身勝手、ケチ、それでも組織のトップなのか
「この義手なら今までと同じように日常生活も送れるし魔術も使える。君が更生すると言うのなら特別に安価で、そうだな王貨1枚で譲ろうじゃないか」
正直破格だろう。
自分の手とほぼ同様に、魔力の扱いに長けていればそれ以上に器用に動かせる手がたったの王貨1枚だ。
「……わかった。今、持ち合わせは無いが必ず届けよう」
「領収書の宛名は?」
「魔術師ギルドだ」
こいつ、自分の分だけで良いのか?
周りには同じように手を失った仲間がいるんだぞ。
まず、いくつ確保できるのか聞くのが筋じゃ無いか。
それがトップに立つ者の義務だろう。
しかも魔術師ギルドの経費から出そうってか……。
とことんクズだが、こちらの欲しい回答ではあった。
これでもしこいつ個人で買うと言ったら、なんとかして魔術師ギルドで買うように誘導する必要があったからな。
もっともロイター情報では、かなりのケチだとは聞いていたので、決して高くは無いが自腹で購入するのを躊躇うような金額にしたつもりだがな。
彼ならおそらく自腹は回避するだろうという金額が王貨1枚だったわけだ。
ここまでの作戦において、ロイターの情報は本当に役に立っている。
まさに「百戦危うからず」だ。
僕は収納魔術でしまってある義手を取り出した。
小さくて純度の高いポイズンビーの魔石を二つ組み込んであるので、魔力をロクに扱えない人間でもそれなりには使えるはずだ。
僕はギルド長の捕縛を一度解くことにした。
捕縛を解かなきゃ義手をはめてあげるのも手間だからね。
「どうだい?自分の手ほどとはいかないが、それほど不自由も無いだろう?」
「確かに……」
そして、この時のために開発した魔術を使う。
念話だ。
『せいぜい頑張って見習い魔術師程度にはなってくれたまえ。魔術師ごっこのミスター320ちゃん』
勿論、ここで煽らなくても僕たちの望んでいた方向に行く確率は9割を超えると思う。
だけど、限りなく10割に近づけたいからね。
何故念話かって?
それは勿論、自分のイメージがあるじゃない。
煽られたからって攻撃したら、そりゃ攻撃した方が悪いって事にはなるよ。
でも、煽った方も決して良くは言われないからね。
「なんだと!」
「え、僕は何も言ってないですよ」
「どうしました?」
ロイターが周りを見回す。
皆、一様に首を振る。
わざとらしいまでの三文芝居だ。
僕は敢えて口を固く結んで、ギルド長に顔を少しだけ近づける。
しっかりとギルド長の目を見据える。
『幻聴が聞こえるとは、もう耄碌したのか?頭を使わないとボケるのも早いんだな』
ギルド長の目つきが更に険しくなった。




