閑話〜アマテラスがデートに誘うまで〜
季節は夏、蝉が寿命を削り命がけで鳴きに鳴いている頃。地球の神、天照大神はとある事に頭を悩ませていた。
(め、メイジとデートしたいのに)
彼女の脳は最近そのことでモヤモヤしているのである。現実では参議院選挙や日本と韓国がバチバチし始めた訳だが、それについてはほとんど関心をもっていない。
こういう地球での騒動を創造神なら止めるべきなのだろうが、最近のアマテラスはどうも腑抜けてしまったようだ。神としては基本放任主義で、人類やその他の生きとし生けるもの達には勝手にやっとけ状態なのがこの世界の地球の特徴なのである。
(じ、自分から誘うなんてはしたない気がするわね)
あくまでも私は創造神、この世の全存在のナンバーツー。メイジと会ったばかりの頃は向こうから誘ってくるのが当たり前!なんて思っていたが、今ではアマテラスから誘う気満々なのである。
(夏なのだし、夏っぽい所に行きたいのだけれど)
まず夏っぽいってのはなんなのだろう。プール?海?そんなの人が多すぎるじゃない。それに今私達が人が集まる所に現われでもしたら知名度で遊ぶどころじゃ無くなりそうだし。けど夏っぽい何かがしたい。かと言って海を創造してとなると処理が面倒くさい。
「あれ?アマテラス、どうしたんだこんなところで」
「へ?」
現在の悩みの種のメイジ。しかしアマテラスにとってメイジと二人きりというのは動揺するしデートに誘うチャンスなのだが。
「た、ただぼーっとしてただけよ?べ、別にやましい事を考えていたわけではないわよ!?」
「そ、そうか」
この時、メイジの脳内では『なにかたくらんでいるな』と思っている。
「あ、そ、そのメイジ?」
「ん?」
「あ、ええと……その」
「ほら、ゆっくりでいいから」
とメイジはアマテラスの頭を撫でる。
「な、何子供扱いしてるのよ!私の方が十桁以上も年が違うのよ!」
「嫌だった?」
「……嫌よ!それならその手で私の手を握った方がマシだわ」
「はい」
メイジはアマテラスの手を握る。
(な、なんだか慣れてるわね)
メイジには多くの恋人がいる、慣れるのは当然なのかもしれない。
(ちょっとムカつくわねこれ)
いくらメイジとはいえなんだかムカつく。
「あなた、調子に乗らない事ね?」
「調子に乗る?そんなつもりはないんだけど」
「いくら私達神に好かれて愛されているからと言って私の頭を撫でるのは侮辱が過ぎるわ」
「そうなのか?」
「だから、お詫びとして私とデートしなさい?」
「……そういう事か」
「なによ」
「かわいいなぁ、アマテラスは」
「……は、はぁ?」
「そんな理由付けなくてもデートならいつでもしたのに」
……自然と自分の頬が赤くなるのが分かる。なんだか今日は調子が良くない。ペースを乱している。
「……そうよ、もう観念するわよ。最近二人きりに慣れないから……」
「だから俺もここに来たんだけど」
……わざわざ私から迫らなくてももしからしたらメイジからデートに誘ってもらってた?
「そ、それならもっと早く言いなさいよ!」
「いや、デレてるアマテラスを見たくて」
「……次やったらどうなっても知らないからね」
次の日、メイジと腕を組んでデレデレにやけているアマテラスが沖縄の町で見受けられたという。