~アルケーの婚約大作戦!part39 ~
かぽーん。
「えへへ、二人きりでお風呂なんて久し振りですね」
ここは大浴場。そしてここにはアメリアとメイジの二人きり。この旅館には今現在男は俺一人しかいない、従業員も含めてだ。
俺達は土色に濁った温泉に入っている。そのおかげでアメリアの体をすべて直視せずに済んでいる。
「なーに恥ずかしがっているんですか。もう何度も見たじゃないですか」
「何度も見たとは言っても……」
メイジはアメリアの方をしっかりと向く事が出来ない。
「こっちを向いてくれないのなら私から無理やり視界に入っちゃいますからね」
アメリアは座っているメイジの真正面に移動し、そのままメイジに抱き着く。
「ちょちょっと?」
「メイジさんと密着するとやっぱり落ち着きますね」
メイジに伝わるアメリアの体の感触。温泉も相まって、体が熱くなっていく。
「メイジさん、好きですよ」
アメリアは抱き着く力を強くし、耳元でそう言った。
「うん、俺も大好きだ」
その言葉を聞いたアメリアはメイジの顔を真っ直ぐ見つめ、はにかむような笑顔をメイジに見せた。
「体がほてってきちゃいました。私そろそろ上がりますね」
「うん、俺はもうちょっと入ってようかな」
アメリアは立ち上げると、体を隠すこともせず、温泉から出る。
「あ、メイジさん」
「あぁ、続きは最後……か?」
「はい、そうです!二人きりですからね!今日だけは絶対に二人ですからね!」
アメリアはぺたぺたと足音を立てて温泉を後にした。
………
……
…
アメリアが戻って数分後。メイジはまだこの温泉を楽しんでいた。この温泉の効能は疲労回復、健康増進などが書かれているが。その下に。
『☼アマテラス特製温泉効果☼
魔力回復 精神回復 体力回復 性欲向上 天照大神への信仰増加』
あ、はい。この温泉に入ってたらちょっとやばそうなので出よう。性欲向上とか目茶苦茶怖いし。
『や、やばいって何よ。失礼ね』
と、風呂を出ようとしたところで脳内にアマテラスの声が響く。
「アマテラスか。どうしてここに来ないんだ?」
『い、今貴方達の邪魔をしたくなかっただけよ』
「気を使ってくれたのか。ありがとう」
『……ふん………………それで?この旅館については……?』
響いてくる声は、なんとも恥ずかしそうである。
「あぁ、今度また二人きり……かな?」
『…………うん』
今日はそれっきりアマテラスの声が聞こえる事は無かった。