~アルケーの婚約大作戦!part74 ~
side リナ
「あっはっはっはっは!これ、きんもちいいですねぇ!」
セシリアの指から次々と『好き好きちゅっちゅラブビーム』という名の石化ビームが飛び出す。先程から防戦一方で防御に魔力を使わずを得なくなっている。
「その氷の壁なんて私とメイジさんの愛の前ではむだなんですよぉ!」
先程から命中すると思われるビームを氷の壁で防ぎ、使い捨てにしている。あのビームを一度でも受けてしまうと私が使っている氷の盾は一撃で使い物にならなくなってしまう。
魔力が足りない。このジリ貧な状況、明らかに不利なのは魔力の限界が来る私の方。
負けるわけにはいかない。ここまで私は他の方に比べてアピールを出来ていたとは言えません。一番接近したのが膝枕でしたが、気持ちが良すぎて記憶が残っていませんし。
故郷の為にも、何としてもメイジさんとの良い関係を結ばなければ……。
………
……
…
リナの出身は異世界の辺境の地だった。家は男爵で、リナはそこの一人娘だった。肩書は一応貴族ではあるが、彼女はパーティなどに出席した経験もほとんどなく、そのほとんどを故郷で過ごしてきた。故郷は辺境の地であったからか、領地は農地が多く、特筆した特産品がなかった。
それでも、領民は彼女の家に対して友好的であったし、家の評判も悪くなかった。子供の頃から、領民の子と一緒に遊び、学び、成長してきた。
領地は安泰で何も問題がないと思われていたが、しばらくして出てきたのが家の跡継ぎの問題だ。
リナの家の子供はリナただ一人、他の跡継ぎはいない。両親も年を取っており、他の子どもも望めない。そして、何より問題だったのがリナが女性だという事だ。
貴族の跡継ぎはほとんどが男性であり、リナの男爵家もそれが当たり前だった。誰かを養子にし、後を継がせようと考えたが、領民に後を継げるような才がある者もおらず、困っていた。
しかし、パーティなどに出席しない為、他の貴族に知られていないが、相当な美人さんである。そして、幸運なことに魔法の才もあった。鍛え、志望すれば宮廷に召し抱えられるほどの才であったが、本人はそれを望まなかった。
今にしては宮廷魔導士になればリナの婿に来る相手もいたように思えた、後悔している。
そんなところに飛び込んできたのがこのパーティという名のメイジと仲良くなろうパーティ。元々メイジの噂は辺境のリナの元にも届くほどではあったが、流石にそれだけでメイジに憧れるわけではなかった。
今回参加を決めたのは社会勉強の面が大きかった。社交を学び、婿となる相手を探す。あわよくば、王家や神との接点の大きいメイジと……とは考えたが、流石にただの理想、そんな事が実現するはずもないし、仮に出来たとしても多くの敵を作るだけだ。
しかし、参加してみて分かった。これ、ただの神の道楽だ。内容がひどい。参加者には私より格の高い貴族や神までまじってる。
これを受けるメイジ様はどんな変態なのだろうかと思ったが、なんとも可哀そうな感じであった。完全に巻き込まれ、という感じであった。
それならすこしでも為になる事をすれば家の為になるのでは?
決して私個人の問題というわけではない。決して保護してお世話したいみたいな欲が湧いたわけではない。
………
……
…
活躍したい……けど決定的な一撃がほしい。しばらくセシリアを動けなくするだけでいいのに。
「ほらほらほら!そろそろきつくなってきたんじゃないですかぁ!」
次々とビームを繰り出すセシリア。
それに対して壁を出して耐える事しかできない。
そして再度セシリアの体に黒い霧がまとわりつく、魔力が回復しているようだ。
「ん~回復していく感覚、素晴らしいですねぇ!」




