~アルケーの婚約大作戦!part30 ~
メリーとフォートの二人のメイドさんに護衛されながら見慣れた屋敷を歩く。フォートさんは途中で紅茶の準備に厨房向かった。
「ご主人様」
「ん、何?」
メイジの部屋まであと少しと言うところでメリーが話しかけてくる。
「このチームの中にも問題児も少ないですが存在しています。ですから競技中は常に最低で一人護衛が付きます」
「ありがとう。流石に女性に手をあげるのは気が引けるし」
「いえ、ご主人様の為でしたらこのAチーム粉骨砕身の気持ちでご奉仕させて頂きます」
メリーは小さく可愛いお辞儀をして、護衛を再開したのだった。
………
……
…
平和だ……。
何も無い、この時間がとても幸せに感じる。
「ご主人様、マッサージはいかがですか?」
「じゃあお願い」
「かしこまりました」
メリーさんがチリンと鐘を鳴らすと……天使族と悪魔族の二人のメイドが入ってくる。
「「マッサージに参りました」」
何だろう、今物凄くご主人様してる気がする。普段の屋敷ではロゼがほとんど一人でやっちゃうし、エクスとグリモはメイドというよりかわいいコスプレ娘みたいな感じだし。一応仕事もしてるみたいだけど。
「私達は羽根と手で二倍の効率でマッサージが可能です」
「力加減は強めか弱めかどちらにいたしましょうか」
「じゃあ強めで」
「かしこまりました」
………
……
…
なんだろう、Aチームはほっこりするというか物凄くまじめな人たちなのかな?嵐の前の静けさ……という事なのか?この後Bチームという地獄が待ち受けてるから今のうちに英気を養っておけよと言う神の思し召しか。
『そんなこと考えてないですよ、マスター』
あっ、はい。まぁ、この残り時間を楽しむか。しっかり競技してくれるAチームの為にもしっかり奉仕されようか。
………
……
…
競技時間も残り少なくなってきた頃。俺は思った、この安らぎの時間を与えてくれたこのAチームに対して何かしてあげたいと。この後の地獄に挑む為の覚悟の準備をさせてくれたこと。そして俺の目には届いて無い所で仕事をしている人もいる。
「フォート」
「はい、ご主人様」
「館にいるすべてのメイドを集めてくれないかな?」
「分かりました」
フォートが部屋から出てしばらくするとメイドがゾロソロと部屋に入ってくる。そのメイド達の顔は何処か不安げである。
「えーと、集まってもらったのは起こるわけじゃないから安心してほしい。むしろ褒めちぎりたい。だからAチームにご褒美と言うか、何かしてほしい事はあるか?」
メイジがそういうとメイド達の表情はぱぁっと明るくなり、笑顔が見える。
「でしたら私はお姫様抱っこを……」
「私はハグが良いです!」
「は、恥ずかしいので頭なでなでがいいです……」
メイド達は個人個人で希望を述べていくが一斉に言っているために聞き取れない。
『マスター、一番多いのは頭を撫でる事です』
なら頭を撫でる事にしようか。
………
……
…
なでなでなでなでなでなでなでなで。
随分と時間が掛かってしまったが、全員の頭なでなでが終了した。俺が頭を撫でると皆反応が凄いのだ。照れるだけの人もいれば、その場にへたり込む人や更には失神してしまう人まで。メリーとフォートも喜んでなでなでを受け入れてくれた。彼女らだったら屋敷にいても問題はないかもしれない。
こうして波乱の前の静寂が終わった。
???「さて、準備は良いですか?」
???「はい!メイジ様に完璧で幸福なご奉仕をします!」