閑話~最近影の薄いかもしれない全能神との旅行、温泉街編part8~
ソウちゃんと電車に揺られて早十分。夕焼けの中強羅の駅に到着した。人通りも少なくなってきており、外は歩きやすくなっている。ここから旅館までは歩いて五分ぐらい。ということで強羅駅からソウちゃんと二人で歩いてます。山の向こうに夕日が落ちてきている、まぶしいです。
「なんか青春って感じします」
「青春?」
「ほら、夕日のなか手をつなぐ二人……そこから恋に発展して……」
なんか乙女みたいなこと言ってるね。確かに手は繋いでるけど。
「なんか学園モノの修学旅行イベントで主人公とヒロインが急接近するときみたいですね」
「やけに具体的だね、ソウちゃんって結構そういう小説とか漫画とか見てるの?」
「今だからこうやってマスターにべったりですけど普段はあの部屋で世界の維持とかしてますから、その時ちょろっと見てたりしてました」
部屋って俺をソウちゃんが初めて対面した場所か。そういえばあそこには暫く行ってない。基本ソウちゃんは俺の事をみているし、基本いつの間にかそばに出てくるし。今度もっかい行ってみるのもいいかもしれない。
「ほら青春の一枚とりましょう」
ソウちゃんがスマホを取り出し、カメラを起動した。
「はい、チーズ」
いきなりこちらにカメラを向けるので全くポーズとかとってない姿をとられてしまった。
「うげ、見てくださいこれ」
スマホを見せてもらうと明らかに逆光の俺が移っていました。いい景色だと思ってたけど写真に限っては邪魔してますね。
「む、スマホじゃこれが限界ですね、強化しておきましょう」
ソウちゃんはスマホを放り投げたかと思うとスマホは落ちることなく宙に浮いていた。
「これで二人一緒に撮影できますし、カメラも人間の視界と同じ物を保存するようにしておきました」
なんでもあり、それが全能神ですね。
「ほらほら!後で部屋に飾る用にとりますから!笑ってください!」
「こ、こう?」
「ほら!ピース!」
いきなり笑えなんて言われても笑えないよ。
「うーむ、ぎこちない笑いがいい味出してますね」
写真ってよくわかりませんね。
………
……
…
そんなこんなで、目的地の旅館にたどり着きました。日はもうほとんど落ちてきていて、そろそろ完全に日が落ちるだろう。
「じゃあ、チェックインしますよ」
と言って一人でチェックインを済ませてきてしまった。ほんとにリードされっぱなしていいのかね。
「普通なら客室まで案内されるみたいなんですけど、少しでも二人きりの時間を増やしたいので鍵だけもらってきました」
とカードキーをもらってきていた。
「夕食は19時に部屋に持ってきてもらえるみたいです」
「今は17時半くらいだから、少し時間あるのか」
「お風呂ですね!それで浴衣に着替えてご飯です!」