74 次の戦
「はあ。」
とりあえず色々と解決し終えた。はず!
「お疲れ様でございます。」
「ありがとう。」
ミリスがさりげなく労いの言葉と美味しそうな温かいお茶を酌んでくれた。
一口口に入れると、この優しい味が心に沁み渡る。
今日は色々といきなり押し掛けがやたら多い。やはりこの役職だからか?
ただふんぞり変えるだけの王様も大変だ。
「俺が弱いのもあるのか。」
「何を仰いますやら。アレイスター様はここに居て初めて我々のお力となります。
アレイスター様の存在に勝てるものはおりません。」
カイネさんも珍しくヨイショしてくる。
弱さの意味が違うけどね。まあ、要するに置物か。
「いやね、もっと異世界をパッと探検しては、敵を捩じ伏せて新しい景色を。と期待してはいたが何か別方向に進んでいるような。」
「僕が思うに世界はそんな単純な物でもないかと。
実際、アレイスター様の言うようにそういった人物は多かれ少なかれ存在しております。
しかし、この世界でそれをやり通すにはかなり難しいかと。」
ミリスの言う通りだ。
この世界は力=国に準じた何か、その何かを作らされている。そんな気がする。
意図している訳でもなく。ただ単にそうなるように誘導されている。
俺の場合も例外ではない。
まあ、たまたま状況的にこっちの方が謳歌できるから。という理由で勢いで乗ってみた。
つまりだ、チート=最強ではない。って事である。どうもチートじみてはいるが、どこかこう欠点ってのが必ずある気がする。
俺の力なんて持ってのほかである。マジで死ぬって思う時の方が何故か多い。こうやって踏ん反り返っていない限りは。
「ただ国を作らなければいけない意志か。なんとも不思議な感じだ。本来強い力を手にした人は自由を求める。
まあ、こんな王様もやってみたい。なんて願望もちらほやだけど。」
「ですがこの世界は異質と?」
アテネが再び俺の執務室へと入室する。
えーと、地獄耳?どっから聞いてたのよ。後凸すんの心臓的にキツイんだけど・・
「ま・・・・そうだわな。
俺はこうするしか最善の策が無かったが、他はもっとあんだろ?わざわざ国立ち上げる義理あるか?もしくは雇われからか?」
「それなりに良いポストに収まった。と言ったら経緯もありますが。
しかし話を聞くと、国を作る。この行動理念が多いのは事実ですね。現に異界人による国家形成は多く見受けられます。」
アテネも感じたように俺はそれが前から引っかかっている。
冒険者にでもなってれば、もしかしたらすれ違いで済んだかもしれない。けど国家としてあるなら戦争は付きもの。当然どちらかが搾取され蹂躙される。
これは他人事ではない。俺もそうだ。
俺ん所は少なくとも女子国家だ。色々含めて理想郷であり、世界の、まあなんだ?男の敵です。女性にとっても。かな?
女子が優先され動く社会構造はある意味良い傾向な感じでもある。
単に俺がポンコツなだけだが。けどそれを欲しがって狙う輩も数々いる訳だ。
だからこそ守っていかねば。
それとは別に男1人はかなり息苦しい。確かに夢のようで素晴らしい空間ではある。
しかし、割と理想の全てが最高とはいかない。
会話とか困る。
肉食系お姉さん大好きだし、身長や胸の大きな女性は特に大好きだ。
褐色や色違いの肌は更に本能的に大好きだ!ああ好きさ!大好きさ!大事だからね!
さしもの俺でも国一個がそうなり、最終的に世界がそうなると・・・・なんて想像すると。
フィーバータイムしまくりだな。だがしかし、やはりどうしたもんかたまには同僚との会話みたいのが欲しい訳よ。
「意外に肩身も狭くなるな。」
「??」
「アレイスター様?」
3人の天才が首を傾げる。かしげても揃って美人だよ、本当に。
顔の近いアテネの頬を優しくさする。早くもやや興奮した様子になる。
「んで、アテネ。」
「はい・・今回改めて訪れたのは、次に攻める国についてですが。」
「やっぱそうなるか、大きくなったからかなぁ。」
「そうなります。今暫くのご辛抱かと。」
「アレイスター様、僕たちが貴方様の盾となり剣となる。
だから、いつまでも側に居てほしい。」
いきなり告白カミングアウトなんですが?な、なんだろうか、なんかフラグ臭い。
まあ、ウチにはフラグクラッシャーが沢山居ますけど。
あれ?俺のフラグは折れなくね?
「だ、大丈夫だ。どこにも行かないよ。行けるようになる時は世界が全部綺麗になってから。だな。」
何言ってんだ俺?
「左様です。」
「我々にお任せ下さい。」
「そのためにも次は帝国を滅ぼすことにいたしました。一度デモンストレーションで近くの国を1つ潰しておきましたので。」
あ・・・・・あ〜〜そんな事あったな。北欧の暴力によって滅んだ国ね。一応、ウチの子たちに弄られて残り生きてんだっけ?
誰が誰だか分からんてぃー。
「ま、まあ、デモンストレーション・・ね。
あの帝国はそんなヤワではない気がするけど。」
「はい、恐らくこのまま行けば、評議国の介入はあるかと。」
「間違いなくウチ個人戦力は高い。
が、あくまで今まではそんなデカい所をこちらから襲わなかった事と、守りに徹していたからだね。」
「周りが徒党を組んでこちらへ攻めようとも、わざわざ全ての軍をこちらへ差し向けるような隙が生まれる行為を国は容認しないかと。
それプラスで我々の力が予想を遥かに上回る勢いに警戒を重ねているのもあります。」
色んな要因がアレコレ思い付くね。まあ、どれも良い事に繋がるか。
「だからこそ、ここらで大国を1つ2つと潰しておく必要があります。」
後の障害と強さを示して攻勢を削ぐって事ね。
「うん?ちょい待ち。帝国が大きいのは認める。
あれは?共和国や公国、王国は?」
確か王国は似たようなのが幾つかあったけど、それでも大きい方では?
「大きい国なのは間違いありません。
ですが、それでも強力な国家ではなく、国力のない国家であったため、然程脅威にすらなりません。
どちらかと言うと、攻め方さえ解れば敵ですらありません。」
ハリボテってことか。
「にしても、よく生きてたな。」
「運ではなく、こちらの力に対抗する術が無いほど国力が弱っていたからかと。また、基本的に頭が取られれば、残った者たちも死を選ぶでしょう。
そんな利益もない戦いを好んでするほど、酔狂な者もなかなか居ないかと。」
ま、そうか。
俺たちが例外なだけであって、普通は強くて忠誠心のある奴等で固めて迎え撃てればと考えるも、そんな簡単には集まらない。
そう考えれば無駄に浪費するより、来るべき時に備えて蓄えた方がいい。か。
あくまでも目障りな奴等やどうしようもない奴等を滅ぼす時は抜いてだ。
あれ?今目障りな奴等やん。俺ら。
「ギリギリを今まで生きてきたが、今度はこちらもそれなりに準備できてる訳だ。
ちょっとは驚いてもらわないとね。」
「はい。そのためここいらで攻めるのが吉かと。
そうすれば向こうも大国相手に攻めれる戦力を有している。より一層警戒をして下さるでしょう。」
「肉を切らせて骨を断つ。か。」
「そこまで追い込まれてはおりませんが。」
「ちょっといいかい?」
ミリスから意見があるようだ。
「どうしましたか?」
「ただでさえ他国からの攻撃が止まない状況下で帝国へ動かすのは当然LRが必須だ。
かと言って、前回ジャンヌのように特定の条件が揃った上、単騎で滅ぼせるとも思えない。
その場合、考えられる手法としてはLRを倍の人数で送る結果しか見えないのだけど。」
ふむ。よく分からん。
もうまた北欧暴力装置に任せたらいいんじゃね?としか思い付かなかったから。
「そうですね。基本的にこちらの陣営から複数人、しかも大勢のLRが抜けてしまえば、この国も危ぶまれます。
しかし、今回ラプラスの下で更にSSRから進化した者が数名おります。」
「報告にありました、我々ですね?」
カイネさん?あれれ?いつの間にや。よく見ると美しい褐色が更に美しく!?
「あ、アレイスター様・・・こ、困ります。もう少し夜遅くでも?」
「あ、すまない。」
「んん!」
アテネから謎の怒りを感じ取る。
「アレイスター様、そんな訳で彼女たちのLR昇格に伴い、今回の帝国滅亡作戦を実行させていただきたいです。
実際のところ数十人程抜けてもそんなに問題はないかと。」
「アテネが言うなら大丈夫か。」
「そこまで信頼して下さるとは、ありがとうございます。この一言だけでも私は幸せです。」
本当に嬉しそうにリアクションするから、逆にこっちの背中が痒くなる。
「アテネたちに全ての采配を任せるよ。必要なら俺も戦場に行こうか。」
「本来であれば危険ではありますが、最高のショーを生でお見せしたいため、ご同行いただけると幸いです。」
アテネがすんなりと受け入れた。
つまり、それだけ勝てる見込みがある。と言う事だ。
それにしてもショーね。
戦争とは考えないのか?神様たちからすれば児戯に等しいのかな。
ほんと、神というより悪魔みたいなもんだ。
「やあ、方針は決まったかい。」
そんな愛の魔神が現れた。模様です。今度は背後からいきなり。
「フレイヤ、今日もお疲れ様。」
「ありがとう。アレイスター様にそう言ってもらえるならまだまだ行けそうだ。」
うーんデジャブ。
「フレイヤはテレポートを使えるし、ゼウスは神速移動ができるからね。
この2人が国防をしているからこそ、安定的に防衛できていると言っても過言ではない。」
「オーディン、ロキ、トールも空を飛んで行き来できるからかな?遠距離特化も入った事だし、結構楽に防衛できつつあるよ。」
あー、最近入った方ね。確か、お名前は・・・・・・・・マリカお姐様だったかな?
「何でマリカなんだろうな。」
「さあ?混合種の考えはイマイチ読めないからね。
でも、アレイスター様のためにヤケになって頑張ってるよ。」
そりゃ、あんな派手な銃を2つも使ってぶっ放してればそうなるよ。物理的に。
「早くアレイスター様と1つになりたいんだって。」
フレイヤさんは近付いて俺の胸辺りをなぞる。
それは貴女の感想ですよね?
「勿論、私は毎日望むけど。」
「度が過ぎるぞ?」
アテネがまたしても剣を引き抜きては、フレイヤの首元に添えていた。
俺の寿命が縮むので頼むから止めてくれ。
「え?いいの?指揮官が居なくなるかもよ。」
「ほう?私は別段指揮するのは特技ではなくてな。どちらかと言うと・・」
その気合いを是非とも前線で使ってくれ。




