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Destruction=Install  作者: ennger
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75 お姐さん

「意外と街にはなってんだな。」


「『桜花楼獄』のなり損ない囚人を総動員し、今の街を作り上げさせました。

 彼等には報酬として、自分の家や特技をここで生かすことを許可致しました。

 お陰で少しは気が晴れたと思われます。」


 この街『エデン』の主としてレイレ、オリビエ、ヴィーザルと共に外へと社会見学中である。


 内心はかなり驚いている。


 つい最近までは文化の「ぶ」の文字もない廃墟とガラクタではあったが、今となってはちゃんと街として機能し始めているではないか。

 街の人には首輪がしてあるけど・・・・・


「ちなみにあの首輪は?」


 俺は何となく事情を知ってそうなレイレへと敢えて問いただす。


「あれはアレイスター様への忠義の証です。」


「略さずに言うと?」


「首の内側から爆発します。」


 爆破は解ったけど内側!?首輪はセンサーって事?って、首に埋め込まれとんのかい!


 これ恐怖政治もいいとこだな。そりゃ、俺は恨まれる訳ですよ。

 つっても、捕まえた奴等を扱うってならこれぐらいは普通なのか?


「ご安心を。アレイスター様への信仰を失った際、爆破する仕組みとなっております。」


「何が安心なの?」


 その信仰心ってどうやって保たさせてるの?


「意図的に爆発する心配はありません。

 ここの皆はアレイスター様へ感謝を忘れずに暮らしております。」


「ちなみに略さずに言うと?」


「楼獄でみっちりと指導しているため、アレイスター様へ絶対の忠義をその心と身体へ誓わせ、術式として刻み込んでおります。」


 もう洗脳国家やん。

 世界の敵らしく進化してんね。ここまで来たら悪役は免れないな。ショッカーたちもびっくりだよ。


「アレイスター様を見るたびに皆が涙を流し、感謝と敬愛を持って祈られます。」


 特にオリビエさんは元公国の人では?ヴィーザルに関しても寡黙だが、うんうんと激しく頷く始末だ。


 ま、俺にとって都合の良い国は最高だけど。ここまでくると何にでもなれ状態である。


「ここでは我々と同じ部類に成れない者たちは『下民』、変革を遂げた者たちは『進族』と呼んでいます。」


「うん?『進族』?」


 なんか語呂が違う事だけは伝わる。

 そして沈黙を貫いていたヴィーザルがトントンと俺の肩を叩く。


「『進族』は我々というよりは堕転に成功した者たちをそう呼称しました。

 アレイスター様に召喚していただいた者たちは『創族』、初めに引かれたレイレたち一向は『創族』に当たります。」


 何故ここにきて部類分け?


「その疑問は最もでございます。

 私、オリビエは愚かにも罪を犯してしまいました。ですが、今は心を新たにこうして仕えております。」


「なるほど、解りやすいな。」


 要するに立場を分かりやすくしたんだな。

 忠実に従って上位に位置する者、また鞍替えして従う者、従うが何も持たぬ者たち。


 うん。やっぱ悪役が作る国家だね。差別と区別は紙一重とは言うが、これは確実に差別してるね。まあ、綺麗事では食えないか・・・

 ただ差別の度合いを図り間違えていないようだ。


 確かに力で支配して恐怖で従わせてはいるが、辺りを見渡しても特段怯えてはいない。

 むしろ、最強の奴等に護衛されていると思えば然程気にする事でもない。


 ウチの奴等は侮蔑と軽蔑的な冷たい視線を送るだろうが、別に危険やリスクを避けて活動はしている。

 つまり露骨なカツアゲに貴族じみた傲慢な態度は取らないってこと。


 争いの火種ができない事は良き。

 リスク管理がしっかりと行えている。つか、できた時の対応を想像したくない。


「興味無いとも言えるのか。」


「アレイスター様以外に興味などありませんから。」


 綺麗な騎士姉さんにそう言われると照れる。尚、マジで他には興味がないようですが。


「アレイスター様が喜ばれるから動く。そして、結果を残す。それ以外に喜びは生まれませんので。」


 レイレさんは意外と起伏が激しいとか?冷静そうではあるが、かなり興奮している様子です。


「な、何かよからぬ話が・・・・」


「気にするな。」


 レイレに向けた視線でなんとなく察したようだ。


「元気なのは良い事だ。それを上手くコントロールしているのなら上出来だ。嬉しい限りだよ。」


 金のやり取りや輸入輸出はないけど。ましてや、同盟は愚か、友好国などありはしない。

 孤立無援なのは否めませんが。


「ご安心を。我々も着々と軍備と物資を整えております。

 『桜花楼獄』にて『堕転』を行い、次々と兵を作り上げております。LRは時間がかかりますが、SSR兵は直ぐに手配できております。

 そのLRにはSSR兵のみを付けております。規模的には少なそうに見えますが、実力では万の兵に勝ります。」


 レイレの説明から解るが、SSRだってこの世界では凄い価値のある存在だ。なのにLRまで居て、その上SSRが一般兵ときた。


「負ける気はしないが、油断しないようにな。」


「アレイスター様の言い付け通りに。」


 ヴィーザルを筆頭にしっかりと3人は認識しているようだ。


「無敵ではないからね。それに攻められている現状は変わらない。

 今回、帝国に攻め入る事は決まったが、下手に時間をかけてはこちらの損耗も激しくなる。」


 短期戦はいつもの事だが、早い段階で一国だけでも削ぎ落とさねばならないのも事実である。

 いつまでもこの環境が続くとは限らない。


「ガイア、ハーデスは楼獄の管理で抜けられない。ラプラス、ヘパイストスは戦闘員ですらない。

 LRとは言えど、単騎では国を滅ぼすのはかなり条件が必要とみた。なら、ちゃんとした軍備で攻め込まないと。逆を言えば、守りも同じ。」


 頭の良いお姉さんたちなら言わなくても気付いてはいるだろうけど。

 ただ言葉にしてみると、割とギリギリでは?





























 エデン城のとある一室


「マリカ、居る?」


 ドア越しに声を掛ける。


「!!っと!アレイスター様!ちょい待ち!」


 ガタガタと何か扉の奥で物音が聞こえる。

 ちゃぶ台でもひっくり返したのか?


「お、おうよ。お待たせ。」


 扉から頭だけ出てきた。


「マリカ、入っても?」


「お、おお・・イイぜ。」


 うーむ、このリアクション。


 俺は扉を開けて入ると、目の前に映ったのは。


「やっぱりか。」


 酒瓶が転がっている。しかも大量に。んで持って整理整頓してねえ。


「い、いやな?まだ役職が決まってなくてさ。それまで暇で暇でさ。」


「大胆だね。」


 姉貴肌なのは解るが、ここまで酒癖悪いのね。


「あ、アハハハ・・・・嫌いか?」


「いや全然気にしない。俺も酒は好きだぞ。」


「おお!良かったよかった!」


 いや、そこまで酒豪ではないよ?

 それに今気づきました。薄着の上着と短パンしか着てないよ。いくら女性国家だからってそれはあかんて。

 しかも安心してベットに座った時はガニ股やねん。


 目のやりように困る。


「あ?あ、あ〜〜、こういう感じ、好きか?」


「今それ聞くの?」


「いや、なんかやり慣れてそうってか、なんかこう。卓越した雰囲気を感じてさ。」


 誰がプレイボーイや!純粋な少年だからね?うん?心はって事よ!


「そんな訳がないだろうに。俺自身も目のやり場に・・・・というか、いつもこんな感じなの?」


「いつもって言ってもな、つい最近来たばっかだし。

 アタシとしては何でも来いって感じだけど。ま、まあ、アレイスター様の護衛をやれってなら大賛成だが?」


「いや聞かれても困るよ。」


「そこは鶴の一声でさ。」


 何でそんな事知ってんの?いやでも言わないけどね。後で恨まれそうだし。


「マリカは一体何を」


「あーー・・・・それはだな。まあ、うん。

 なんて言うかな。アタシは混ざりもんらしくてな。って、それは知ってるか。

 その混ざってる奴等なんだけどよ・・・・」


「奴等は?」


「ナイショだ。」


 めんどくせーーー!


「あ、おい!なに面倒臭そうにしてんだ!」


 顔に出てたらしい。


「いやだってさ。」


「まあ、アタシは火力バカだからよ。まず言えることは、火力に特化した奴ってことだな。」


 ヒントのようでヒントでないようだ。少なからずは絞れるかな?なんでクイズ形式化は知らんけど。


「ただよ、さっきのナイショってのは、もう一つが何なのかが分からねえんだ。」


「自分でも?」


「そうなんだよ。後なんか変なんだよな。」


 解らないとはこれまた面妖な。しかし、俺自身も何を願ってマリカを召喚したのかは定かではない。

 本人の前で何となく呼び出したって言ったらよくない気がする。


「暫くは火力だけ頼みになりそうだな。」


「うーん、そう・・だな。なんか解ったらいち早くには知らせるからよ。」


 マリカが少し暗い表情をする。


「大丈夫だって。」


 俺は何故かマリカにヨシヨシする。慰めようにも、俺にも責任の一端がある。不明確な情報で創ってしまった。

 だから慰めてる。だなんて事は思わない。


「ありがとよ。」


「そりゃどうも。」


「何言ってんだか。」


 2人で少し笑う。照れ臭いな。


「ヨシっ!んじゃ!寝るぞ!」


「そっか、おやすみな。」


「あ?何言ってんだ?」


 はい?


「今から一緒に寝んだよ。」


「何その新手の暴力。」


「うっせ!とにかく思ったら即行動だ!」


 それは俺の決まり文句なんだけど。つか俺寝たいなんて一言も


「こい!」


「あ。」


 お姐様の馬鹿力には一切逆らえず、俺はベットへと強制連行された。


 嬉しい反面、まだ昼過ぎなんだけど。

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[良い点] 一緒に寝る展開!果たしてどうなるのか……
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