新しい家族
試行錯誤中
いきなり灯華から獣耳が生えた事を説明するのに血族について話さなければならない。
血族とは覇王と呼ばれた少年の子孫に当たる。
全てを語ると蛇足になるので三条家と四鬼家だけ触れておく。
まず、この世界には他種族、混沌種は存在しない。そして、この世界には人しか存在しないのが設定だ。故に獣人やエルフと言った幻想生物は居ないとなっている。しかし、次元侵攻と言われる他世界からの侵略をおきにこの世界は変わっていく。
獣人やエルフなどの幻想生物は居ないと定義されているが他の世界からやって来たらどうなる?
答えは簡単だ。新たな設定が加わるのだ。
しかし、人と他種族は子が出来ない。これはどの物語でも良くある設定だ。この世界もそう定義した。
しかし、その定義を覆したのが覇王だ。彼は別の世界で子をなし、連れてきた。より人に近い存在だ。
世界はその覇王の子を人と定義し子孫が残せた。ただ、問題もある。人と他種族は子を作れない。だから、同じ日本人しか子供が出来ず、同じ日本人でもその種族の力を引き継げるのも個人差がある。
灯華は三条家の者で獣人の血族である為、戦いの時は獣人の姿へ変身する事で人の身以上の力を発揮出来るわけだ。
そして、四鬼一族の始祖は吸血鬼だ。
血族は異世界からの侵略者を排除する存在の為、優遇はされるが強すぎる存在の為恐れられる事も多い。
これ以上は蛇足になりそうなので話は次の説明で終わるが魔法が存在しなかった世界が魔法を認めて沢山の世界改ざんがあった。その中の一つが血族の存在だ。この世界で日本の優位の立場にするのは十分な存在だった。
「……詩音様だけど詩音様じゃないって事は別人格って事ですね」
「そうね、覇王の記憶も持ち合わせているし、私は私としか言えないわ」
ここで下手に詩音だと言うより詩音だけど詩音じゃないと思わせていたほうが素の私で居られると思ったけど警戒されちゃった。ん〜、ならこの言葉なら警戒は解けるかな?
「貴方はこれから処分されるのね、なら私にこの人を頂戴。出来損ないの私にぴったりの使用人でしょう?四鬼家の者なのに使用人が居ないのは世間体に一族も気にしていた様ですし良いでしょう?」
その言葉を聞くと灯華は警戒を解いて猫耳を引っ込めた。
この言葉は灯華が任務で失敗してしまい処分を言い渡された時に詩音がその場に居合わせた時に言ったのだ。
「詩音様じゃなくても詩音様なのですね。それに常に自分を殺して生きる四鬼一族に感情の話をするのは愚かでしたね。確かに詩音様はあの時人格が変わってしまったのですね。でも、私との初めての出会いの言葉を覚えている。なら私は今の詩音様も受け入れます」
既に詩音が壊れていると思っていたのだ。多少人格が変わっても詩音として扱ってくれそうだ。なら私はありのままにこの世界に溶け込める。
「ありがとう。それで私は四鬼一族から追放されたとして受け取って良いのかな?」
灯華は申し訳無さそうに答える。
「そうなります。ついでに私も詩音様のお付きの使用人として四鬼一族に支えている扱いでありますが事実上の解雇で御座います。私は未だに罪人の身でありますので旦那様と奥様から詩音様を預けられたという事は四鬼一族から私も一緒に追放されました。私と詩音様には一族から互いに干渉しないとの条件を出されてます。ただ四鬼の名は使って良いそうです。子が出来た場合、差し出す様になっている以外は我々から干渉した場合殺される可能性があります」
なんて凄く良い条件なんだろう。既に血族の柵から解放され私は自由に動けるようだ。なら私がやる事は無さそうだね。この一族はシナリオ通りならすぐに消えてしまうので私も干渉はしない。
私も灯華も柵なく生きられる。いや、灯華は私が居ないと処罰を受けている扱いじゃ無くなるから私が居ないといけないのか。
「……そう。なら私達は普通に生きましょう。四鬼として仕事をもう引き受ける事もしなくて良いのでしょう?でしたら私は学園に通いたい」
そう言うと灯華は目を見開いた。
「学園……ですか。申し訳ありません。まさか、詩音様がその様な思いを抱いていたとは知らずびっくりしてしまいました。四鬼詩音で学園は登録されていましたので通う事は可能でしょうが四鬼家は特殊なので受け入れてもらえるが分かりません」
そりゃ暗殺がメインの一族ですからね。四鬼家は一応血族だから学園に席は置いてある。
ただ、通う事はない。
だけど私はもう一度高校生活をエンジョイしたいのだ。
「一族から除名された事を伝えて通う許可は貰えないかな?」
「できる限り学校側にお願いしてみますが期待はしないで下さいませ。では詩音様、今後はどうしましょうか?」
そういや、この世界の親はさっき見たアレだったっけ?逃げようって思っていたけど前の世界の様に家族や友達もいない状態だと寂しいな。
あっ!灯華さんに懐いちゃえば良いじゃん!
「今後は灯華とずっと一緒にいる。私の新しい家族」
表情は動かないけど本当なら今満遍な笑みを見せていただろう。
お人好しで何でも出来る人。
うん!灯華は私の専属らしいから問題はないはず。
「私と詩音様が……家族?よ、宜しいのですか?」
「宜しいも何も私は灯華と過ごすって決めた。灯華が嫌なら考える」
「いえっ!嫌ではなく寧ろ嬉しすぎます!!」
灯華は本当に嬉しかったようで感激している。
「なら、私の事は詩音と呼んで欲しい。私も灯華って呼ぶ」
灯華は段々私の言葉にポカンとしたが意味を理解したらしくはいとはにかんだ。