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朝起きると彼女が出来ていました。

 ある朝、つかさ総司そうじは起きると可愛い彼女が出来ていた。




 夏休が明けてから一か月過ぎ、ハロウィンっぽさを徐々に帯び始めた十月上旬。

 総司は前日から深夜過ぎまで大学生らしく友人六人と呑んでいた。


 部屋はお菓子の袋やら酒の缶が散乱し、テーブルには少々のチーズや燻製サラミなどの残骸が放置されている状態。

 そんな状況の中、彼は目覚めた。


「ふぁ~、もう朝か」


 眠たい眼をこすりながら、地面で寝っ転がっていた体を起こす。

 何してたっけと思考を巡らせど、記憶はほとんどなかった。


 辺りを見渡し、その惨状から大学の仲間で集まって飲んでいたこを思い出す。


「あー、皆は帰ったのか」


 一緒に呑んでいた友人たちの姿が無い。何人かは総司と学部が違い、今日も講義があるから早い内に帰宅したのだろう。

 深夜の三時前辺りに友人たちが家から出て行った時の記憶が薄っすらと蘇ってくる。


「片付けずに帰りやがって……」


 酷い有様だ。酔っていい気分なのは分かるが多少は片付けてくれと思う。

 放置するわけにはいかないので、総司は酒の残った体で頑張って立ち上がる。


「え、お前はいたのか」


 立ち上がってすぐ、どこから片付けようかと部屋をぐるっと見てみると、先ほどの位置からは死角になっていたソファですやすやと寝息を立てる少女がそこに。


 彼女は極夜きょくや真白ましろ。総司と同じ大学の外国語学部に所属する同級生だ。


 少しクールなタイプで感情表現が豊かでないものの、笑えば可愛いし人と会話をすることに意外と積極的だったり、ボケてみたりふざけてみたりもするお茶目な少女。


 そんな彼女の外見は一言で例えるなら美少女だ。

 肩の位置まで伸びる艶やかな銀髪、くっきりとした目鼻立ちで毛布からはみ出している手足は細長く健康的に白い。


 寝姿は無防備で自分とは違う肩や腰回りの華奢な体つきが一層、女性らしさを想起させ寝起きの彼にとっては少々刺激的だった。


「おーい。起きろ。朝だ」


 彼女の肩を軽く揺すってみる。


「う~ん? なに?」


 すぐに反応があって、彼女はもう少し寝かせて欲しそうな口調と半分も開いていない目で総司を見る。


「もう朝だって。皆帰ったぞ。起きて片付け手伝ってくれ」

「そうなの? うぅ、頭いたぁ」

「あれか二日酔いか」

「そうみたい」

「水持ってくるからそこで休んでてくれ」

「ありがと」


 総司は酒を記憶を失くすほど飲んでも、多少だるさなどはあっても二日酔いほど酷い症状にあまり襲われることのない恵まれた体質だ。

 しかし、彼女は辛そうにしているので片付けをやらせるわけにはいかない。

 冷蔵庫横の棚を漁って総司は常温の水のペットボトルを彼女に手渡す。


「ほら、大丈夫か?」

「ちょっと痛むくらいで、吐き気とかは無いから大丈夫」

「ならいいや。落ち着いたら後で家まで送っていこうか。酒が残ってるはずだから車は運転できないけど」

「それでも助かる。ありがと」


 普段はクールな彼女も今ばかりは可愛らしくしおらしかった。

 水を渡した後、彼はタオルを手に片付けを始める。


「所々で溢してんなぁ」


 その辺に転がった缶に残った中身が溢れたりしていて、拭き取るのがだるい。

 幸いなのは派手に溢していないことか。


「んひゃっ⁉」


 タオルで拭き取っていると、背後の方で素っ頓狂な声が聞こえてくる。


「どうした?」

「えっと、ちょっとなんかソフィとか晴音はれねからおめでとうメールが来てる」


 ソファに座っていた真白が良く分からないことを言い出す。


「どういうことだ? 全然分からん」

「こっち来て」


 手招きをする真白。


「これ」


 見せられたのはメッセアプリのグループでのやり取りだった。


『真白。カレとお付き合いおめでとう! 結婚式には呼んでね。愛しのソフィより』

『おめでとさん! 次に会った時は詳しく教えてよ‼』


 そこには短く二件のおめでとうメッセージと、それぞれ一つずつ可愛らしいスタンプが添えられていた。

 内容からして、真白に彼氏が出来たことを祝うものだと分かる。


 何故こんなものを見せられるのか、そして彼女が素っ頓狂な声を上げたことが総司には不明だ。

 と言うより、彼はだいぶんに心が傷ついた。


 なぜなら、彼は真白に好意を抱いている自覚がある。好きな人に好きな人が出来て結ばれるというのはとても複雑だ。

 朝からショックである。


「ああ、おめでとうと言ったらいいのか?」


 状況は理解しかねるが、心をすり潰しながら彼は彼女を祝おうとする。


「違う違う」

「ん?」

「だって、私と付き合うことになったのはあなただもの」


 彼女は手を左右に振って否定し、真顔で驚きの一言を放った。


「……はぁ⁉」


 今度は総司が間抜けな声を上げる番だった。


 真白の言葉の意味は文字通りには理解出来ても状況が意味不明過ぎたことと、唐突に好きな人から私と付き合っているのはあなただと言われれば、誰だってこんな間抜けな声を上げるに違いない。


「これなんだけど」


 もう一度、彼女にスマホを見せられる。先ほどのメッセージから少し遡ったものらしい。


『私、極夜真白は司総司とお付き合いすることになりました』


 といった一文とハートマーク塗れのキャラクタースタンプが。


「なんだこれ? なぁ、なんでこんなもの送ったんだ?」

「多分酔ってた。いや、絶対に酔ってた。ごめん」

「いや、いいけどさ」


 酔ってやらかしたことを真白は申し訳なさそうにする。

 酒に酔ってやらかすことは良くあることだ。仕方はない。

 それに彼女がまだ誰とも付き合ってないことが確認できただけで彼にとっては幸いだった。


 安心したところで、テーブルの上にあった総司のスマホが電子音を発する。ソシャゲのスタミナ回復を知らせる通知音だ。

 だが、画面には他にもメッセの通知があった。

 嫌な予感がして総司はアプリを開く。


『よお! ついに極夜と付き合うことになったみたいやな。こりゃあ、めでたいことで。ようやく、君と彼女談議が出来るんやな。ま、彼女によろしゅうな!』


 と関西弁の友人の一人から。

 彼はその上のメッセージも確認した。


『総司君、お付き合いおめでとうっす! 今度、僕と飛角とかく君の彼女とトリプルデートしましょう!』

『これで独り身は僕だけか。君たちに爆発しろと言いたいが、今は祝っておこう。おめでとう』


 そんな二つのお祝いメッセージが記録されており、さらに画面を上にスクロールする。

 

『真白と付き合うことになった』


 無骨ながらも自分のメッセージがしっかりと残されていた。


「なぁ、これ」


 今度は真白に総司がスマホの画面を見せる。


「……総司も酔ってた?」

「酔ってた。それと俺は昨日の記憶がない。真白は?」

「私も全く無い」

「だよな。これは悪酔いした俺ら二人で悪ふざけをしたかもしれん」

「ね」

「「あぁ~」」


 二人揃って額を押さえ、やってしまったと後悔した。

 お酒って怖いなと。


 ただ、そこで終わらないのが酒の真の怖さである。酒に酔った人間はとんでもないことをやらかすのだ。

 ここからが本番だった。

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