~地球へpart3~
久し振りに見た両親の姿。父親の姿は俺の記憶にある父さんの姿と違い一回り痩せているように見える。母さんも同様だ。
「もう随分経ったな···メイジ」
「向こう側では元気にしているのかしらね···」
二人の言葉には心なしか力が無い。気が抜けているようだ。
俺はそんな二人の目の前にそっと書いた手紙を前に置いた。
「な、なんだ?さっきまでこんなものあったか?」
「いえ、無かった筈···」
父さんが俺の置いた手紙を拾った。父さんは封を開け手紙を取り出す。
「め、名人から?」
「悪戯なの?」
「一応内容を見てみよう」
父さんと母さんは二人して手紙を見ている。俺はその様子を見ている事しか出来ない。見ている事しか出来ないのはとても辛い。
「あ、ああ···」
「名人?ほ、本物なの?」
手紙に書いたのは本人と信じてもらうために書いた内容、更に近況を書いておいた。内容が内容なだけに信じてもらえないかもだけど。
「ホントに名人が書いたのか?」
「でも、名人しか知らない事が書かれているのよ?」
「それに、いせかいてんい?なんだろう?よくわからないが名人は生きているって事なのか?」
「生きているから手紙も書けたし此処に届けられたんじゃないんですか?」
「届けた?ってことは名人は此処にいるんじゃないか?」
「魔法を使えるようになったって書いてありますし···」
「め、名人?居るのか?」
話は出来ない。この声に答えることは出来ない。だけど···。
俺は2人の肩をチョンと触った。
「「!!」」
「い、今感触が···」
「あぁ···居るんだな名人···」
父さんと母さんは俺の存在に気づいてくれた。それだけなのに···とても嬉しい。
「はは···名人、お前がいなくなってから私達はこのザマだ。痩せているだろう?」
「私達にとって貴方は唯一の子供だったから···」
母さんは涙を浮かべている、本当に信じてもらえたようだ。
「お前が成長してきて思ったのは本当に父さんの子供なのかってことだ」
「うえっ!?」
こ、声が思わず出てしまった。こ、これは会話じゃないよな···?しかしとんでもない事を言ったな···。
「ふふふっ···だってあなたの顔があまりに父さんと私とかけ離れてるんですもの···」
「父さんよりイケメンになりやがって···」
「名人は自覚をしなかったんですよねぇ···」
「あぁ、困った奴だよ···」
思い出話が続く。中には俺が知らない事まであり、驚きもあった。
「おっと、そう言えば名人には恋人が出来たんだったな」
「おめでたいわねぇ、大切にするのよ?」
了解とばかりに2人の肩をチョンと触る。
「まぁいつか連れてきて欲しいものだな」
「そうねぇ何人連れてくるのやら···」
連れてこれるだろうか···、ここに来れるのはアマテラスのお陰だ。1回に来れる時間は24時間と言っていた。だが次にいつ行けるかは分からない。
「さて、ここまでにしようか」
「えぇ、そうね女の子を待たせているみたいだしね···」
「名人とその女の子の為にも私達が邪魔をしてはいけないな」
「ええ、名人が生きていると知れて元気が出たわ。もう大丈夫よ?」
「あぁ、そろそろお別れにしよう」
「ふふ、なら今夜は頑張りますか?景気づけに1発?」
「おっ、お前···子供の前でなんて事を···」
「いいじゃない、ほら名人行きなさい邪魔よ?こここらは夫婦の時間よ?」
こりゃたまらん、親の情事なんて見てたまるか。俺は少々後ろ髪を引かれながらも家から出た。
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sideメイジ両親
「行ったかな?」
「ええ多分、今でも少々信じられませんがさっきまで名人は此処にいました」
「名人に情けない姿を見られてしまったな···」
「ふふふ、なら私達も頑張らないと行けませんね···?」
「お、おいその頑張るというのはどういう事なんだ?」
「ふふふ···弟か妹を作りましょう?」
「···」
色々と頑張る2人であった。