高校生らしいデートとは?
「ハロウィンでコスプレの体で制服着たけど、やっぱり背徳感が凄い」
「だよなー」
極夜家からデートに出かけた総司と真白は駅前の大通りを歩いていた。
大都市ほどではないにせよ、そこそこ仮装をした人たちを見かける。
土曜日の昼前と言うこともあり、学生もかなり多く、大学生と思しき陽キャの集団が闊歩しているなど、同じく仮装中の二人はアウェーの空気は感じない。
けれども、まだ羞恥心が勝っている状況だった。
「どこか、お店に入る?」
「行きたいところとかは無いのか?」
「折角の制服だから、高校生が行くようなところに行きたい」
今は制服デート中だ。
彼女は勇気を出して制服を着ているから、高校生の時に出来なかったことを望む。
「高校生のデートってどこに行くんだ?」
「さぁ?」
だが、二人は高校生のデートをしたことがない。
なんなら、今回のデートは寿司屋に行った日以来で二回目のデートである。
そもそもデートがどんなものかさえ、理解できていない状態なのだ。
事前に調べておくべきだが、コスプレでデートに行くことと、交際の挨拶のことで頭がいっぱいいっぱいだった。
そのためデートプランをどうするか考えていなかったせいで、こうしてグダってしまっている。
男がリードしなければという気持ちから総司には後悔が募っていた。
彼が真白にそのことを謝ると、優しく「私も同じだったから大丈夫」と励ましてくれる。
真白には感謝しかない。
「ちょっと調べる……あった。えっと、水族館、動物園、夏祭り及び縁日のイベント、花火大会、ゲームセンター、カラオケ、遊園地、映画館とからしい」
「なんか、大学生も同じような所に行くような気がするな」
真白がスマホを出して、『高校生 デート 定番』で調べると、沢山候補が出てくるが、その大体のどれもが定番過ぎて、高校生と言う感じがしなかった。
「結局、雰囲気なのかな?」
「かもしれんな。つまり、雰囲気を楽しめってことなら、好きな所に行こう」
「じゃあ、ボードゲーム屋に行きたい」
「いいけど、多分あそこでコスプレしてるやついないし、いつも行くから、店員とか常連に年齢とかバレてるから制服だと目立つぞ?」
真白はアナログゲーム、ボードゲームが好きで、よくボードゲーム屋へ買い物へ行く。
総司も真白も常連で、店員や他の常連客から覚えられている。大学生であることも知られているので、制服で行くと奇異の視線を集めることになるだろう。
それを危惧しての総司の言葉だった。
「う、それは嫌かも」
「ボドゲ屋に行くのは今度にしよう。とりあえず、ゲーセンにでも行くか?」
「ん。それでいいよ」
ゲームセンターにもかなり行くので顔は知られているだろうが、店員と世間話はしないので人も多いから制服でも大学生だと見抜かれることは無いはずだ。
とりあえずは、付き合う前から頻繁に訪れていたゲームセンターに二人は足を運ぶことにした。
「お、それいい感じ」
「もっと、アームを右に寄せたほうがいいと思う?」
「穴に変に嵌るかもしれないから今のでいいと思うぞ。多分な」
「もう一回、それでやってみる」
ゲームセンターにやってきた二人はクレーンゲームで、黒色の熊の有名なゆるキャラのぬいぐるみを狙っていた。
真白はクレーンゲームが上手いので、たった二回でもう取れそうになっている。
こういう時に男の出番がないと言うのは少し寂しかった。
「いけ……! よし」
「やっぱ、すげぇな。まだ三回目だぞ」
熊のぬいぐるみは二本並んだ棒の上に配置されてあって、普通にやるとハマったりアームが触れても動かなくなったりするが、真白は上手に攻略していた。
「上手くいけば、一回か二回で取れるかも。あ、これ、総司にあげる」
「いいのか?」
落としたぬいぐるみを真白は、筐体の景品口から取り出して総司にプレゼントをしようとする。
「もう一個取って、総司とお揃いにするから」
彼女は一指し指を立てて言う。
その様子はいつもの落ち着いた性格とは違って、少し子供っぽく可愛らしい女の子だった。
また、お揃いにしたいとの彼女のセリフにも自分に対する好意が伝わってくる。
真白の振る舞いに総司は、心臓が少し脈打つような気がするほどにドキッとする。
「なら、真白のは俺が取ろう。プレゼントしてもらったからな。お返ししないとな」
「ありがとう。付き合ってから総司にプレゼントしてもらうの初めてだから嬉しい」
「そう言えば、俺も初めてだったな」
嬉しさからか、真白からプレゼントして貰ったことを意識していなかったが、彼女から言われて、恋人同士になってから初めてのプレゼントだったことに今気が付く。
尚更、彼女のために真白とお揃いにするために、ぬいぐるみを取ってあげたくなった。
「うわ、ミスった!」
ぬいぐるみの頭を狙うが、アームが掠る程度で微動だにしない。
「もう少し体の中央を狙う感じでいいと思う。頭も体も同じくらいの重さだから、あんまり重心は考えなくて大丈夫」
「なるほどな。真白のを真似したつもりだったんだが」
総司は真白のプレイを真似してみたが何が違うのか分からない。
「私は転がすことを狙ったから。斜めに動かしたいなら体の真ん中でいい」
「どう動かすかでアームで狙う場所が変わるんだな」
的確な指示に彼女のプレイスキルの高さを垣間見る。
取り方によって、狙う場所が違うらしい。
「よし、じゃあ真白に言われたとおりにしよう……あ、これはいけるか?」
「もうちょっとだけ、あと一センチほどアームは右でいいよ」
真白の言うとおりにプレイしてみるが、上手くいかない。
簡単そうに見えて彼女のやっていたことは難しいものだった。
既に総司にはどうしていいのかと頭の中ではこんがらがっている。
「駄目だ。プレイ回数は真白と同じだけど、あんまりいい感じにならないな」
「私がやろうか?」
「もうちょっとだけ、やらしてくれ」
真白は気遣ってくれるが、総司としては情けないので完全に彼女に任せたくは無かったが、無碍にするのも彼にはできない。
なので、後ろからアシストだけしてもらうことにする。
「総司、少しだけ前に寄ってもらっていい?」
「あ、ああ分かった」
真白が総司の後ろに立って、背後から手を伸ばすようにする。
非常に密着度が高く、彼女の体温と身体の感触を感じる。
何より彼女はスタイルが良く、女性特有のある部分が背中に当たるのでびっくりする。
ただ、真白は全く気にしても意識もしてないようだし、真剣に教えてくれている。なので自分の口から指摘するのも躊躇われたし、年頃の男としてやめてもらうのも惜しさがあったので黙っていることにした。
「総司?」
「い、いや、なんでもない。よろしく頼む」
「うん。任せて!」
一瞬気付かれたかと思ったが、どうやら誤魔化せたようだ。
彼女は総司の気も知る由は無く、恋人から頼りにされたことで意気揚々としていた。




