戦う決意
「へぇ〜、詩音くんは四鬼家だったんだね。少し四鬼家のイメージが変わったよ。良い意味でね」
報道部部長は私の名前を知ると更にフレンドリーに接する様になった。
決闘を受けた後、私は報道部の部室へ戻った。
良い意味でも悪い意味でも四鬼家は有名だからだ。
「四鬼家には関わりたくなかったんじゃないの?」
部長は律儀に気を失っている朱莉を運んでくれた事に私は心の中で感謝する。部室のソファで眠ってる朱莉に私は視線を向ける。
「そりゃそうだよ。でも詩音くんなら問題ないと判断したさ。それに君の情報は今彼方此方と出回っているよ。四鬼家の出来損ない、欠陥品、役立たずと色々と聞いたよ。でもさっきの君を見ると何を持っての欠陥品なのかは理解できたよ。君は四鬼家なのに感情豊かだし、それが由来かな?」
勘違いしているのなら勘違いさせとけばいい。ここで私が何を言っても意味はない。
「沈黙は肯定かな?まぁ、良い。でも、君は血族で四鬼家だからこの学園での決闘を理解していない。守られた戦いにルールが加わり制限された戦いだ。君は君に有利な条件で決闘をするべきだったんだ。今回は誰が見ても君の負けだ。彼は本当に自分の有利な条件にした。魔法禁止に武器禁止、血族の力も使わずにただ己の肉体だけで戦い、薬師丸は武器使用アリで徹底的に君をいたぶる気だ。フィールドもエーテルフィールドだ。そこでどんな事が起ころうとも死ぬ事はない。君は旧人類が超越者や血族に勝てると思うかい?君は非力な状態で戦わないといけない。魔法や何かの力を感じた瞬間に君の負けになる。この意味は分かるかい?」
「心配してくれているの?」
「……心配ぐらいはするさ。まだ浅い付き合いだが私は君を気に入っている。確かに私が提案したがあの様な事を言い出すとは思ってもいなかった」
珍しく部長が落ち込んでいる様に見える。2週間近くここの報道部にお世話になっているがいつもの雰囲気ではない。
「部長、いや、諜報系の組織タイリスに所属する血族の先輩。私を心配してくれてありがとう」
そう言うと部長は微笑んだ。
「私が血族だと言うのは置いといて、私がタイリスの者だといつから気づいていた?君は何でも知り過ぎているね」
タイリスとは世界崩壊まで活動していた血族の諜報系の組織だ。
「私は味方が欲しい。だから、部長に情報を流している。部長はこれからも私の味方でいてくれる?」
「それは君を知ってから答えて良いのかい?」
「良いよ。これからの決闘で私を知る事が出来る。私は部長と協力関係でいたい。それだけ」
「なら、心配しなくても平気かい?」
「無駄になるだけ」
「ハハ、なら君がどんな戦いをするのか楽しみにしても良いのかな?」
私は頷く。
バタンとドアが急に開く。他の部員が戻ってきた。
「部長!只今戻りました!情報収集は終了しました!薬師丸は四鬼詩音と戦う事を宣伝した所、五條家の本家の者が見に来るそうです!それに決闘場も観客席まで埋まるみたいで放送部が今回の決闘を放送するみたいで学校外にも情報は出回ってます!なので放送が外部へ映像をライフで提供するみたいです!」
娯楽に飢えたこの世界で戦いは唯一の楽しみなのは知っていたけど……
「……おおごと。情報漏洩良いの?四鬼家を敵に回さない?」
「それが学園長が許可したみたいです!四鬼家も黙認しているみたいです!」
廃嫡しているから構わないという事か。
「私はただ平穏に過ごしたいだけなのに」
部長が笑いどんまいと言う。
でもやってしまった事を嘆いても変わらない。ならやる事は一つだけだ。
「……部長。さっき守られた戦いとルールが加わり制御された戦いと言ったね。それと私が戦いが嫌いって知っているでしょう?」
部長がうん?と首を傾げる。
「制御されているフィールドなら私は半分くらいは本気を出して大丈夫だよね?相手はグズみたいだし壊しても大丈夫だよね?死なないらしいし。これから行うのはただ一方的な暴力。そこに慈悲もない。あるのはただ理不尽な結末だけ。だから、私は戦いが嫌い」
それに私が私でなくなってしまうかの様に戦いに酔いしれてしまうから。
私の言葉に珍しく部長は顔を引き攣らせた。




