Ep6:SFG
百瀬ちゃーん!
エレベーターで地下二階へと降りていく。
「麻耶さん……」
「……」
ブラックは沈黙している。
「……ブラックさん?」
「はい、なんでしょうか」
なんで……そう言いかけた赤石は、周囲を見回して気づく。
(防犯カメラか、徹底してるな……)
「二人きりの時はって、これもアウトなんだな」
「当たり前じゃないですか」
ブラックとの距離が縮まっているのかわからず、少々不安な赤石であった。
『ウィーーン』
エレベーターのドアが開く。そこは白を基調とした会議室のような部屋で、資料が乱雑に置かれてある。
「おっ帰りー!」
グレーのパジャマを着ている女性がブラックに飛びかかる。しかし、ブラックはこれを見透かしていたかのようにテレポートした。
「ちょっとブラックちゃん!危ないじゃないの!」
長い茶髪を揺らしながら、女性はブスっとなった。
「何故どいてはいけないのですか……」
「アタシがハグするためだよー!」
「で、今回の対象はコイツですか」
「ガン無視!?」
ブラックの右手には、紙の束が握られていた。
「ふむふむ……」
「麻耶さ……ブラックさん、ちょっと見せてくれないか?」
ブラックの目つきが鋭くなる。
「ひっ……」
恐れおののきつつも、赤石は資料を見ようとした。しかし、
「ちょっとムカデジャケット、何見ようとしてんのよ」
パジャマ姿の女性に肩を掴まれる。
「え?」
「『え?』じゃないわよ、何勝手に機密事項を見ようとしてるのって言ってるの」
「百瀬ちゃん、その人は私たちの仲間よ」
「……えぇ!?」
百瀬と呼ばれた女性は、大口を開けていた。
理解できない、といった表情をしている。
「百瀬ちゃん、実はね……」
「へぇ……じゃあ、そのムカデジャケットも能力を持ってるの?」
「へ、能力?」
「え……持ってないの?ここはSFGよ?」
「SFG?」
「……ブラックちゃん、まさか……」
「……説明し忘れてました」
『SFG』
正式名称:SecretFlowerGarden(秘密の花園)
構成員:ほぼ全員が超能力者
仕事内容:汚れ仕事・裏仕事など
報酬:破格
扱い:存在していない事になっている
宿舎:小さい
「……へぇー」
赤石は説明資料を見て感心していた。
特に給料について、である。
「分かった?ここでは超能力がないと価値がないの」
「俺の能力……」
「……まさか」
「いや、あるにはあるんだが……」
「なんなの?勿体ぶらずにさ!」
「『視る』能力なんだ」
「……」
「そんなガッカリしなくていいじゃないか!」
「……」
「ブラックまで何だよ!」
「……具体的には何ができるの」
「例えば……」
パジャマの女性は説明しようとする赤石を止め、ブラックに指を指した。
「ブラックちゃんから見てみなさいよ」
「百瀬ちゃん……?」
「……何も言うなよ?」
赤石はブラックの肩に手を乗せた。
「ひゃあ!?」
「私のブラックちゃんに何してるの!」
「お前がやれって言ったんだよ」
「あなたのじゃないですけどね」
「……よし、更新されたな」
「……なにがですか?」
「そんなことより早く披露してよ!ヒマ!」
「……名前は……伏せておくけど、能力は『テレポート』心拍数は63毎/分、身長は153cm体重は」
「赤石さん」
「すいませんでした」
「ホントにそれだけなの……」
百瀬は明らかな落胆の表情を見せる。
肩をガクッと下げ、うなだれていた。
「そんな落ち込まなくても……」
「だってぇ、ブラックちゃんが連れこんだ人だよ!?なにか特別なものがあると思ってもいいじゃん!」
「連れこんだって……」
「百瀬ちゃん」
「なによぉ……」
「彼は……赤石さんは、強いです」
「ブラックちゃん……何の話?」
「……」
少しの間、沈黙が流れた。
「……なぁ、ブラック」
「どうしましたか?」
「その……いや、なんでもない」
「?変な人ですね」
ここで質問するのは無粋だと、赤石は思った。
(麻耶さん……って呼べる時にでも聞いてみよう)
character of this story
名前:赤石 映司(Eiji Akaishi)
性別:♂
外見:黒が混じった茶髪。赤いジャケットを着ている
性格:少し疑り深い
能力:『スキャン』と呼ばれる、対象の情報を視る能力。視ることができるのは、記録されている情報と、対象に触れた時に追加される情報のみ。一度視た情報は触れずとも視ることができる模様。