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カップルと友人少女の嘆き

 二人は今日の講義が行われる教室へと到着すると、そこで一人の少女に捕まっていた。


「えええ! 二人とも付き合ったの‼」


 その声が響いた講義室は一瞬にしてざわつき、全員が全員、一様に総司と真白に視線を向ける。


「声がでかい。みんな反応しちゃってるだろ」


 同じ室内にいる者はみんな彼らの会話を聞く満々だ。

 何せ、大学の中でも人気のある少女に男が出来たのである。

 特に男子は気にならないわけがない。教室の所々では悔しがる声が聞こえてきていた。


「でさ、いつ付き合ったの? 先週までは違ったよね」

「まぁ、昨日な。というか、真白は彼女に何も言ってなかったのか?」

「メールは送った」

「まじ? 最近スマホを全然触ってなかったから気付かなかった。そっかぁ、そうなんだぁ。ついにね。ついに二人がね」


 余りに視線が気になるので、三人は部屋の端に移動してから、改めて彼女から問われる。


 茶髪のポニーテールの少女は、ひな鳥が巣立っていくのを見送る親鳥みたいな反応だった。


 彼女は総司と真白のクラスメイトで、名前はしま小豆あずき。快活で誰とでも仲良くなれるタイプの女の子である。


 真白とは入学早々から共通の趣味であるアナログゲームをきっかけに仲良くなっていた。


「そんなに驚くことか?」


 総司は彼女の驚き方を大げさだと思ったが、


「いや、驚きだよ。驚き! 驚き桃の木この木何の木、まさきだよ。だって、仲いいくせに全然付き合う気配無いからこっちは、色々と想像しちゃってぐらいだもん。それが急に付き合ったって言われたらびっくりするし」


 と言う事らしい。

 彼女にとっては、いつまでたってもその気配を見せなかった二人の事を心配していたようである。


「よくは知らんが心配? かけたな」

「小豆は他人のこと気にしすぎ。小豆も全然誰とも付き合わないし私の方が心配」


 真白は真白で彼女の事が心配らしい。

 実は総司のいないところで、真白は自分の恋路について相談をしていた。

 だから、感謝もしているし恩もあるから気にかけるのが当然だ。


 その小豆は全く誰かと付き合っているような素振りが無かったのと、幾分かは彼女の事情も知っているので心配なのである。

 

 ただ自分の事より人の事を世話する方が好きだけと小豆本人から聞いている。

 やはりそれでも、友人として心配は心配だった。


「良いんだよ。私は、そのうち素敵な人が現れるから」

「小豆は夢見がちなところがある。あんなこともあったし、少しだけ理想下げてみる?」

「うっ。それは……まぁ、理想が高いのは認めるけどさ。でも、夢見るくらいいいじゃん!」

「真白、小豆の理想って?」


 総司は彼女の理想のタイプが気になった。


 小豆は明るく前向きで社交的だ。容姿もその辺のアイドルよりは見劣りしない。

 十分、人目を惹く魅力的な少女。事実、男友達の間でも人気があることを総司は耳にしている。


 ならば少しくらい理想が高くても、余程を求めなければ十分に叶うだろうが……。


「爽やかイケメン細マッチョで、ユーモアがあって無駄にカッコを付けないひと。あとは、趣味が合うこと」

「それくらいな別に小豆だったら難しくないと思うけど?」


 確かに求めていることは多少厳しいものはあるが、金持ちだとか拗らせた性癖を持っているいるわけでもなさそうなので十分にまだ現実的だ。

 

「よく考えて。この条件に当てはまる人。近くに一人だけいる」

「ん? 爽やかでイケメン、ユーモアがある。確か、小豆の趣味はアナログゲームとアニメとかだよな。…………ああ、そう言う事か! なるほどな。そりゃ、無理だ」


 一つ一つ、条件を口に出して考えてみると得心がいった。


「そう。小豆は馬竜が好きなの」

「アイツ彼女持ちだからなぁ」


 馬竜とは、馬竜うまだつ飛角とかくという総司と真白の友人である。

 昨日の事件の時に、総司に関西弁でメールを送ってきたのがその馬竜飛角だ。


 彼は爽やかなタイプのイケメンで、高校までバリバリのスポーツマンだったこともあって、その体は鍛えられている。

 気さくな人間でもあり、関西弁を武器にツッコミとボケをこなす器用な男。


 加えて、漫画やアニメが好きなオタクであり、ゲームもアナログ、デジタル問わず上手い。

 小豆の条件に全て当てはまっている。


「べ、別に好きってわけじゃ! 私の理想にぴったしがっちりだけど、初めて会った時に理想だって思ってたよ。そりゃ。けどすぐに彼女ちゃんがいることが分かったし本気で好きにはならなかったから!」

「でも、それ以降、馬竜以上の人がいなかったんだよね」

「そうなんだよぉ。だって、あんなに完璧に私の理想と一致しちゃったらもう他の人は無理だってぇー」


 彼女は真白に泣きつく。


 かなり飛角のことを意識しているらしい。ここまでくれば、もはや恋愛感情を抱いているのと変わらないだろう。

 出会ったタイミングが悪かったと思うしかない。


「今度は私たちが手伝うから。ね、総司?」

「だな。俺も知り合いの中から小豆の条件に合うやつ探しといてやるよ」

「ありがどうぅ。やっぱり持つべきものは友だよ。でも、やっぱり彼氏ほじぃ~よぉ」

「よしよし」


 泣きつかれた真白は優しく小豆の頭を撫でる。

 世話焼きな彼女だが、実は真白の方が包容力と世話をする力量と言うか技能は高かった。


「あ、そうだ。そうそう。私の事は置いていてね。で、どっちから告白したの?」

「お前、立ち直り早いな。告白は真白の方からだよ」

「いや、総司の方から」

「ん?」

「ん?」

「どっち?」


 二人が真逆の事を答えたので総司と真白も首を傾げるが、事情を全くったく知らない小豆はもっと困ってしまう。


「いや、真白からだろ」

「総司の方。私のは酔ってたから」

「俺は改めて、確認の意味を込めて言っただけだが」


 真白は酔って告白したことはノーカンとまではいかずとも、告白としてカウントするには至らないらしい。


 一方で、総司はどんな形であれ最初の告白は真白からだと思っている。

 あれが無ければ総司も彼女に好きだとは告げていないだろうからだ。


「はははっ! やっぱり仲が良いね二人は! うん、もうどっちからでもいいや。なんとなく想像がつくし、詳しいことはまた今度にするよ」


 と彼女は言うものの話せないことはものすごく多い。


 酔って告白したりされたこと自体は隠したりしないが、例の動画の存在は世の明るみに出してはいけない。


 これ以上は、総司もぼろが出そうだったので彼女から引いてくれたことは助かった。

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