痛くも痒くもない
僕はゆっくりと振り返り、ギルド長に背を向け歩き出した。
「ファイヤーランス!」
欲しかった二度目の攻撃だ。
正直な話、単に攻撃されただけでは大した金額を巻き上げることはできないと思っていた。
と言うか、彼らの積み重ねてきた罪ももはや躊躇することなく罰することができる状況になったので、三国は間違いなく損害賠償を求めるだろう。
帝国の法律では、先に発生した損害賠償の請求権に優先権があるらしい。
だとすると、僕らが攻撃された事に対する賠償請求は、三国が毟り取った後からとなる。
魔術師ギルドがどれほど溜め込んでいるか知らないが、三国のおそらくは容赦無い請求の後でどれほど残っているだろうか。
三国の王は見てるだけだ。
別にそれを悪いとは言わないが、こっちは知恵を絞って奴らに相対してるわけだ。
それなのに、三国の後で雀の涙ほどの賠償を貰って良しとするのか?
得にならない喧嘩ほど馬鹿げたことはない。
だから、商取引を絡めた。
法律を弄って取引に不誠実な対応をした相手に無制限に賠償を請求出来るようにした上で。
勿論、このままでは意味が無い。
請求時点で魔術師ギルドが資力を無くしているだろうことは変わりないからだ。
だから、もう一つ法律を弄った。
請求権が構成員及びその相続人に及ぶように。
サンダーランドの王家と裏で連絡を取り合っていたというのはロイターからの情報でわかっていた。
ただ、ロイターの推測では構成員の中にサンダーランドの貴族の子弟が何人かいるだろうとのことだった。
それなら多少その貴族から巻き上げることができそうだと思っていた。
実際には国王の五男だったがね。
思いもよらぬボーナスステージが待っていたな。
さて、ギルド長の最大火力の魔術がファイヤーランスだと言うことは勿論把握していた。
魔法陣のファイヤーランスなんか、たとえ直撃したとしてもHPは10%も減らない。
魔術の研究では時に自分の身をもって威力を確かめることもある。
必然的にみな高い魔術耐性を持ってしまうのだ。
ここで、僕には三つの選択肢があった。
一つ目は、先程と同じように彼らの魔力の流れを邪魔して腕を爆発させること。
これは、義手がもったいないので却下。
できれば分かりやすく攻撃された事実も欲しかった。
二つ目は自分の周りに魔力障壁を張ること。
これだとダメージは0だ。
だが、攻撃を予期していたようであまり印象が良く無いだろう。
僕はファイヤーランスを受けることにした。
ただ、いくらHPがそれほど減らないとは言えダメージが無いわけではないし、至近距離からのファイヤーランスなら、多少僕の身体もグラつくだろう。
だから全身に魔力を高速でくまなく流し、可能な限り身体を活性化させて、身体能力を高めてみた。
これなら、グラつきもしないだろうから。
予想どおり、ギルド長のファイヤーランスは僕に直撃したものの、僕の体はグラつくことさえなかった。




