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特別機関―暗殺課―  作者: 黒瀬 狗痲
第1章―鎖で縛られたモノ、手綱を握るモノ―
4/5

―touki hakuran―

「でもまぁ、実際のトコロ。今回は2番の囚人相手が1番生き残る確率が高かったけどな」


 政府によって手を加えられた引越し業者が使うタイプの大型トラックを運転するのは、暗殺課に属する下っ端だ。主に暗殺課メンバーの死体処理や、護送車運転。さらには証拠隠滅まで、幅広く暗殺課メンバーのサポートをしている。

 そして、この大型トラックの荷台部分は大胆に改造されてあり、一見すれば大手企業のオフィス並みの家具の数々が配備されている。その一室とでも言うべきトラックの荷台に積まれたソファに寝そべっている、黒い短髪に白いコートを纏った少年、白藍は床に敷かれたカーペットに腰を下ろしていた白髪に黒いコートを纏った少女、黒瀬に話しかけた。

 黒瀬は少し考え込み、薄い唇を動かした。


「そうだね。確率的には2番が1番生き残れた。でも、確か誰も2番は選んでいないね。やっぱり私相手が簡単だと思ったのかな?」


 深く溜息を吐く少女の横顔を見ながら、少年は軽く笑いながら上体を起こす。


「まぁ、お前を嘗めてたのも居ただろうけど、大方何の試験か分からず受験したんだろ。だったら俺らは凄ぇ嘗められてるって事になるけどな」


 白藍はトラックの隅で1人棒立ちしていた松山に一瞥をくれ、そのままソファから立ち上がり部屋を歩き回る。軽くストレッチした後、白いコートを翻して白いスラックスのベルトに挟んでいた、小型の拳銃を手の中で転がす。

 拳銃を丸いガラスのテーブルに置き、ソファの右側に設置された箪笥を開く。

大型の散弾銃や銃身の長いピストル、手榴弾などの銃火器が綺麗に整列しており、白藍はその中の銃―デザートイーグルと長距離射撃用のライフルの2つと10単位で纏められた弾丸を取り出しガラスのテーブルに戻る。

 そのままドスンと腰を下ろすと、3つの銃それぞれに弾丸を装弾していく。

黒瀬は白藍と入れ替わりで、ソファに寝転がり目を閉じた。

厚手のコートなので、分かりずらいが胸の辺りが上下に動いているので、仮眠を摂っているようだ。

 白藍は手早く銃の準備を終えたようで、ガラスのテーブルに最新型の薄いノートパソコンを広げる。

マウスコードとパソコン用マイクをセットして、パソコン画面をデスクトップからテレビ電話専用ソフトをクリックして起動させる。

 ものの数秒で画面が切り替わり、赤髪の美女の顔が映し出される。


『やっほー灯樹君。狗痲ちゃんは?』


「声がデケェよ、琉川。狗痲は仮眠摂ってるから俺が聞く。今回の任務の内容は?」


 画面の赤髪の美女は残念、というような顔をした後ガサゴソと散らかった机の上を漁り始めた。

そして2枚の紙を見つけ出すと、書面の内容を読み上げていく。


『今朝方、茨城県の大型宝石店で3億円相当の宝石が盗まれたらしいわ。逃走の際に4人組の犯人が店員並びに店長に発砲。死傷者は全員で7名。書類によれば、いまだ犯人は茨城県の山腹に隠れているらしいわ。今回の任務は、4人組の犯人を全員抹殺。及び盗まれた宝石全てを取り戻す、ってことみたいよ?』


「山ん中だったら、銃扱いずらいんだけどなー。しかも足手まといの新入りの面倒まで見なくちゃならねーんだから」


 白藍はそこまで言うと、パソコンのテレビ電話ソフトを強制的に切り、メールを確認する。

 4人の男の顔写真が添付されており、全て赤印で大きな×が描かれている。

白藍はそれを自分と黒瀬の携帯電話に転送し、パソコンの電源を落とした。そのままパソコンを優しく閉じて、先程装弾した小型の拳銃の方を松山に向かって投げ、自分のベルトにデザートイーグルを挟む。

 松山はいきなり投げられた拳銃に驚きつつも、飛んできたそれを両手で危なっかしく受け止める。


「お前には何の働きも期待してないけど、とりあえず持たせとく。俺が指示するまでは発砲するなよ?」


 松山はまるで汚らわしいモノでも見るかのように、手の中に収まった小型の拳銃を睨みつける。拳銃を力強く握り締めたままスーツのベルトに落ちないよう、しっかりと固定すると、白藍が松山に背を向けながら言った。


「任務の邪魔になったら即、撃つから。邪魔すんなよ?」


 それから仮眠を摂っている黒瀬の肩の辺りを軽く揺り起こす。


「もう、着いた?」


 絡まった髪を手櫛で梳かしながら、黒瀬は体を起こす。

それから黒いコートのファスナー付きポケットに手を突っ込み、取り出した携帯のメールを確認してまた携帯をポケットに捻り込む。


『あと数分で到着します。ご準備を』


 トラックの運転席からスピーカーで連絡が来たのを確認して黒瀬は立ち上がり軽いストレッチ程度に身体を動かす。

 トラックのエンジン音と振動が止み、荷台の扉が開かれた瞬間。


  鎖に縛られた、黒い猟犬が動き出した。


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