プロローグ
都会に憧れて田舎から上京して来る人は多い。
大学進学を機に都会に上京、新しい生活に期待を持ち憧れの自分を描いていた。
サークルに入って可愛い彼女を作り、バイトを頑張って勉強はそこそこにやって、将来的にはいいところに就職できればいいと思ってた。
ただ、実際にはそんなに上手くはいかなかった。
サークルに入っても彼女どころか馴染むことができずあまり友達も作れない。
バイトも自分が考えていたよりもずっと働かなければ生活はかなり厳しい。
授業も高校よりもレベルが高く授業時間が長い。集中力が続かず、バイトの疲れもあって寝てしまうことが多く内容についていけない。
上京して半年にして自分の思い描いていた理想像は崩れ去っていた。
授業についていけないから単位は取れない。
友達もあまりいないから相談することもできない。
上手くいかずに自暴自棄になり憂さ晴らしにパチンコや酒に走る。
上京して二年を過ぎる頃には大学にはほとんど行かずにバイトがメインになっていた。
自分の理想などどこにいったのやら…
自分と同じような状況は奴は沢山いる。現実なんてほとんど上手くいかない。
ただ、引きこもってるよりはずっといい。
とりあえずは親には迷惑はかけてない。
羨ましいとは思う。働きたくない。
ゲームやネットやマンガの仮想世界に逃げ込みたい。
仮想世界なら最強で英雄で女の子からももててなんでも思い通り。
社会から一歩でも外に出れば毎日ストレスと闘わなければならない。
そんな思い通りにいかないストレスに俺は毎日押し潰されていた。
バイトが休みの今日も大学には行かず開店と同時にパチンコ屋に。
夕方には惨敗して行きつけの居酒屋でヤケ酒をあおっていた。
「何やってんだろ俺…」
空になったコップを見つめながら呟いていた。
なかなか当たらないからヤケになって、生活費までつぎ込んで…
後悔しても金は戻ってこないが、あそこでやめとけばよかった、あそこで…
「お兄ちゃん、悪いが閉店だよ」
居酒屋の親父に追い出されるように店を出た。
飲み代を払ったら残金は二千円ちょっと、給料日まであと半月あるのに、今月どうしよう…
フラフラとそんなことを考えながら家路に向かう途中、気分が悪くなった。
河原に立ち寄って気分がすぐれるまで休もうと草の上に横になる。
自分自身に腹が立つ。こんな現実世界に腹が立つ。
いっそのこと一度死んで人生をやり直したい。そして可能ならファンタジーの世界で楽しく過ごしたい。
まあ、自殺する勇気もないし、仮に生まれ変わってもこの世界で同じような生き方をするだろう。
神様がいるなら一生のお願いだから俺を異世界へと転生させてくれ。
「まあ、できるわけねーけど」
誰もいない静かな河原に俺の声が響いた。
それからしばらくの間ずっと夜空を見つめていた。