デブ専A氏
店の扉を開けると、カウンターにへばり付いてる客も疎らで、テンションもアイドリング状態。俺は席に着く前に、「マスターいきなりだけど、トイレ借りるね。」と言って、トイレに入った。
するとそれは唐突に始まった。
でぶ専A氏「ギァー。何、今のでぶ、可愛い。マスター隣よ、私の隣よ。」
トイレの中まで。まる聞こえである。。
ちなみに俺は、全く可愛くはない、むしろ
醜男という風情であるのだが、でぶ専と呼ばれる人たちの間では、持て余す程の脂肪を指して“可愛い”と表現するのが常である。
はたして俺は、A氏の隣に座る羽目になる。
A氏は、「もてるでしょ」から始まり
矢継ぎ早に質問を投げかけてくる。
(これまた俺は全くもてない。彼の感覚は、どうやら根本が、的を射てないと言わざるを得ない。)
会話は踊り、A氏の右手は、俺の背中を皮切りに、肩を揉み、上腕の弛みをまさぐった後、いきなり膝に飛んだ。次にお腹を上からなで下ろしベルトの上にどっぷりと鎮座した下腹を優しくもちあげながら、A氏は確信に迫った。
A氏「ところで君、今何キロ?」
俺「少し絞ったので、98キロ位かな?」
言った瞬間、二人の目と目が合った。そして二人の間を、今の今までパタパタと羽音をたて浮かんでいたはずの天使が、光の速さで飛び去る姿が見えたような気がした。
次の瞬間A氏は、カウンター越しのマスターの方に向き返り、人差し指を交差させてこう言った。
A氏「マスター、チェック」
所謂、三桁専ってやつですわ。