~スタンピードの恐れ~
俺はのじゃロリに連れられて応接室に着いた。
のじゃロリは応接室にあるソファに腰掛けた。
「まぁ、座るのじゃ」
「・・・はい」
憂鬱だ憂鬱過ぎる。この人何か強い人らしいし何を聞かれるか分かったもんじゃない・・・。
『何か聞かれたら『迷い人』ということにして下さい。私が転生させた異世界人には身分を聞かれたらそう言えと言っています。』
『迷い人』か便利な言葉だな。
『時々この世界に、時空の壁が開いて異世界の人が迷い込むんですね。この世界ではその人々のことを『迷い人』と呼ぶのであなた達もそういうことにしました。・・・まぁメイジさんは他の迷い人よりもすっごいカッコイイのでスーパー迷い人ですね!』
スーパー○イヤ人見たいに言わないでくれ・・・何かすっごい恥ずかしいから。
っと言うかさっきからのじゃロリが無言なんだが・・・
「あのお話って・・・」
「・・・」
「あのー・・・」
「・・・っ!」
「何か「うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!負けたのじゃぁぁぁぁぁぁぁ!」!?」
のじゃロリはソファの上で暴れだした。
「なんじゃ!なんでじゃあ!こんな若造にぃぃぃ!」
「ちょ落ち着「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!」」
(さっきとのギャップが凄いな)
のじゃロリババァが喚いている。こう見ると駄々をこねている只の子供のようだ。実際は259歳のババァだが・・・。
一向に収まりそうにないのでテーブルの上にあったクッキーを駄々をこねているのじゃロリババァの口に無理やり入れる。
「ングッ!?・・・ングッ・・・もきゅもきゅ」
何か凄くエロティックなことをしているような気がする。
『私もアーンなんてしてもらってないのにぃー!今度下界に降りてアーンしてもらうー!』
下界に降りるってアンタ神だろ・・・安々とこっちに来れるなんて無理だろ・・・
『メイジさん今下界に降りるなんて無理だろって考えてますね・・・?ふふふ・・・今年は秘策があるんですよ・・・楽しみにしててくださいね・・・』
何か合法的にこっちに来られる方法がありそうだな・・・後で他の女神様に聞いてみるか。
「・・・ゴックン・・・お主!いきなりなんじゃ!ワシに無理やり入れおって!」
その言い方だと色々問題があるな。
「あなたが幼児見たいに駄々こねてたからですよ。」
「ムキー!幼児ってなんじゃ幼児って!ワシはこう見えてもお主の年上!259歳じゃぞ!敬え!」
敬えって自分で言うなよ・・・と言う声は心に閉まっておく。
「・・・ふん・・・まぁお主みたいな年下の非常識な行動を許すのも年上としての然るべき行動じゃな・・・よし許す!」
ものすごく上から目線なんですがそれは・・・このままだと話が進まないので黙っておくことにする。
「それで···お話とは何でしょう?」
「うむ···お主の事なんじゃがな···お主『迷い人』じゃろう?最近多くの冒険者ギルドで『迷い人』を名乗る強者が増えておるのじゃ」
他の転移者だな···強いのはアメリアさんがギフトを与えたからだろう。
「はい···俺は『迷い人』です。」
「やはりそうかうちの冒険者ギルドにも『迷い人』が他にもいてのぉ、まぁそヤツはワシがコテンパンにしてやったがな」
ここには他の転移者もいるのか、なるべく敵対しないで友好的にしたいな。その後話を聞いた所その転移者は男で黒髪黒目で登録年齢は17歳らしい。名前を『トモヤ』らしい。俺と同じクラスメイトで話したことが無いが、俺と同じラノベ厨であることは分かっている。見た目はメガネを掛けたヒョロ男だ。
「それでお主が倒したエルダー・スパイダーだがの、あの森には存在しないモンスターなんじゃ」
「やっぱりそうか···最初はビック・スパイダーが出てきたと思ったんだが···」
「今回のことにより薬草クエストはしばらく中止じゃ、初心者にエルダー・スパイダーの出る森に行かせられん。」
薬草クエストは森の調査が終わるまで中止らしい。幸い俺が持ってきた大量の薬草があればしばらくは持つらしい。
「それで···ギルマスさんはあの森で何が起こっていると推測する?」
「考えるとすれば···『スタンピード』じゃな、スタンピードが起こるなら予兆なら普段出現しない魔物も出てくるのも納得いくの。」
スタンピードとはこっちの世界で『魔物暴走』のことらしい。いつ起こるかは予測出来ず、予兆は普段出現しない魔物が出てくること、植物の成長、増殖が早まることがあるとの事だ。
「その事でお主に依頼がある···森の調査をしてはくれぬか?本気を出してはおらぬとはいえワシに勝ったのじゃからな···報酬は30000アル出そう。」
「それは俺に対する指名依頼という事ですか?」
「そうじゃ···本当は指名依頼はBランクからしか出来ないんじゃが···おぉ!そうじゃ試験の結果を言うのを忘れておった!お主はCランクにランクアップすることになるのじゃ!」
FからCにランクアップか、物凄い飛び級だな。てか指名依頼って受けなきゃいけないのか?断って大丈夫なのか?
のじゃロリに話を聞くと、指名依頼をするのは基本的にギルド、商会、貴族らしい。断ると依頼人の心象が悪くなり立場が悪くなる。指名依頼されたら一般的に断らないらしい。
今回の指名依頼は特別措置らしい、経験は少ないが実力はBランクの魔物を単独撃破し、試験ではあるが模擬戦で自称本気ではない元Sランクのギルマスを倒した俺は問題ないとの事だ。
「って言うかの、これがCランクアップ試験の一貫だと思うのじゃ、これを受けなくてはCランクにはしないからの。」
これ殆ど脅しみたいなもんじゃないか。Fランクだとクエストも簡単過ぎて報奨金も低すぎて困っていた頃だ。アメリアさんに貰った初期資金があるが、それに頼りすぎるのは何か嫌だ。アメリアさんのヒモ見たいになってるみたいで嫌だ。それに初期資金だって無限じゃない、受ける以外の手はないな。
「分かりました、受けます」
「ふふ···お主ならそう言うと思っていた···そう言えば名乗って無かったなワシこそ魔道四天王の1人、『水王』!『シューン・ローズ』じゃ!偉いんじゃぞ!」
ムフーッと鼻を鳴らしソファの上に立ち上から見下ろしてくるのじゃロリババア。うん、ウザイ。
「あぁ···そうですか、じゃあ俺はこれで···調査には明日向かいます」
「ちょ!少しぐらい驚くぐ・・・」
最近多用している逃走を使用する。
俺は冒険者を出てアステラの街を歩くことにした。この街の土地勘を付けるためにだ。
途中、教会の神官が何か人探しをしているようだった。まさか俺を探しているのか?
『そうですね、間違いなくメイジさんを探していますね···五大女神全員に加護を持った人なんて前例が無いですもの。』
教会で『聖女』と歌われる人でさえ3人の加護でそれも強さは強くて(大)、弱くて(中)らしい。
それなら寵愛を受けている俺は聖女すら超える加護持ちってことか。うん────ごめんなさい聖女さん。立場無くしちゃうかも。
俺は聖女さんへの罪悪感を持ちながら宿への帰路に付いた。
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今回も夢の中でマナさんにレクチャーを受けた。
···アメリアさんの膝枕付きで。
魔力には魔力抵抗というものがあり、のじゃロリババァの魅了を弾いたように自分より魔力が低い者に対して魔力抵抗が発動する。差が大きいほど魔力抵抗が成功する確率が上がる。
魔法にも四種類の属性を同時に発動する『複合魔法』というものがあり例えば【ファイアーボール】と【ウインドトルネード】を組み合わせることによって普通の【ファイアーストーム】より威力が上がるらしい。その代わり使う魔力は増加するが。
無属性魔法については多すぎるので便利な者だけ教えて貰った。
まずは【飛翔】名前の通り空を飛ぶことの出来る魔法だ。
さらに【ワープ】【テレポート】。テレポートは視界内の場所に転移する近距離転移で。ワープは過去にいったことがある場所に転移する長距離転移だ。
その後マナさんにアメリアさんが下界に降りるなどの話をした所。
「···今年は四種族祭がある···その祭りだと毎回私達女神が下界に降りることになっている···」
四種族祭とは四種族が4年に1度毎年開催場所を変え武闘大会や魔術師大会などを行う祭りのようだ。そこで毎回女神様達は祭りの時だけ下界に降りるらしい。
祭りは1ヶ月後らしい。場所は人族の王都だ。
そんなこんなで時間が来てしまい。俺はアメリアさんに見送られながら、目を閉じた。
こうして俺はめんどくさい依頼を受けることになった。
のじゃロリババァは人族での強さで5本の指に入ります。




