魔法陣は先人の知恵
「じゃあ、君はファイヤーボールを僕に向かって撃ってくれ。他のみんなは彼の体の中をどのように魔力が動いていくかをよく見ていてくれよ」
「先生に撃っても構わないんですか?」
「ファイヤーボールぐらい至近距離で喰らってもどうって事ない」
「わかりました。では、撃たせてもらいます。ファイヤーボール!」
僕の身体にしっかり当たった。
至近距離だ。
外れるわけはない。
「見たかい?彼がファイヤーボールを撃つ前の魔力の動きを」
皆、頷いた。
「魔法陣と見比べてみようか。魔力の動きが正確に一本の線で書かれているのがわかるよね?」
「確かに、今見た動きそのものです!」
「第2層と第4層には、属性、流す魔力の量、打ち出す魔術の威力、魔力を流すスピードが書かれている。ただ、これは古代文字で書かれているため、現時点で君達には説明出来ない。さて、ここで問題だ。これだけの情報があれば魔術は構築できると思うかい?」
皆、考え出した。
この答えを正確に理解しているのは、このクラスではモニカ殿下だけだろう。
「できると思う人は手を上げて」
24人中17人。
「できないと思う人は手を上げて」
7人。
「じゃあ、モニカさん。できない理由を答えてください」
「魔術を形作るイメージが魔法陣の中では表現されていません。従ってこれだけでは魔術を構築できないと思います」
「みんなはどう思う?」
「確かにこれだけでは形が定まらないですね」
「そう。イメージが足りない。ところが、このイメージを魔法陣にあらわそうと思ったら大きな困難がある。情報量が莫大になるんだ」
「それは、立体を平面上に表そうとするからですか?」
先程のファイヤーボールを撃った男子生徒だ。
「その通り。君はかなり頭が良いようだね。だから先人は魔法陣の中には魔術のイメージを書き写す事は諦めた」
「じゃあ、どうやって」
「慌てるな。これから説明するんだから。君達は、おとぎ話の類で付与魔術というものを聞いたことがあると思う。アイスドラゴンを倒す為に、剣に炎の魔術を付与した伝説とかあるだろ?要は、付与魔術の一種でイメージを固定化するんだ。と言ってもこれは頭の中にイメージしながら魔力を流し込むだけなんだがな」
「自分の魔力を流し込むって、どうやるんですか?」
「やり方は2通り。自分の意思で流し込むやり方と、魔法陣に吸わせるやり方だ。自分の意思で流し込むやり方は自分で魔力を操れる事が出来ないといけない。逆に言えばそれさえできれば、やり方もクソもない。流そうと思えば流れる」
「魔法陣に吸わせるやり方はどうなんですか?」
「これは魔力を自分で扱えない人のやり方だ。魔法陣を書く時には魔物の血を混ぜたインクで書く。その為、魔法陣自体が魔力を持っているんだ。だから、イメージしながら手を魔法陣に置くと魔力を勝手に吸い込むのさ」




