2話 騎士様と色々
連投してます。プロローグをお読みでない方はそちらからお読みください。
「なんもないとこですけど、どうぞあがってください」
あの後、詰所で、色々な審査を受けつつ、あとは領主様へ、騎士様の事で心当たりがないか聞いてもらう事になり、それまでうちに居候することになった。
「世話になる」
「待ちなさいなアンタ。先に騎士様の装備を外してもらわないと、床抜けちゃうよ」
「あ、たしかに。すいません騎士様。庭があるので、そこで装備を外してもらってもよろしいですか?」
「……あぁ」
何故か騎士様は少し嫌そうに頷く。
「お湯とタオルも持ってくるんで、ちょっと脱いで待っててください」
「ほい」
「あ、母さん」
家に入ろうとして無造作に渡されたのは、お湯の入ったタライと、白いタオル。そんでもって着替え。
「さっさと騎士様に渡してきな。あとアンタのタオルも。アンタも泥だらけじゃないさ。そんな状態で家に入ってこないでね」
「へいへい」
「騎士様!お待たせしました!」
庭に戻ると、先と変わらぬ状態で棒立ちしている騎士様。
「どうしたんですか?」
「その……だな」
騎士様は徐に鎧兜を取り、と、り……。
待って。ちょっと待って。騎士様、
「女性だったんですか……?」
「………………うむ」
ずっと声が高めの青年くらいだと思ってたら、滅茶苦茶可愛い赤茶色のざっと切りそろえられたショートカットの女の子が出てきて、もう動悸が止まらないんだけど。
「あ、えっとじゃあ、外はまずいですね……母さん!母さーん!!」
「なんだいアンタ!まぁだ……ん?」
母さんが騎士様へ目を向けたところで固まった。絶対処理できてない。
「か、母さん。騎士様、これ、この通り女の人だから、外で着替えはちょっとって」
「すまない……」
「……ハッ」
母再始動。
「す、すみませんねぇ騎士様!そしたら、仕方ないんで、彼方の倉庫で着替えてもらって、グロース、案内しな」
「うん」
案内も何も目の前にあるけどな、倉庫。
「すいません気付けなくて……」
「私も言わなかったからな。声がそれ程高いわけでもないし、仕方ないだろう」
倉庫の鍵を開け、ガラクタを端っこによける。
「ここは……?」
「ただの倉庫ですよ。ただちょっとお宝が入ってますけど」
「……見事なものだな」
壁に飾られている、何の飾りのない槍を見て、そう呟く騎士様。
「そうですか?遺跡から発見されたものなんですけど、何の付与も掛かってない槍だから、あんまりお金にならないって。でもそれにしては強度とか結構凄くって、家に飾りたいって父さんが遺して行ったんです」
「なるほど。父君は今?」
「……正式には亡くなった事になってます」
五人でパーティを組み、遺跡に入って新参者の冒険家が罠を踏んだらしい。そこで、周囲から大量の魔物が出現したところで、父さんが退路を切り開き、仲間を逃したところで、分断され、終ぞ遺跡から父さんが出てくる事はなかったそうだ。
「遺体は確認されたのか?」
「後日、捜索隊が編成されて、調べてもらったんですが、大量の魔物遺体と、腕の一本が見つかったそうです。恐らく……」
今でも思い出す、母さんが声を上げて泣いていたのを。来る日も来る日も、涙が枯れるまで泣いて。疲れ果てて。
色々あって持ち直したけど、今度は僕が失踪したのだから、心配を掛けただろうな……。
「すまない」
「いえ、大丈夫です。随分と昔のことなので、正直僕は実感沸かなくて」
「あと、もう一つすまないんだが」
「?」
「一人にしてくれないか……?」
「あっ!すいませんすいません!失礼します!」
僕は慌てて倉庫を出て、僕は僕で装備を外し、泥だらけになったブーツを洗う。
こりゃ、ズボンも全部脱がないとまずいかな。
暫くして、倉庫からタライとタオルを持った騎士様が出てくる。
「待たせた。鎧は倉庫に置きっ放しで良いか?」
「大丈夫です。倉庫は上級付与魔法で、滅多な事じゃ盗人は入れないようになってるので、防犯性能もバッチリですよ」
「そうか。助かる」
というか、もうなんか色々それどころではない。思ったより背は高いけど、僕よりは小さいし、思ったより華奢でどこから、あの大剣を振る力を得ているのかと。
「服のサイズとかどうですか?」
「ちょっと大きいが、問題はない。とても着心地が良い」
「それならよかった」
村人御用達、モルモルの毛で作られた貫頭衣と、メルメルの毛で作られた薄茶色のズボンだと言うのに、素晴らしく可愛く見える。
家へ戻ると、さっきは気付かなかった良い匂いが香る。
「終わったかい?じゃあちょっと待ってなさい。晩ご飯作ってるから。部屋場所とか、騎士様に教えたりしてさ」
「了解しました!」
ビシィと敬礼し、騎士様の手を取る。
「それでは早速ご案内しますね!」
ご案内といっても、大して大きな家ではないけど。
玄関から、入ってすぐ左にリビングとキッチンがあり、廊下の正面真っ直ぐをいくと御不浄がある。玄関から入ってすぐ右には二階へ続く階段があり、手前の部屋から、僕、父さん、母さんの部屋がある。
「こんな感じですね。暫くは僕の部屋で生活してもらう予定……だったんですけど、母さんの部屋になると思います」
「了解した」
正直この人とずっと一緒の部屋だと、いつか心停止してそう。
「何から何まですまないな」
「何をいってるんですか騎士様!?」
「むぅ。私としては、本当に当然の事をしただけなんだよ。何というか、身体が勝手に動いて」
衝動的でも助けてくれた事には変わりないじゃないか!まぁでも、傲慢な騎士も多い中、こうやって感謝してくれるのは嬉しい事なんだけど。
「グロース!そろそろできるよ!」
「わかったー!では、騎士様、下へ降りましょう!自慢ですけど、母さんの作る料理は絶品ですよ!」
「……楽しみだ」