古き良きラブコメ展開?
まさか2話目も読んでくれるの?
「んー、この感じだと早歩きで行けば間に合うかなー」
成る程。
使われ過ぎて逆に使われなくなったあのパン食べ少女の角ごっつんか。
それが手違いで起こらなくなってしまったと。
またの機会ということではダメなのだろうか。
ダメなのだろうなぁ。
しょうがない。
つまり、この女の子のいつもの通学路を塞いで急がせて曲がったところでぶつからせると。
最初の方はどうやってとか教えてくれたのに今はどうにかしろか......。
俺も新人卒業が近いということかな。
よし、頑張ろう。
そんで、もう一人の方は?
「うーん、この感じだと転校初日は遅刻かな~。言い訳でも考えながら行くか」
暢気に歩いてた。
場所、速度から考えて。
あのT字路を曲がらせればいいか。
さて、それじゃあ。
◇
「よし、多分間に合う!パン食べよ」
いつ食べるか迷っていた出てくるときに持っていたパン。
それを口にくわえて歩いた。
「って、え!工事中!?」
さっき遠くからは見えなかったけど確かにあの看板とヘルメットを被って夜光る服着た作業員ぽい人がいる。
しかもめっちゃ左に曲がって欲しそうに右手に持った棒を左に示して左手に持った棒めっちゃ時計回りに回してる。
あれ?振り回してるのヲタ棒じゃ、そんな分けないか。
しょうがない、左に曲がるしかないか。
「って遅刻しちゃうじゃん!私の無欠席、無遅刻記録がー!」
パンを加えて走る。
まるで少女漫画のオープニングだなと変に俯瞰的に思った。
或いはそんな予感がした。
「よし、これで大丈夫かな。なんか適当に光る棒出して回してたけどあってたかなぁ。もっと長かった気もするけど」
まぁもう終わったことだし良いかと。天界に戻ろうとしたとき連絡が入った。
「ナギ君!その、もう一人の方!男の子の方が予定以上に運動神経良くて。このままだと避けられるかも!どうにかして!」
「え?」
切れた。
え、あと10秒ぐらいで衝突するんだけど。
あ、衝突はしないのか。
まぁ二人共怪我しなくて済むしいっかー。
じゃ!ない!仕事!
持っていた棒を投げ捨て作業服を脱ぎ捨てる。
看板とかの撤去は後!
走りだしながら考える。
男の子ところまで最短距離で突っきって行く。
家の上や電柱や看板を踏み台に進む。
よし、見えた。
猶予は残り五秒ぐらいか。
女の子の方の気は惹かずに男の子の方の注意力を下げる。
……。
…………。
………………。
ビラ!
手元にチラシを作製。
内容は適当で良い。
適当な風に乗った感じで。
チラシを男の子の顔に当てる!
「うわ!どっから飛んできたんだ?ん?ラブコメ運命調整局小説家なろうにて好評連載中(好評ではない)?なんだこれ」
足を止めることなくビラを読み上げる。
なんだこれと言いつつ捨てずに折ってポケットに入れようとしてるの好印象だぞ。
ただ、ポケットにビラを入れようとしたときが丁度角に差し掛かった時。
パンを加え焦りに焦って走っている少女と少年は衝突した。
そしてそのまま少女は少年に乗りかかる感じになり。
……。
後は想像に任せるか。
「私のファーストキスがー!!!!」
おっと、少し恥ずくて説明を省いたのだが一言で説明してくれた。
いや別にいい歳してき、キスというのが恥ずかしいわけじゃないよ?
もうキスの一つや二つや百ぐらい余裕で、してないんですけど。
縁が無かっただけだから。本当に。機会が無かっただけだから。
タイミングね?俺達のラブコメ運命は調整してくれる人居ないしなぁ。多分。
「ったく、前見て走れ、って前見れてなかったのは俺の方か」
男の子が意外と取り乱さずに言った。
少し見守りたい気持ちもあるが本来工事なんてない場所を工事現場っぽくしてるんだ。
それに作業服と棒も置いてきてる。
早く片付けてこなくてわ。
「うぃ~」
天界に戻り気の抜けた挨拶をする。
「お疲れナギ君」
デスクの方から目を離すことはなく返事をくれる先輩。
「何とかしてって言われたときは焦りましたよ」
「私の方も暇じゃなかったから。何とかしてくれて助かったわ」
「あはは、それじゃあ。キスしてくれません?」
「へ?き、キス?な、何言ってるのよ!仕事中にふざけないで。そういうのはもっと──」
「そうっすよね、すいません。ジョークですよ」
怒られてしまった。最後の方は小声で聞こえなかったけど。
そりゃそうだ。セクハラで訴えられてもおかしくないレベルだ。
流石に早めにジョークと言っておいた。
いやぁ、ちょっとファーストキスしてるところ見ちゃったから。
何か高校生のガキに負けてると思うとちょっとって言うか。
まぁ、最近のガキはませてるからね。小学生で付き合ってる奴らとか居るし。
あはは、は、は。
っすー。
何とか地文でつないでるけどそろそろ何か言って欲しいっす。割と切実に。
その殺意込めた目で睨まないでください。
乾いた笑いだけが零れる。
マジ怖い。
「はぁ、やっぱり今週末奢りなさい」
「はい」
蛇に睨まれた蛙というより飼い主に怒られた犬の気分だ。
いや別に先輩は飼い主じゃないしましてや俺は犬でもないのだが。
「先輩」
「......」
「先輩って彼氏いるんですか?」
「......。いないわよ。...…今は」
今は、そうか、先輩モテそうだしそうだよな。
今いないのは仕事でってことなのかな。
「俺は彼女居たこともないっすわ。何で何だろう」
多分天界七不思議に入っても良いと思う。
いや、流石にそれは自惚れだけども。ただモテないだけですよハイ!終わり!
◇
はぁ、溜息を吐きつつ少し自己嫌悪。嘘をついてしまった。いや、嘘は付いてないけど。
見え張って「今は」って言ってしまった。
ナギ君の前ではお姉さんというか、頼れる先輩で居たいから。つい。
最後少し落ち込んでた感じだけど、大丈夫かな。
…………。
ナギ君は今まで彼女居たことないんだ。
意外だ。
私はナギ君のことをどう思ってるのだろう。ナギ君は私をどう思ってるのだろう。
ブンブンと頭を振り邪念を払う。
今は仕事に集中。
そういうことにして私はこれ以上考えないようにした。
◆
「頭振ってるけど…。やっぱ先輩疲れてんのかな」
その声は彼女には聞こえなかった。