~日本人は異世界が好き~
行き交う冒険者の射殺すような目線を受け、2人は地球人のいるであろう森が見えてきた。
「これ転移した方が良かったんじゃないか?」
「私と2人で歩くのは嫌ですか?」
「え?」
「私と2人で歩くのは嫌ですか?」
「嫌ですか?」
「···いやじゃ無いですけど」
「なら良いですよね?」
圧が凄い、話し始めた瞬間うさ耳が目の前に飛び出してきた。ハスタさんはうさ耳で、感情が分かりやすい。さっきのうさ耳は怖かった。
(転移なんてしたら私のデートタイムが少なくなるじゃないですか!)
少しでもメイジと2人きりで居たいハスタはなるべく到達するまでの時間を長くするため、手を引いた。
·········
······
···
モフモフのうさ耳を腕に巻き付かれちゃ勝てない。日本人は獣人には勝てないと思う。モフモフは最高でした。時間はかかったが、日本人らしき黒髪の男性の後ろ姿が見える。
「クソッタレ!ゴブリンだからって舐めてたぞ!」
眼鏡を掛けているが、その眼鏡はボロボロで、レンズが片方しか残っていない。
「加勢した方がいいか?」
「メイジさんが加勢したらすぐ終わっちゃいますからね、一応依頼ですし本当にヤバくなったらお願いします」
暫く気配を消し、観察することにする。
side 眼鏡破損者
クソッ!眼鏡が破損しちゃあ相手の攻撃が見えにくい!こんなっ!こんな所で死ぬわけにはいかないんだ!ならばここでの判断は戦術的撤退!プライドなんて無いのだ!命大事にだ!
side メイジ
あ、撤退した。ってこっちにくるじゃないかぁぁぁ!
「もうやっていいよな?依頼放棄したっぽいし」
「まぁ命を大事にするのはいい事ですけどね、自分に見合った依頼を受けてほしいです」
気配遮断のスキルを消し、ヘイトを受けるスキルを発動する。
「ぬぁ!!?おまえぇ!!」
「すまん、こいつ貰うな」
ハイゴブリンの胴体を軽く殴る。貫通するスキルを使っておいたため、心臓だけ破裂しているだろう。この方法は魔物の素材を残すのに有効な手のため、前から良く使っている。
どんな生物も心臓は柔らかく、鍛えることは出来ないからな。まぁ俺はスキルで守っているけどね。
ハイゴブリンは数度痙攣した後、地に伏した。
「現れたな!メイジ!」
ん?何で君にそんなに睨みつけられてるんだ?
「メイジさん!かっこよかったですよ!」
シリアス気味な空気を引き裂くように、ハスタさんは腕を絡ませてきた。更にはうさ耳を器用に腕に巻き付けている。うさ耳もふもふぅ~。
「は?おまえ!ハスタさんまで!?」
ん?1体どういう事だ?
「そうですよ♪私とメイジさんはそういう関係何です♪」
依頼者と受けた冒険者ね?
「ぬ、ぬぐぐぐぐ!遂に最後の天使までぇ!やっぱり顔なのかよぉーーーー!」
彼は叫んで街の方へ走って行ってしまった。