昔の怖い思い出
怖い話ですか?
一つありますよ。
まあ作り話だと思って聞いて下さい。
あれは私がまだ中学生の頃だから
かれこれ40年以上前の事です。
父が転勤になり私たち家族も
一緒にある南の島に行きました。
そこは私が行く前の年にA国から
返還されたばかりでした。
車もまだ右側通行でした。
異国に来た感じがありました。
私たちが引っ越して来た時に
大家さんからあなた達は
運が良かったねえと言われたんです。
後一か月早かったら大事故に
巻き込まれていたかもしれない
と言うのです。
一月前に近くの幼稚園の園庭で不発弾が
爆発して触ったり近くにいたりした
園児が亡くなったそうです。
引っ越し先のアパートの外壁にも
少しヒビが入っていました。
さて引っ越して来て数ヶ月経った頃ですが
母がアパートの自治会役員になってから
自治会の奥さんから母にこんな話が
ありました。
アパートの住人に怪我をしたり
病気になって入院したりする方が
大勢いるというのです。
色々相談してアパートの駐車場の端で
お祓いをしてもらいました。
何でもお坊さんを呼んで
長い長い線香を立ててお祈りしたそうです。
そしたら怪異が止んだんです。
なんでも昔この辺で大勢人が亡くなって
今でもこの下に埋まっているという事でした。
さてそうこうするうちに
学校も夏休みで元気を持て余して
いるだろうと親に思われたらしく
同じアパートの年上のお兄さんと一緒に
早朝にランニングをすることに
なりました。
アパートが丘の中腹にあり
坂道を上に向かって走る事になりました。
まだ中学生で体力もなかったので
大学生のお兄さんについていくのが
大変だった思いが残っています。
何キロか先の丘の上まで走るのですが
一本道で回りは家だったか塀だったか
今では記憶がぼんやりしてます。
丘の上まで来るとまた引き返すのですが
そこに何だか古い豪がありました。
何でも少し昔に使っていたそうですが
今では朽ち果てて回りの草むらも焼け焦げた
ようになっていて、いや焼け焦げたように
見えていただけなのかな
何しろ昔の記憶なのでね
その辺は何か霞がかかったように
景色が曖昧ですね。
その時は中には入っていません。
直ぐに引き返しましたよ。
でも…
行ってしまったんです。いや
呼ばれたのかな?
本当は夢だったのかもしれません。
……
あれは何か蒸し暑い夏の夜でした。
気がついたら暗い地下洞窟の中にいました。
ぼんやりと灯りがともりかなり薄暗く
じめじめしていた感じです。
なんか頭の中に直接声が響いてます。
嗚呼ここに立って寝ていたんだよ。
座る隙間もなかったんだ。
大勢の兵隊がいたからね。
何か物凄く悲しい想いが込上げてきます。
何かわからないけど
酷く悲しい…
夏なのにここは酷く寒い…
丸い大きな湾の風景…
行ったことがないはずの景色が浮かんできます。
兄弟が皆んな軍人?
誰の記憶?
ずうっとここにいたような
へんな感じでした。
ふうっと洞窟が暗くなって
気がついたら朝になっていて
布団に寝ていて天井が見えました。
多分夢だったのでしょうが
所々が妙に鮮明だったことを覚えています。
その土地は次の年にはすぐ引っ越して
しまってその後訪れていません。
でもだいぶ昔のことなのに忘れてはいません。
何か懐かしいような不思議な思い出です。
終わり。