眠って仕舞えば明日はやってくる
「目が覚めた」
大分飲んだが二日酔いは無し。そして残念なことに昨日の記憶もあった。
目が覚めたっていうか目が醒めたって感じだ。
昨日は酔って変なことを言ってしまった。
「はぁ〜」
盛大なため息を吐く。
どうしよう、正直気まずい。冷静になってみると俺も先輩も何を言ってるんだ。
恥ずかしさと嬉しさのようなものに一人悶々としていた。
先輩は忘れてくれただろうか。あの人は割と飲むと記憶がなくなるタイプだ。大丈夫だと信じたい。
「会社休もっかな、風邪引いたとか言って」
でも、それでもし先輩がお見舞いに来たらさらにまずいし。来ないと寂しい。
昨日の酔ったままで時間が止まってしまえば良かったのに。
しょうがないので俺はベッドから出て身支度を始めた。
オフィスに入る扉の前で少し止まる。
先輩はもう来てるだろう。
「なんかなぁ、別に言っただけなんだよなぁ。だから何ともならなかったし……」
「どうしたの? 扉の前で止まって」
「いえ、今から入ろう、と……。せ、先輩」
今日はどうやらいつもより少し遅かったらしく。先輩も今出勤したところだったらしい。
先輩が俺の後ろに立っていた。
「おはよう、ナギ君」
いつも通り、先輩は少し微笑んでそう言った。
「お、おはようございます」
それに対して俺は少し取り乱しつつ挨拶を返す。
「元気ないわね? 風邪でも引いた?」
先輩はそんな俺の様子を怪しんだのか。俺の顔を覗き込んできた。
顔近い!
「いや、元気です! 二日酔いとかも大丈夫でした」
その場から飛び退きつつ俺は両手をぶんぶん振りながら言った。
「そう、じゃあ行きましょ」
「は、はい!」
うーん。先輩は忘れたのだろうか。
まぁ、どちらにしろ気にしてはないようだし、俺もいつも通りにしよう。
髪の隙間から一瞬見えた先輩の耳が赤い気がした。
まぁ一瞬だから見間違いだろうけど、赤いのは多分俺の顔の方だ。
俺は一度自分の頬を手挟むと気を取り直して先輩の後に続き自分のデスクに向かった。
「あ、ナギ君」
デスクについた自分に先輩が話しかけてくる。
「何ですか?」
「昨日のあれ、私の夢じゃないわよね?」
あれってどれなんだ!!
ブクマとか評価とか、あと感想くれると嬉しいです