよ。それに潜入した意味ね。」


「けっ、んなもん知らねえよ。なんか急に動き変わったからよ。」


「はあ?・・・やっぱ?だって本来ない筈の気配が感じたからさ。はあ、あ。でも助かったかな。」


「ま、だろうな。」


 アーレスとヘルメスはシヴァを睨む。彼女たちでも解る。

 今までの敵とは比べ物にならない程、強いと。


「2人がかりで取りかかっぞ。」


「賛成だよ。」


「終わったか?では、さらば」


 神同士の大決戦が始まる。




























 アレイスター


「はっ!やっ!」


「しっかりとお捕まり下さい!」


 しっかりも何も、お姫様抱っこなの!ああっ!ついセレナーデ口調に。


 ゼウスさんに連れられて帝国まで一直線で戦場へと馳せ参じる。

 俺が高速で粉微塵にならないように調整しているとはいえ、その速さは凄まじい。


「!!!」


 にしてもこのビリビリと突風よ。

 ジェットコースターを命綱無しで乗っているような気分です。

 曲がったり下がったりしないだけでマシか。


「そろそろです。」


 そんなゼウスさんは問題なさそうに報告を入れてくる。


 テュールが立っている横に雷鳴が落ちる。

 そんなテュールは一切微動だにせず、じっと立って前線を見守っている。


「着きました。」


「よっと。」


 抱えられただけなのに足がガクガクなんですけど?この超人姉様方とは違って、召喚以外はポンコツなワタス。


「大丈夫ですか?良ければ私へと寄りかかっても」


「テュールよ、我が連れて来たのだ。」


 そんなテュールの手をガッシリと掴み、譲ろうとはしないゼウス。


 そんな事より椅子くれない?


 そんなテュールの部下が見兼ねたのか、サッと椅子を一席用意してくれた。


 これだよ。これ。これが気が利くってこと。


「ふう・・んで?」


 2人は歪み合い掛けていたが、すぐさま切り替えたのか、こちらに振り返り報告を開始する。


「はっ!只今、目下交戦中でございます。

 しかし私以外のLRが国内へと侵入し、戦闘を推し進めております。」


「そう上手くいくかな?」


 何となく本能的と言うか。


「もしや何かお気づきに!」


 テュールさん。顔が近すぎる。お胸も当たってるからあかん方向に築かれてしまう。


「うんん!今ここで殺すぞ?」


 ゼウスさんの咳払いというか戦争宣言・・・・・のお陰で少々クールダウン。


「まあ、何と言うかね。

 あの・・・・ソヨさん?が、今まで帝国の王として管理してきた訳でしょ?今の今まで生き抜き、貢献してきた人が。

 ましてや、あの性格の人がこのまま押される訳もないだろうけど。」


「なるほど。」


 何が?


「我も思うが、どうやら感性としての問題かもしれんぞ。」


「そうだな。私たちが持ち得ない思考が異界人の彼女にはあると。そして、私のアレイスター様はそれを見抜かれていらっしゃると。

 何という事だ。神を名乗っているのが恥ずかしくなっております。流石はアレイスター様です。」


 いや何のこと?


 ただ単に感想を述べただけなんだけど。あれか?語らずとも生むが易しってか?俺その手のタイプは理解できんよ。


「ご安心下さい。この修正を持って確実に仕留めましょう。」


 ゼウスにすら諭された。

 もうなるようになれ。


「そのためには・・・・・仕方ない。」


 テュールが無言のまま帝国内へと侵攻して行った。


「うーーーん、よく解らない。」


「・・・・・・・」


 テュールさんの部下たちもうんうんと頷いてくれる。

 割と仲間はここに多くいた。

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