速達配達人 ポストアタッカー 雨の配送
雨が降り注ぐ空に、ため息をついて局分け分の配送に走る。
ロンド郵便局は、1市3町が管轄だ。
一番大きいロンドが周辺3町分をとりまとめ、隣市デリー本局と相互配送する。
町と町を繋ぐ荒野の一応国道は、もちろん舗装などあるわけも無い。
ただそこには地雷が残っていないので安全な道という保証だけだ。
昼間気温の高い中、雨具を使うと蒸すし、水漏れ激しいしで最高に気分が悪い。
バシャンと泥水跳ねて、なぜかしゃべる愛馬のビッグベンがスピードを落とし顔を上げた。
「ブフッ!にんじん!にんじん!にんじん!」
びしょ濡れになりながら、呪詛のようにつぶやく。
「あとはミルドの局に行ったら終わりだ、我慢しろ。」
「お願いします、御主人様と言え!」
「黙って走れ!御主人様!くそったれ!」
ベンが、ブフーッと鼻息はいてまた走り始める。
「俺だって、気持ち悪いんだ、くっそーーー!!
雨具もっといいの買え!もうびしょ濡れだ、クソ郵便局!」
舌噛みそうになりながら、空に叫ぶ。
やっとミルドの町が遠くに見えた時、信じられない。
こんな天気の悪い日にオッサン2人が追いかけてきた。
「マジか!バカじゃね?!」
パンパンッ!
何考えてるのか撃ってくる。
頭をひょいと左にやると、右耳の横を弾が空を切って走った。
「止まれ!止まらんと撃つぞ!」
止まるか馬鹿野郎、俺は早く帰りたいんだ。
「ベン、やるぞ」
「おお!」
馬の足音が左右に分かれ、挟み撃ちとばかりにスピードを上げてくる。
手綱を引いて、一気にベンのスピードを落とした。
「うおっ!」
「なにっ?!」
男達の間をすり抜け、後ろに抜ける。
背の刀を抜き、電撃のレベルを最高に上げて、ベンを右の馬に寄せて男を峰打ちする。
「ギャッ!」
男が悲鳴を上げ、全身を緊張させて馬から転げ落ちた。
ずぶ濡れの中、電撃受けたらどうなるかなんて知らない。
馬も多少刺激が来たのか、男を振り落とすと驚いて走り去ってしまった。
とっさに焦って左の男が銃を撃つ。
サトミが右に身体を倒し、弾を避けて男の目の前に切っ先を向ける。
「いっ!」
「首を落とされたいか、俺は今最高に機嫌が悪い!」
器用に並んで走りながら、喉に刃先が触れそうで触れない。
男は身動き取れずに思わず銃を落とし、両手を挙げて馬を止めた。
刀を背にもどし、ベンのスピードを上げ男達を置いて先を急ぐ。
男達はただ雨に濡れながら、呆然とサトミを見送った。
ミルド郵便局に着いて、荷物を渡し、ロンドへの荷物を受け取る。
いつも小さい袋なのに、こう言う天気の悪い時ほど荷物が多いという。
「なんだこれ、くそデカい!デリーに明日指定か。」
「ごめんねー、おじいちゃんがデリーの孫にお誕生日のお祝いなんだって。」
「ちぇっ、それじゃ仕方ねえ。孫かー、爺さん大変だなー。」
まったくついてない、でも孫なら仕方ない。
料金高いのによくやる。
冷たい缶コーヒーおごりで貰って、ホッと一息ついた。
刀出したので、雨具ズレてあいつらのせいで背中もズボンまでびっちょりだ。
もう、雨具着ててもあまり意味が無い。
頭をタオルでふいて、どんよりした空見上げてため息が出る。
ベンの機嫌取りに、ニンジンやったらひどく不機嫌そうにかじった。
「殺さなかったな」
「まあな、オッサン達も金に困ってんだろうさ」
ベンが馬のくせに二ヒヒと笑う。
雨が少し小ぶりになった。
「ラッキー、このまま上がればいいな。よし、帰ろうぜ、ベン。
どっかの爺さんの孫へのプレゼント、濡らさないようにしないとな。」
「帰ったら、洗う。ケツが悪い」
「了解、ベン。ちゃんと洗ってやるよ、もうひと頑張りな。」
雨具を直して、荷物が濡れないか再度確認してミルドを出る。
次第に明るくなって行く空の下、あの男達の姿はもう無かった。
はじめましての方、はじめまして。
少年物、アクション書きのLLXと申します。
ポストアタッカー(旧作)は、10年ほど前に書いた物ですが、6月にこちらで連載した物です。
今執筆中の、近々新作を連載する予定です。
旧作から一新して、設定も少し変化がありますが新規で書き起こします。
その前に、思い出して頂こうかと、知らない方に知って頂こうかと短編を用意しました。
どうぞよろしく、よろしくお願いします。