イヤホン世界
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「天才現る」「預言者降臨」「世界は彼に託された!」と、今日も響の良い言葉が俺を高揚させていた。それもこれも、俺は十八歳にして世界の平和と命運を託された男なのだ。
命運というのはなにも盛って話しているわけではない。事実、この星の経済状況から地球環境まで全てが俺の管理下にある。
「金は全て俺のもの」と言えばそうなるし、「地球よ滅びろ!」なんて騒げば、他の人間どもがきっとこの星を爆破してくれるだろう。
まぁそんなことすれば俺の生命も危うくなるのでしないのだが。
いやいや、何も俺が能力者だとか人外だとかそう言った話をしているのではない。
コイツだ......。そう、イヤホンだ。このイヤホンから聞こえてくる声を頼りに俺が動いて、世界に平和を与え続けている。きっかけは覚えていない。仕組すらも分からないが、とにかく流れてくる声の通りに俺が動いた。
するとどうだ。当たり前のように世界が俺を中心に回り始めたではないか。俺の事情も知らずに人間どもは俺が預言者だの天才だの騒ぎ立ててやがる。いい気味だ!
俺がほくそ笑んでいると突然イヤホンから声が聞こえた。
なになに? この星に隕石が落ちてくる。この星は終わりだぁ?
ふん、そんなことか。 これもいつも通り他の人間に予め伝えておけばどうにかしてくれるんだろう。空を見上げても隕石が落ちてくる気配もない。だから俺は高貴なベッドの上でそのまま寝てしまった。
誰よりも偉く、敵がいない俺は平和だった。
どうやら一日寝てしまったらしい。そしてやたらと暑い。違うな。熱いんだ。全てが熱かった。高貴なベッドも空気も全てが。
俺は飛び起きた。ふと空を見れば青空を消し去るほどの隕石があった。そして誰にもこの状況が起こることを伝えていないのに気づいた。
「イヤホンはどこだっ!?」
俺は血眼になってイヤホンを探した。残った力で、物騒なイヤホンに八つ当たりしたかった。
俺はまた飛び起きた。周りを見渡す。いつも通りの自分の部屋。どうやら夢だったらしい。ベッドも空気も熱くないし、暑くなかった。
胸元を触る。心臓が鳴っていた。生きている。
俺が安堵のため息をつくと、部屋に母が入ってきた。なんでか知らないが俺のズボンを持っていた。そして大分湿っている。洗濯をしたらしい。
「ごめん。あんたのイヤホン洗っちゃった」
母がそのズボンから取り出したのは、無残な姿になった俺のイヤホンだった。
世界が平和でよかった。
俺はつくづく思った。




