~地球へpart6~
「ここよ!」
アマテラスが最後に来たい場所があるというので最後はアマテラスの転移に付いてきた。もう日も大分落ちてきている。現在は午後五時過ぎぐらいだ。アマテラスが連れてきた場所というのが···。
「ここは···温泉街?」
ここは見覚えがある、テレビで何回か取り上げられていた有名な温泉街だ。温泉街のいたるところから温泉とみられる煙が上がっている。さらに温泉の成分からなのか、かすかに硫黄の香りがする。
「やっぱり日本に来たら温泉よね~、私降りたら絶対温泉には入るようにしているのよ」
「ここって結構有名なところなんだよな、確か美容とか外傷にいいんだっけ」
「そんなのどうでもいいから早く入りに行きましょう?予約してあるのよ?」
「よ、予約?」
「さぁ早く!」
「お、おう」
アマテラスはこれまで以上にはしゃいでいる。俺の手を取り目的地へ走っているほどだ。アマテラスの手はこの寒さの中でも温かい。確かアマテラスって日本神話でも太陽の女神って事になってたし、初対面で戦った時にも攻撃は炎の攻撃だった気がする。外気の温度と違い、温かいアマテラスの手を意識してしまう。
「······」
アマテラスも無意識に手を握ってしまった事に驚き照れているのか顔を赤くしている。が、手を離そうとせず、むしろぎゅっと手を強く握ってきた。
(わ、私なんでこんな事を···)
(無心だ無心······手あったけーなー)
そんなこんなで数分アマテラスに連れられてふとアマテラスが足を止める。
「ここよ!」
目の前にあったはのは···和風の大きな建物だった。
『旅館 天草』
「旅館か···」
「だって『でぇと』のラストは宿なのでしょう?ちゃんと予約もしてあるわよ!」
「えぇ···言っておくけど意味は分かってるのか?」
「うん?どういう事よ?」
「···連れ込み宿ってことだよ」
「···!!?」
俺のその一言でアマテラスはこれまでで一番顔を赤らめている、耳まで真っ赤だ。
「わっ···私···そっ、そんなつもりじゃ」
「そりゃそうだ、なら諦めるか」
「で、でも···も、もう予約しちゃったし!···お金ももったいないから···」
「え···」
「か、勘違いしないでよね?これはお金!そうお金のためだから!」
「お、おう」
アマテラスのその勢いに負け、俺達は旅館の中に入って行く。どんだけ守銭奴なんだよ···。
中に入り受付へと向かう。
「いらっしゃいませ、ご予約ですか?」
「うん······
アマテラスはチェックインを済ませていく、している途中思ったのが···まだ手をつないでいることだ。なんか手をつないでいることに違和感が無くなってくる。恋人でもないのに。
「だ、だから混浴は必要ないわよ?」
「かしこまりました、必要になりましたらいつでも従業員にお申し付けください」
従業員は部屋のキーを渡してくる。
「部屋までのご案内は必要ですか?」
「大丈夫よ」
「分かりました、部屋はここから離れにあります、特別室になります。食事はご希望通り八時頃にお持ちします」
俺達はそのまま手をつないだまま特別室へ向かっている。
「なぁ、いつまでこうしてるんだ?」
「ん?『こう』って?」
「いつまで手をつないでいるんだ?」
「···うぇっ?······!!?」
アマテラスはその声を聞き勢いよく手を放す。
「あ、あんたいつまで手握ってんのよ!?」
「い、いやアマテラスが一向に離そうとしなかったからであって」
「······そ、そんな訳···」
アマテラスは自分が無意識のうちに手を強く握っていた事に気が付いた。そして気が付いた。『従業員が混浴を勧めてきたのは手をつないでいたせい。恋人と見られていたせい』だと。
「う、うにゃぁぁぁぁ···」
「うおっ」
アマテラスは離れの特別室の扉の前にたどり着くとぼっと頭から煙を吹き出しその場にしゃがみこんでしまった。今日はアマテラス走ったりしゃがんだり顔を赤くしたり大変だな。
「ほら、早く入るぞ」
「ひゃうん!?」
アマテラスの肩をさすろうと肩を触るとアマテラスは肩をビクンと振るわせ、普段聞いたことのないような声を出した。
「···そ、そのすまん」
「···も、もう···こいつ···いいわよ!行くわよ!」
アマテラスはガチャと鍵を開け部屋に入って行った。
「···なんなんだ?」
俺もそれを見て部屋に入る。
「広いわね!」
アマテラスは子供のように部屋を見回っている。部屋は和室のようだ。部屋は大きな黒いローテーブルに座椅子が二つ備え付けられている。部屋はここ以外にもあり、もう一つの部屋はこたつが設置されている。アマテラスはこたつのスイッチを付けてぐだっとしている。いまやっと気づいたけどこれって二人とも同じ部屋で寝るってことかぁ···。
アマテラスはそんなことは露知らず、だらーっとしている。
もう一つ驚いたことが一つ、特別室という事もあってかこの部屋専用の温泉があった。これなら朝早くに入ってもいいかもなぁ。
「アマテラス、この部屋専用の温泉あったぞ」
「んゆ?へぇ···なら大浴場行ってご飯食べた後にでも入るわ」
「そろそろ大浴場行かないか?飯の時間もあるし、一日中動き回って汗もかいただろうし」
「そうね、行きましょうか」
部屋にあった風呂セットとそれぞれの浴衣を持ち大浴場へ向かった。
アマテラスがツンデレデレデレみたいになっとる···。