Ep8:フラワー・オーシャン②
手のひらに、ツツジのような花が咲いていた。
色は少し赤みを帯びていたが、その赤みは赤石の血液によるものだとすぐにわかった。
慌てて右肩をみると、そこにもツツジが咲いていた。
「こ……これは!?」
「フフフフフフ」
高らかな笑い声のする方を向くと、そこには先程ぶつかった緑髪の女性が立っていた。
「私にぶつかった事を悔やむのね」
「超能力……ってヤツか」
「その単語を知っている……ってことは、一般人ではない……花畑の連中ね」
「うっ……」
「図星ね」
赤石は走って逃げようとした。しかし、
「うおっ……!?」
一歩二歩走っただけで、へたり込んでしまった。
「ち、力……が」
緑髪の女性は赤石に近づいていく。
「フフ、これが、私の能力」
人差し指が、赤石の頰に触れる。そこから、ツツジが咲き始めた。
「……こんなもの取っ払って、痛ッ!」
ツツジを引っこ抜こうとするも、皮膚と同化しているためか抜ける気配は無かった。
「無駄な足掻きをしないで頂戴」
「……さっきよりも腹が減っているし、疲れが回ってきた……まさか!」
「そう……私の能力は、触れたところから栄養を奪うことができるの」
「なんだ……それっぽっちか」
「それっぽっちの能力に弄ばれているのはどこの誰かしらね」
「ちっ……」
「さてと……本題に入りましょうか」
「……」
「私の奴隷……いや、部下になりなさい」
「…」
「最近研究で疲れているのよ、あと花畑の戦力ダウンにも繋がるからね」
そう言いながら、女性は肩を揉んでいる。
「そうすれば、その花に蓄えられている貴方のエネルギーを返してあげましょう」
「……」
「……まあ、お花GPSで監視されての生活になりますけど」
「……はぁ、分かった」
「おぉ、随分と物分かりがいいようで助かり」
「オメーをぶっ倒す方法がよ」
「……物分かりの悪い人ですね」
信号が青に変わる。車が動き出す。
「まさか……自殺でもする気ですか?」
「ふっ」
不敵な笑みを浮かべた後、車道へと飛び込んだ。
「なっ……!?」
赤石は、走ってきた車のトランクにしがみついた。
「へっへーんだ」
(カーナビの情報を読んでやった……が、そんなことすぐに気付かれるだろうな)
「どこからそんな力が……まあいいわ」
「スーパー……ね」
緑髪の女性は、ツインテールを揺らしながらスーパーへと向かった。