~王都へ~
アルケーの口調をワシから妾に変更しました。
あれから2週間────俺は冒険者ギルドの
四種族祭は明日開催される。
現在俺はまだアステラの町にいた。
ここから王都は馬車で1週間かかると言われているが、俺には【ワープ】がある。
『全能』でその能力が強化され、行ったことのない場所でも、場所の名前を思い浮かべればその場所に行くことができるようになった。その場所から、距離を置いて転移も可能である。
なので、のじゃロリや司教、その配下の神官を連れて、転移する事にした。
以前に【テレポート】は使ったことはある何とかなるだろう。
昼過ぎに、教会に集まった一行は、皆心配そうにしている。
「じゃあ皆俺の身体に触れるか、俺の身体に触れた人にくっ付いて下さい。」
皆がおずおずとくっついて来る。
「じゃあ行きます、【ワープ】」
思い浮かべたのは人族の王都『ヒューマルインペリアル』。
さぁ会いに行こう、女神様たちへ────
────王都『ヒューマルインペリアル』
王都の検問から死角になる場所に、一行は転移した。
「本当に転移出来るとはの···」
「まったくだの···全く、お主にはいつも驚かせられるわい」
────これが神の使徒様のお力か
────どこここ
────神よ、
神官達の様子がおかしい、たかがワープしただけたろ。
『【ワープ】は王宮筆頭魔術師が10分、詠唱をしてから、膨大な量の魔力を使用しますからね、そもそも【ワープ】が行使されたのは10年ぶりぐらいです』
それならば仕方が無い、さっさと検問を抜けて城へ向かうとしよう。
城からの招待状で難なく検問を抜けた俺達一行は王都の中を城を目指して歩いていた。
王都は3層の城壁からなっており、城壁の外に、低所得者層のスラム街がある。
検問を抜けると、そこは平民層の住宅街や店などが立ち並んでいる。
ここに住民が集中している。
更に城壁を抜けると、そこは貴族達が住む、貴族街であり、兵士の見回りも多くここが1番治安が良い。
更に、城壁を抜けると、その中には中世の巨大な白亜の城が、建っていた。
「デケーなあ」
「ワシも久しぶりにきたのじゃ、相変わらず無駄にデカイのぅ」
検問の兵士に招待状を渡し、城の応接室へと案内される。
城の中は、まるで迷路のようだった、数々の装飾品や壁画があり、多くのメイド達が行き来していた。
(リアルなメイドって初めて見るなぁ)
城の中は道がかなり多く、迷いそうだが俺はスキルの【完全記憶】で記憶してあるため、帰るぶんには迷わないだろう。
配下の神官達は外で待機しており、今回陛下に謁見する予定のメイジ・シューン(のじゃ)・アルキメデス(司祭)が応接室に通された。
「ふぅ···緊張するのぅ、陛下に謁見なんて久しぶりなのじゃ。」
「ほっほっほっ···まぁそんな気負いする必要はなじゃろう。あくまでも今回の主役はメイジだからの。メイジは落ち着いとる様じゃな。」
「あぁ···国王より偉いやつに会ってるからな。そこまで緊張はしてない。」
言わずもがな女神様や創造神様である。
しかし、彼女らはオーラは神様のようであるが、普段の立ち振る舞い、膝枕の時の緩んだ顔は人間のようだった。
「ふぉ、ふぉ女神様と話が出来るなんての、やはり凄いの。」
「やはりこ奴はバケモノなのじゃ。」
バケモノですいません、人間だったあの頃が懐かしいぜ。(約1ヶ月前)
雑談をしていると、騎士が部屋に入ってきた。
それは他の兵士とは違った。
まず鎧だ、兵士は鉄の鎧だったのに対し、この人は白銀の鎧を着ている。
更にその体格だ、身長は俺より高く、体つきもしっかりしていて、歴戦の戦士のような風格だった。
「陛下がお呼びです、こちらへどうぞ。」
口調が体格と合ってないがまぁそこは気にしない。
騎士に連れられて俺は謁見の間へ向かう。
俺の5倍はあるような扉、やっぱり少しは緊張するかも、女神様達って偉い人っていう感じしないし。
「アステラ一行をお連れしました!」
「うん、入ってもらって。」
扉が開かれる。
中には多くの白銀の騎士や偉そうな人がこちらを見ていた。
玉座には1人の女性が座っていた。
紫の長い髪、ライトブルーの瞳。その頭には煌びやかな王冠が乗っていた。見た目は大学生ほどかな?
この世界の偉い人は皆女性なのか?
ギルドマスターや女神様達。
これまで会ってきた偉い人は全て女性である。
思ったけど、神様って女神以外にいないのか?
男神とかいないのか。
『一応いますよ、男神。でも亜神ですけどね。』
なんだと?アメリアやアルケーに色目使ったら殺そう(使命感)。
『メイジさんが心配してくれて私嬉しいです···//『妾もじゃぞ!』···でも大丈夫ですよ、実はいつも私達がいるあの空間は、本来私達女神しか来ちゃいけない高位な場所なんですよ!異世界人を除いて亜神であるメイジさんがあそこに来れるのは特別なんですよ?』
···どうもアメリアやアルケーのことになると熱くなってしまう、少しは自重しなければ···。
「久しいなシューン」
「お主こそ久しぶりじゃなイリアス=インペリアル国王陛下」
「して、こ奴が『英雄』か?」
ここまでその名が伝わっていたのか。
恥ずかしいな。
『私のメイジさんは評価されるべきなんですよ!』
『妾の彼氏なんじゃからな、それくらいじゃ困るのじゃ!』
これ以上恥ずかしい思いはしたくないんだけどな。
でも今の俺がアメリアやアルケーに相応しくないんだったら、努力しよう。
「そうじゃ、ワシより強いぞコヤツ。しかも【パーフェクトヒール】も使える。」
「【パーフェクトヒール】!?そんなの王宮筆頭魔術師が今必死こいて研究してる魔法なんだけどな。」
「そうじゃったのか、ワシの疲労を取るために使ってくれたのぅ」
「【パーフェクトヒール】をそんな簡単に使うなんて、『英雄』はすごいね。」
「ありがとうございます。」
「ふん、そんなの本当か分かりませんぞ陛下。」
そう言ってきたのは、でっぷり太った金髪の偉そうな人。
いかにも権力を振りかざしていそうだ。
「それもそうだな、ここでやってみてはくれぬか?」
「了解しました。しかし、誰を治療すればいいのでしょう?」
「私を治療してくれ、私は生まれつき足が悪くてな、走ることができんのだ。」
「そんな!陛下自らなど!危険です!」
「よい、こやつが嘘を付いているようには見えん、それにこれまでずっと悩まされてきた足が治るかもしれないのだ。やらない手は無いだろう。」
「ですがっ!」
「くどいぞ王宮魔術師が、私がやると決めたのだ。文句あるか?」
「···」
「では···やってくれ。」
「承りました」
俺は王座の近くに立ち唱えた。
「【パーフェクトヒール】、多分これで大丈夫です。」
イリアス国王の体を魔法陣が通る。
その時陛下の右足が淡く緑に光った。
「お···おお!これはっ!」
陛下は立ち上がり、歩き始めた。
「うむ···これなら···」
陛下は少しずつ歩くスピードを上げ、遂に走り出した。
「はははっ!これが走るといる感覚かっ!すごいぞ!」
────オオオオオオオオオッ!
家臣達が感嘆する。
陛下はそのまま5分ほど走ってから疲れたのか玉座に戻った。
顔は高揚しているのか赤いが、その表情は満足そうに笑っていた。
「ありがとうっ!ほんとにありがとう!何か褒美を出さないとな···。」
「いえ···私は【パーフェクトヒール】が使えるという証明をしただけですので、褒美は要りません。」
俺は早く8億アルを受け取って休みたいんだが···。
ここは何かに気を使わないといけないからな。
「では貸し一つということにしよう。何かあったら私を頼ってくれ!」
「···分かりました。」
王家に貸しが出来たのは大きい、これから好き勝手に動きやすくなる。
出来れば早くに魔王倒しきってほのぼの生活したいし。
こうして俺は王家に貸しを一つ作ることが出来た。




