72 対立する国々
おはようございます。
昨日のゴタゴタの一件から一夜空けまして、今日も張り切って業務を・・・・・
そんな彼の周りには常に優秀な秘書官と書類管理のために事務が数名いる。ハッキリ言って、ただそこに座っているだけの幸運な置物状態である。
第1種戦闘配備・・・・・・常にそうでした。
そう、今に始まった訳ではないが・・・まあそれに関係してか、他国の進軍は止まる所を知らない。俺たちが疲弊するまで攻め続けるのであろうな。
人数や物資と言ったあらゆる面が低い我々には有効手段というのか、強国相手に数少ない取れる手段なのかな?
「自給自足が確立されている以上はなんとも。
けど、精神は絶えず疲弊するからな。こちらも責めて交代で敵軍を迎え撃たないと。」
「確かに1人増えたといえど油断はできないかと。
思い切って外へ進軍すればこちらが手薄に。ですので、アレイスター様への危険が1%でも残っているため、下手に動けない状態ではあります。」
1%の油断はするなとは言うが、慎重すぎでは?
「ヴィーザルの言う通りだね。そんな俺が弱点なのはアレだけど・・・
下手に戦力を分断させるのは愚の骨頂だね。けど、と言っても立て籠っても変わらず。」
「前回はアレイスター様の起点があってこそ、アクアリウムを滅ぼせました。」
起点というか、ただの事故なような。
あ、そうそう。アクアリウムは滅びました。随分とあっさりなと思うけど、実際そうである。
なるべく穏便にというか、下手に世間的に騒がせずに収めるには全滅させる以外、方法が無かった。
残酷とはいえど、やるかやられるかだったしな。お陰で情報の拡散を防いで、俺の独り歩きは広まらずに済んだと・・・思いたい。
どこかの冒険者国で身バレしたような気がするが・・まあ、結果オーライだ。
「地味にコツコツと滅ぼしてはいるが、相変わらず派手には動き回れずか。」
「流石に全世界が相手です。少しでも隙を見せれば面倒な事になるかと。
しかし、必ずやアレイスター様にこの世界を献上して見せましょう。」
ヴィーザルは俺と話す時はやけに饒舌である。しれっと世界相手でも面倒なだけで、無理ではないという事を明言している。
まあ、本人のアレなんだろうけど。
「ありがとう。自分自信未だに驚いてばかりだけど、ここまでやってしまった以上はそこまでちゃんと推し進めないとね。」
ケジメのようでもあり、前世のような後悔をしたくない。そんな動機で世界の敵となった訳だ。
ならこの程度の苦労は安い買い物だ。
「アレイスター様なの。」
ノック無しに扉を開けて入ってきたのはセレナーデ、ダレネである。
ダレネに関しては寝ながら器用に歩いとるし。正に鼻提灯歩き。
「やあ。」
「おはようなの!久しぶりな気がするの。」
「おはよう・・・・ございます・・・zzz」
「君はまだおやすみだね。」
鼻提灯作りながらコクコクする人も初めて見たわ。
「あのね、とりあえずアクアリウムの捕虜とそのマスターは収監し終えたの。
あのLRは今のところ色々とされてるの。」
「オーケー、もう語らないでいいよ。」
朝からナイーブになるがな。いや逆に興奮しちゃうか?
「1人、アレイスター様から丁重に扱うように言われてた捕虜がいたの。」
「ああ、彼女はできれば解放してあげたい。特に悪気を起こさなかった人だ。
たまたま戦いに巻き込まれて、死に掛けていただけだし。」
それにあそこまで親切にしてくれた人だ。俺を追いかけた時もなんか違った理由だったし。
「ノン!堕とした方が早いの。」
「いや、それだと色々モラル上の問題あるよ。」
普通に善意には善意で返したい。優しさに泥を塗るような真似は・・・・もう遅いか。責めて罪滅ぼしだ。
「解ったなの。ダレネに預ければ安全なの。」
寝てるだけだからね。何も害はないか。うん?寝てるけどグッってしてるぞ?
「それじゃあこれから楽しみに『桜花楼獄』に行ってくるの!」
「ああ・・・くれぐれも気をつけてね。」
「はいなの!」
セレナーデはビシッと敬礼し、ダレネを連れて走って出て行った。
「嵐のような子だ。」
「全くです。」
「失礼します。」
今度は一応ノックがあったが、ジャンヌが扉から顔を覗かせていた。ひょっこりはんかよ。
「どうしたの?」
「おやすみ所申し訳ありません。貴方様の豚奴隷が参りました。」
リアクションに困るよ?
「この豚めが今度は南側にある帝国へと進軍するため、その前の挨拶に参りました。」
「あ、ああ、進軍ね。ん?今すんの?それ?」
「本来であれば、ですが。ここの防備体制に軍の数、そしてLRの数も増えました。
ここいらで大きく攻勢に転じても問題ないと、指揮官様が判断されました。」
アテネが大丈夫って言ったんなら大丈夫か。つか、アクアリウムの件ってまさかそのレクリエーションだったんじゃないの?
どこから女神様の計画なのか読めない。
「しかしこちらが数人抜けたと聞いたら」
「ご安心下さい。」
ヴィーザルが今度は口を開く。
「只今他国間でもどうやら別々に同盟を組み始めているそうで。」
他国間で?あの評議国を中心に組んでんじゃないの?仲間割れ?派閥争い?
つか最初厳しいって言ってたような・・・やっぱ俺が現状無知だから刺激しないように言ってたとか?
「ヴィーザルの言う通りです。
どうも他国は他国で何か別の思惑があるようです。
しかし、それはこちらにとっても好機です。」
なるほどな。いつ背後から別の敵が襲ってくるのか分からない以上、こちらに全戦力を傾ける事ができないと。
けど、向こうはそれを理解している筈だが?
「例え我々が背後の国を攻め落として滅ぼそうとも残るのは瓦礫の山のみ。つまり、そこを支配するほどの人員はおりません。
だからこそ我々も攻撃を仕掛ける側に攻め入るのが困難である。というのが今までの状態でした。
ですが、今度は目前の相手に必死になっている他国に対して、我々がそこを滅ぼせばどうなるのか?攻め入っていた国からすれば手間が省ける。ということになります。
恐らく、後ろ盾に評議国が控えております。」
こちらは乗っ取れない以上、滅ぼすしかない。つまり敵さんは別の敵さん対応に俺らを利用したいと。
脅威が1つ減って、より的を絞れればやりやすい訳か。
「ただ俺らに取ってはそれが1番の狙い。」
「お見事ですっ!流石ぐすっ!」
ジャンヌさん。泣かないでもらっても?馬鹿にされてる感半端ないよ。
「現在我々がどうやって軍備を増強しているのかは不明であります。
更には謎のLRの存在、そしてそれを上回る何者か。そういった疑念もまた攻め手に欠ける理由でもあります。」
「こっちのやり方は内密だからね。だからこそ、他は全滅は必須だし。」
増員の仕方含めて外道畜生なやり方なので絶対にバレたくない。後ろめたさ凄いが。
「ま、そうか。アテネたちの立ち回りだけではなく、ジャンヌたちもまた動いてくれているから問題がないのかな?
どこまで増えて、どこまで行けるのか知らないけど。」
「滅相もありません。私はアレイスター様を知らぬ愚か者でありました。
しかし今は真実に気付き、こうして活躍できている次第であります。どうかこの愚か者に新たな気付きを!!」
高速脱ぎ芸やめんか。早くも色々と見えてるよー。あ、手が。
「ここで発情しないでもらってもよろしいかしら?」
「・・・・・・貴女は・・・妲己ですか。」
そんなジャンヌの背後には妲己とこれまた見た事ないお姉さんが四つん這いの上、裸な上で鎖を首に繋げられているじゃあありませんか。
「アレイスター様、お忙しい中失礼致します。」
「うん、うん。まあ、うん。」
ちょっとこの光景にどう返せば良いか、民間人レベルの僕には難しい。
「・・・・・・ノコノコと。」
ヴィーザルさん少しオコなの。
ジャンヌは相変わらず服を着ずに、妲己へと視線を移す。
ジャンヌさん。そんな刺青刻まれてたっけ?言葉の意味は解らない。が知らない方が俺的には良さそうだ。
蝶々とかバラは解るが、謎の文字に関しては触れない方が良さそう。んん!そんなことより。
「アレイスター様に是非新しいペットをと思いまして。」
「いえ、間に合ってます。」
「いえいえ、そんな事を仰らずに。」
拒否権はないの?ま、確かにエロいの好きだよ?なんか、こう。好きだよ。
でもね、流石に度が過ぎますよ。アブノーマルな趣味は・・・・・・あるな。よくよく考えてみれば、今やってる事がそうじゃね?
「そう思えば不思議と納得か。」
「納得されなくともよいかと。」
「何を仰いますやら。」
「そ、其方がこ・・の主か。」
鎖に繋がれた裸のお姉さんが問い掛け始めた。
「其方って・・・・えーと、まずはどなたかな?」
「わ、妾は・・・楊・・貴妃・・」
「おや?話せるの?あれだけ痛め付けたのに。まあ、そう来ないと楽しめないわ。」
鎖を無理矢理に引き寄せて楊貴妃を前へと引きずった。
「くっ!」
何か良からぬ事をされているようで。
「アレイスター様、ソイツは共和国の楊貴妃です。滅ぼした際、唯一のLRとして捕獲しておりました。
その預かり人は妲己でございます。」
控えていたミリスが耳元でご丁寧に説明してくださる。多分、俺が資料を見過ごしている事を察しているのだろう。
できる部下で涙がちょろり。
「んでえーと、何かな?」
「アレイスター様、そのような卑しいブタ如きの問いなど。」
「妲己、私はね全てを壊すだけという存在ではないという事を証明しなくてはならない。」
「はっ!」
「君がそうであったように、私には作り変える義務があるのだよ。」
「その通りでございます。そして世界もまたそれを待ち望んでおります。」
世界が何の事かは知らない。
てか、既に自分が何を話しているのかすら判らない。
何となく王っぽいセリフを過去のアニメや漫画、ドラマからそれっぽいのを選んでいるだけ。
しかし、勢いは大事だ。




