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1話 騎士様と状況確認

連投してます。プロローグからお読みください。




 がっしゃがっしゃ。音を鳴らして隣を歩く騎士様。信じられない話だけれど、騎士様はこの場所の名前や、自身の名前を忘れてしまったらしい。そんな状態だったというのに、僕を見掛けて助けてくれたのだ。これはなんとかしたいと僕から申し出て、とりあえずは僕が住んでいる街へと歩いている途中だ。


「それで、君は何故あの化け物に襲われていたんだ?」

「う゛っ。それは、その」

「うん?」


 フルフェイスの兜からチラリと見えた瞳は、責めているというよりは、どもる僕への単純な疑問を浮かべていた。


 はぁ。と息を吐き、答える。


「僕は遺跡の発掘とか、探検を主にしているんですけど、たまたま、調べた情報にない遺跡を発見して、あの、恥ずかしながら、お宝を独り占めできる!!って思って、最低限の荷物を持って入ったところ、罠を踏んであの化け物に襲われたんです」

「そうか」


 騎士様は一度頷くと、また歩き出した。


「騎士様はどうしてあそこにいたのか、それも覚えてないんですか?」

「うむ……目を覚ました時に、チラッと光る紋様のようなものが周囲に浮いていたのは見えたが、それだけだ」


 紋様……。魔法の痕跡かな?


「騎士様。それってこんな感じですか?」


 僕は使用できる数少ない魔法を使用する。


 僕を中心として、橙色の魔法陣が展開される。魔法陣の数は一陣。


「ファイア」


 僕が掌を前へ突き出すと、拳大の小さな炎が数メートル先の岩へと放たれ、ボフンと弾けた。


 炎が消えた段階で宙に魔法陣に含まれていた紋様がゆらりと消えていく。


「これは……色の違いはあるが、似ている。しかし、この紋様の量はもっと沢山あったな」

「沢山……。というか、もしかして騎士様、魔法を知らないんですか?」

「…………わからない。知っていた様な気もするんだが、イマイチ理解できぬ」

「うーん」


 これは色々と、教えた方が良さそうだ。


「あ、街が見えてきましたよ」

「あれか」


 広い草原を抜け、森を突っ切り、ちょっとした坂を登った先から見えるのは森と特級土魔法で強化した岩壁で囲まれた城塞都市、ガンズの中心の塔だ。


「……ここから見てあれだけの大きさなら、近付いたらかなりのものなのだろうな」

「そうですね。森の灯台とも呼ばれてます。周囲に魔法の光を照らしてくれてるので、どんなに迷ってもあれを目指せばガンズに必ず辿り着けます」

「ほう」


 まぁ、それでも迷うんですけどね。僕。


「待て」

「はい?」


 急に騎士様が警戒心を露わにし、背中の大剣の柄を掴む。


「クルルルァッ!」

「イカレドリだ!?」


 急に飛来したのは体長ニメートルくらいの鳥型の魔物。肉食で、自分より小さな生き物に対して率先して襲い掛かってくる。だが、相手が悪かった。


「ぜぇアッ!!」

「ギュエッ!?!?」


 騎士様は目にも止まらぬ勢いで剣の腹をイカレドリのクチバシにぶつけ、たまらず落下したイカレドリの首を切り落とした。


「すげぇ……」

「…………よし。大丈夫だ。これ以外はいないようだ」

「わかるんですか?」

「なんとなく……?」


 なんとなくか。でもその感に助けられてここまで来てるから、信じないわけにはいかない。というかこの人いなかったら死んでるし。


「よし、じゃあ解体しますんで、少々お待ちを」

「……食べれるのか?」

「いや、イカレドリは食べられないんですけど、コイツの心臓が錬金術の材料になるとかで、良い値がつくんです」

「なるほど」

「特に騎士様は他の部位に殆ど傷を付けずに倒してくれましたから、羽も状態の良いものは取っておきましょう」

「色々……役に立つのだな」

「ええ。っとあとは」


 先程使ったファイアを使用して、解体したイカレドリを土の上で燃やす。


「死体に鞭打つ様にも見えますが、森の保全の為にも必要な事ですよ、騎士様」

「いや、責める気はない。君は不必要な事は基本しないというのは、道中見ているからな」


 何故かやたら信用されてるな。まぁ、命の恩人にそう思われるのは嬉しいし、いいんだけど。


「お待たせしました。進みましょう」

「あぁ」





 それから暫く歩いて、遂にガンズへと辿り着いた。


「すいませーん!冒険家のグロースです!門を開けてもらえませんかぁー!?」


 三メートルを超える大きな鉄門の前で、門番を呼ぶと岩壁の上から、声が掛けられる。


「しばし待たれよ!」

「はぁーい!」


「……」

「どうしました?騎士様」

「いや、なんでもない」


 騎士様は何かを思案している様だったけれど、深く聞くのも良くないかと思って聞かないことにした。そうしてる間にギギギと軋む音を立てながら、鉄の門が開かれた。


「グロース!!」

「か、母さん!?」


 鉄門が開かれたと同時にものすごい勢いで飛び出してきたのは、歳の割にやたら若く見える僕の母親。何故かガン泣き。


「どこへ行っていたの!!」

「どこって、ちょっと歩いた先の……」

「ちょっとってアンタ、一月も音沙汰がなかったのよ?」

「は、はぁ!?嘘だぁ!僕が街を離れたのなんて、精々半日くらいだよ?」

「……と、とにかく、一度家へ戻るよ!」

「う、うん」


 と、騎士様が付いてこない。振り向くと門番に止められていた。


「何してるんですか!?」

「この者、名前もわからず、故郷も知らず。その癖無骨だが良質な鎧を着ている。この様な怪しい者を街中にいれるわけにはいかない」

「待ってください!この人がいなかったら、僕は死んでいたんだ!悪い人じゃないよ」

「グロース!?」


 あ、話すタイミング間違えた気がする。うん、間違えたね。後ろに龍が見えるよ。


「エドウィンさん。責任は私が持つからこの騎士さんをいれてよ」

「……しかし」

「じゃあ、詰所につれてって、まずはそこで様子見をしましょ。騎士さんには悪いけど、それでいいかしら」


 母さんが、騎士様を見ると、騎士様は頷き、門番のエドウィンさんが溜息をつく。


「仕方がないな。ただしその武器はこちらで預からせてもらおう。それでいいな?」

「構わない」


 正直、命の恩人を疑われて良い気はしないけど、色々気になる事もあるし、とりあえず従っておこう。




 所変わって門近くの衛兵の宿舎兼詰所。そこに騎士様が数人の衛兵に囲まれ、僕達と相対していた。


「それで、さっきの件だけど、どういう事なの」

「えっと、ね。森を抜ける手前くらいに、見た事ない遺跡があってさ。事前に調べておいた情報にもなくて、もしかしてって思って」

「まさか、未発見の遺跡に一人で入ったの!?」

「なんて危険な事を」

「だって、情報にもないってことは、宝物とか独り占めできるかと思って……ごめんなさい」


 母さんは深く溜息を吐いた。衛兵の皆さんも、嘆息するか、責めるような目を向けてくる中、騎士様は微動だにしない。


「それで?」

「……えっとね。途中までは順調だったんだけど、小部屋を見つけてさ、ちゃんと注意して入ったつもりだったんだけど、トラップを踏んじゃったらしくて、転移魔法陣だったみたいで、森を超えた先の草原に出たんだ」


 そこまでなら良かったけど、


「そしたら目の前に、獅子とグリフォンの身体が繋がった様な化け物がいて」

「……ッ」


 母さんが唇をキュッと結び、無意識か、僕の手を握った。申し訳なさで、顔が見れない。


「逃げて、逃げて、逃げた先で転んじゃって」


「そこで、化け物が真っ二つに裂けたんだ」


「それをやったのが」


「こちらの騎士様と、いうことなのね」

「うん」


 先程まであった猜疑心の色はほぼ無くなり、騎士様へと向ける母さんの目は潤んでいた。


「ありがとう、ございます……!!」

「…………」

「この馬鹿息子を助けてくれて、本当に……!ありがとうございます……!」

「礼は受け取ります。だが、当然の事をしたまでです。母君。貴女の息子さんは生きている。とりあえずそれで良いのではないでしょうか」

「……ッ」


 母さんは、深く頭を下げる。僕も、改めて頭を下げる。


「騎士様、改めて、僕を救ってくれて、ありがとうございました」

「……あぁ」


 騎士様は兜の隙間から見える目を細めて頷いてくれた。


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