閑話~学校パロディ13~
「……?」
「ちょっと、聞いてるの?」
「い、いえ。えっとはい。有村名人ですけど」
正座をしている金髪の女子生徒。その眼はしっかりと名人を睨みつけており、思わず名人の背筋が伸びる。
「ふぅん、こんな不法侵入するあんたが?」
「い、いやこれは不可抗力で!今すぐ出るから!」
と、名人はドアノブに手をかけたが。
『名人様はどこにいらっしゃるのかしら!』
『どこかの教室にかしら!?』
外には明らかに名人を追っている生徒達の声が。
これは今出たら確実に掴まるやつ。
名人のドアノブを回す手が止まる。
「仕方がないわね」
そう言って金髪の女子生徒は何かをこちらに投げ渡してくる。名人がそれを受け取ると、それは和室と書かれたタグのついたカギだった。
「彼女達をここに入れるわけにはいかないわ。鍵を閉めなさい」
「すみません」
メイジは鍵を使いドアにカギを掛けた。
「ありがとうございます」
「いいわ、少しアンタとも話してみたかったし、こっちに来なさい。勿論靴は脱ぎなさいよ」
名人は招かれるがままに靴を脱いで畳に上がる。
(ふぅん、とりあえず顔はすんごいのね)
金髪の女子学生はジロジロと名人の顔を見ている。
「あの……なにか?」
「あぁ、そのね?あんた顔は良いのに中身は残念そうだなって」
「中身……って、顔もそんなにいい方じゃない筈だと思うけど」
「……?あんた何言ってるの?」
女子生徒は心底訳が分からないといった表情でこちらを見ている。
「あなた、超イケメンよ?少なくとも私がこれまで見たことある全ての男でね?」
「……冗談でしょ?」
「なんで初対面の私があなたにそんな冗談かますのよ」
「えぇ?」
「あなた、鏡を見た事があるの?」
「鏡?」
「えぇ!かがみよ、かがみ!普段の生活で貴方も見るでしょ?」
この有村名人。高校二年生になるが『これまで鏡を見たことがない』いや、正しくは『見ようとしてこなかった』が正しい。記憶はないが子供の頃は普通にしていたらしいが、幼稚園の頃の同級生にいきなり避け始められたらしい。それを名人は自分の顔だと断定。そこから名人は自分の顔を見なくなったらしい。
これを女子生徒に話したところ。
「あなた、馬鹿ね」
「いや、自分でもそう思うけどもう習慣づいちゃって。やめられないんだ」
「そんな話をなんで私にしたのよ」
「いや、聞いてきたから」
「そんな踏み入った話をしろとは言ったつもりはないのだけれど。ごめんなさい」
「俺が良いと思っただけだから」
そういうと女子生徒はため息を付く。
「やっぱり貴方、中身は残念ね」
「そ、そうですか」
「まぁ、自分の容姿を鼻にかけて調子に乗ってる奴よりはマシだから安心してちょうだい」
「うれしくないなぁ」
「あら?褒めてるつもりよ?」
そうして女子生徒と話していると、始業五分前を告げるチャイムが鳴る。
「あら、此処に用はなくなったでしょ?あなた見た目だけは良いからまたここにきてもいいわよ?隠れ場所としてね」
「……いや、ありがたいんだけど。どうして?」
「あんたって噂になってるし、助けておけば得かなって思っただけよ」
その女子生徒は靴を履き、ドアを開ける。
「天照大御神って知ってる?」
「え?えっと日本の神様の……」
「そう、そして私の名前でもあるわ。アマテラスでいいわよ?」
女子生徒……もといアマテラスはそのまま教室に向かって行った。
「鍵……返し忘れた」
アマテラス(本来の世界線バージョン)「何が『顔だけは良い』よ。早くメイジをオトして正妻の座を勝ち取りなさいよ!」