71 召喚サービス
大きな戦いの後、俺は自室でゆっくりとここ3日間は休んでいた。いや本当に休んでた。
全然ハッスルしてないよ?いや本当に!
確かに夜這いは多くあったけど、私のLRたちが追い返してくれたよ。(中には同種も。)何人かが順番がどうとか、小競り合いがあったけど。
「ともかく今日から復帰だな。まずは情報整理から、かな?」
「お目覚めの所で申し訳ありません。ですが、どうしても必要なことでございまして。」
お馴染みの秘書さんことミリスさん、カイネさん、アテネさんです。ロキさんやウトガルザさんも頭良いが、基本この3人が私の元で取り仕切っている。
「僕もまだゆっくりしてても大丈夫だとは思います・・・・・・」
僕っ子ミリスさんは特に初期メンバーなため、長い付き合いである。初期メンバーが傍にいると安心感があるよね?
久々な活動のためか、何か解説じみた感じになっている気がする。
「まあいいよ。居ない間でも色々とあったようだし。それに私の失敗で引き起こされた戦争もあった事だ。なんとも嘆かわしいものだ。」
少し議長口調が現れてしまった・・・・いやはや困ったものだよ。
「その心中理解できます。」
アテネさんは何故か共感してくれる。
ただの厨二にマジで返されるとは、逆にリアクションに困る。是非止めてほしいものだ。
「うだうだしてもしゃーなしだ!はじめましょか?」
「「「かしこまりました。」」」
まあ、個人的にも色々と気になる事がある。手始めにメニューで開くか。
うん?
自身の表示されたステータスを再度確認した際、ある項目が浮かび上がっていた。
「召喚サービス?」
何故いつの間に?しかも最新情報ってアプリゲームやソシャゲみたいだな。
「アレイスター様、如何なされましたか?」
おっと彼女たちには見えない仕様か。アテネの察知レベルが鋭すぎて怖いが。
「いや、このー・・・・・・・何でも無い。」
「・・・・・左様ですか。」
うーむ。アテネたちには告げづらい。
俺のステータスやらレベルやらはあまり話していないのだ。彼女たちも実際は俺たち異界人の内容を詳しくは知らないようであるし。
ただ今のリアクションから全てを悟られた気がするが・・・・
「まあ損しないなら試すかっ、ぶべっ!」
適当にポチりと押した途端、上から頭に目掛けてLR召喚石がぼとりと落ちて来たのであった。
一般人のアレイスターには避ける能力などなく、見事脳天に直撃したのであった。
「あ、頭が二つにっ、割れる・・・」
「あ、アレイスター様っ!」
「敵っ!?」
「今すぐ警備を!」
「あっいや!あのー、あれだ!・・・・大丈夫。」
とにかく大事になる前に素早く止めねば。国中が動いたら手を付けられん。
「本当に大丈夫なんでしょうか?」
「しかし、それは・・・・」
いや実際の肉体的ダメージは半端ない。脳天直撃コースだったし。お陰でもっとバカになったよ。
けど、無警戒に押した俺も俺だ。(前回同様学習しない)
「しっかし、こんなにも硬えのかよ。」
これで撲殺できるぞ?まさかのLR召喚石に新たな使い方が!?
「ですが何故?」
アテネの疑問はごもっともだ。今更召喚サービス?あ、なんかメッセが挟んである。
俺はLR召喚石を拾い上げて、そのメッセを読み取る。
「えーと、何何・・・・『建国おめでとうございます。只今5カ国目を滅ぼしたキャンペーンでお配り致しました。どうか貴方に幸運が巡りますように。』何この狂気文は。」
下手な犯行声明より怖いよ。
「正気とは程遠い内容ではありますね。」
復讐心のミリスさんでは説得力が・・・・
「アレイスター様、これは一体?」
「解らん。けどまあ少し合点がいったのは、それだけ多くの国々を滅ぼしていた。という事だ。」
言いたい事は山ほどあるが、俺からしたら非常にありがたい。
しかし、この石は多くの命の重みを背負っていると考えると。
「割と躊躇われるな。」
しかし、使わねばな。
「一個手に入っただけでも良しとするか。早速やってみっか?」
「いきなりですね。」
「ご安心を我々が守護しております。」
「なら安心だ。」
つい最近死ぬ思いしたばかりやし。
アテネたちが居るだけで、どれだけ安心が約束されていたのかが十分過ぎるほど解った。
「もう少し」
「お願いします!」
「躊躇いないですね!」
躊躇ない上に対策への学習をしない俺にカイネのツッコミが珍しく入った。これまたレアな。
どうもいつもいつもふと思えば、即行動が頭に根付いていたようだ。
そんなLR召喚石が強く光輝く。周りにはいつもの如く紫電が舞っていく。
某機械人が出てきたら・・・・・
「今回も凄まじいですね。」
アテネさんぐらいならこの程度リアクションでしょうね。
今の状況を涼しげな表情で見てんの。こちらは目が今にもチカチカしておりますのん。
「アレイスター様、こちらへ。」
ミリスが俺を抱きしめるように匿ってくれる。そんな大きな果実が俺の視界を塞ぐ。この光景が一生続けばいいのに。
「この神気・・・・・・おかしい・・」
アテネが謎の呟きを。
そして少し長かった召喚が完了したのか、シュゥゥゥーッ!と落ち着き始めていく。そんな煙の中から烈火の如く新しいメンバーが姿を現す。
「よぉーーーす!!」
そ、その挨拶は!?
「おっす。」
俺もつかさずおっぱい横から挨拶をと。
「順応早過ぎです。」
「流石はアレイスター様です。」
「お見事です。」
カイネ以外はどうも思考が偏っていたようだ。これはアレだろ、おっす!オラ的な!?んん!さて、そんなことよりも。
「このお姉さんは。」
「オレを呼んだのはテメェか?」
身長が高くて褐色肌、スタイルが良過ぎなのは言わずもがな。
しかし、髪色が赤、ピンク、オレンジと赤系が多い。髪型はショートポニーである。
そして、その服装も赤色を中心にラテックス製の素材のコスチュームを着ている。
そこには大き過ぎる果実がパンパンの剥き出しに。なんと大胆な。
しかもガテン系らしく、堂々としているため胸の張りが尋常じゃないです。
「何ジロジロみてんだ?」
顔が近いというか、この気迫と迫り方は完全にヤンキーそのものです。ほぼゼロ距離になりました。
「あまり近付き過ぎるなよ?」
アテネは隣からガラスのような綺麗で透き通った片手剣を謎のお姉さんへと突きつける。
「あ?ぶっ殺されてえのか?」
熱きお姉さんはすぐ熱くなりそうです。
「2人ともよしなさい!」
「アレイスター様がおられます!」
「黙ってろ!!」
謎のお姉さんがSSRの2人を一喝する。その気迫に飲まれたのか、硬直して萎縮してしまったようだ。あ、俺も。
「貴女は混ざり物よね?」
「あ?だから何だよ?」
「アレイスター様、コイツはかなり危険かと。」
「いや、この状況の方が俺にとってはかなり危険だよ。」
こんな所でおっ始めたら間違いなく俺が1秒でミンチになる未来しか見えない。
「やめんか!!」
2人の間に雷が落ちた。そしてやや痙攣する俺氏である。
「ゼウス・・・・・」
「助かった。」
アテネとミリスはゼウスへと視線を移す。
「んだよ、またかよ。」
ゼウスがいつの間にか扉を開けて部屋へと入っていた。
「何か良からぬ力を感じてな。心配で我のアレイスター様の様子を見に来たのだ。」
「そうかい。こっちは2人がかりでも構わねえよ。」
そう言うと、彼女はどこからか2丁の大きめの拳銃を取り出す。
「『覇薙火』!『業火』!いくぜぇ!」
行かないでもらっても?つか、名前がヤンキーネームなんですけど?
「舐めるなよ?生まれたての小娘が!」
止めに来たゼウスが何故かバチバチやる気満々です。最近雷を見たのに、早くも別の雷を見れそうです。こんな小部屋で。
「やめて下さい!!」
「レイレ!」
「おいおい、アレイスター様んとこに夜這いに来てみればよ。」
おい、アイナ。なんという不純な動機で訪れておるのよ。いいよ来いよ。バッチこい。
「そうだよ。」
背中越しでも分かるこっ!この柔らかさは!
俺の背後に温かい温もりが伝わっていく。凄く大きく優しい。その抱きしめている腕の刺青からフレイヤさんであると察した。
「おい!離れんか!」
「ええ、見ていて非常に不快になります。」
すいません。今度はこっちに矛先が向きそうなんですが?
「やめんか馬鹿共!久々に戦場から帰ってみれば!」
眼帯お姉さんのテュールさんが現れた。ほんと久々な感じが。
「疲れておるのに余計な災いを起こそうとするな。」
オーディンさんも何故か素っ裸で登場した。ほんと自由だよなここは。
「チッ。ギャラリーが多過ぎだろうがよ。
まあ、別にいいさ。アンタらは私のマスターのお仲間って訳だろうしな。
ちと腕試しをしたいが・・・・・まあ、いいか。相当できる奴がここにはゴロゴロと入るようだし、機会はいくらでもあるか。」
そういった謎のお姉さんは銃器を背中へとと仕舞う。どこいったんだろ?
しかしその仕草かっこいい。
「えーと収まった所でさ、名前を教えてもらっても?」
「そうだったな。私はマリカってんだ。夜露四苦な?」
ふーん。マリカさんね・・・・・うん?
確か階級はLRの筈だ。今回はサービス召喚がゆえ、創造無しにおまかせで召喚してみたが。
「えーと由来とか」
「あ?んなもんねえよ。知らねえけど。」
適当だな。
「あらま。ま、えーと、よろしく。」
「おう!」
遠慮なく肩に腕を回されて、その大きな胸元へと引き寄せられる。フレイヤが後ろから抱いていたが、それをひっぺがしてまで。
なんという腕力だ。マジもんのガテン系だ。
「へぇ、君、意外な塊だね。」
「そうかよ?オレからすれば、んな事どうでもいいが。あんまオレの男にちょっかい出すなよ。」
「「「「「「「は?」」」」」」」
戦争というのは常に言葉から始まる。
どの世界も決して変わらない、ごく当たり前の話である。




